オレ、母になる

次へのステップ

祐希が晃への想いを断ち切り、前に進もうと決めてから、一年が経過した。


彼への想いを払拭し、瑛太と付き合う…


祐希は、その方向に進もうとしていたが、失恋のショックがあまりにも大きく、それを間近で見ていた瑛太は、積極的に交際を求めるような事をしなかった。

祐希の心が立ち直ってから、あらためて告白をしよう…


そう考えていたのだった。


しかし、時だけはズルズルと過ぎていき、一年が経過し、それぞれの人生は、個人差はあったものの、少しずつ前に住みつつあった。



祐希は、実家との連絡を断ち、もう二年以上帰っていなかったが、風の噂で、真希が妊娠した事を知り、立ち直りかけていた気持ちが、再び折れそうになってしまった。


そんな祐希の日常は、夜はニューハーフとして店で働き、昼間は女磨きに時間を費やすといった感じだったが、最近になって週に一、二度、大学に顔を出すようになった。

と、いっても、復学したのではなく、教授の田子浦に呼ばれて、出向いていたのだった。


今日もまた、祐希は田子浦の研究室で、話をしていた。



「すまんね。

ムリを言って来てもらって。」



「いえ。

家に一人でいてもヒマなだけですし、こうして大学に来る方が刺激があって楽しいです。」



「でも、夜は働いているのだろう？」



「そうです。

気ままにやらせてもらってます。」


祐希は、口に手を当て、女性らしく笑って言った。