オレ、母になる

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祐希は、承諾書にサインを終え、高山の指示通り、診察台のような硬めのベッドに仰向けに寝た。


「滝川さん

緊張されてると思いますが、すぐに終わりますので、リラックスして下さい。」



「はい…」



「それでは、これから行う実験について、簡単に説明致します。

先日もご説明したように、この性転換については、外科手術の類は一切行いません。

左側の首を通る内頸動脈に注射を行います。

それで終わりです。

後は薬が動脈を通って脳に達し、脳内で性転換を促す物質を人工的に作り出します。」


「この前お話をしていただいたFeSPニューロンという物質ですか？」


「それはあくまでも魚類における性転換の話で、FeSPニューロンが性ホルモンに応じて性転換を可能にする環境は、人間では起き得ません。

我々が開発したのは、あくまでもこのような環境を人工的に作り出すもので、外科手術を行う事なく、染色体レベルでの性転換を促します。

この注射一本で、済みますが、どうされますか？」


高山の問いかけに、祐希は、考える素振りすら見せず


「お願いします。」


と、即答した。


高山は頷き、祐希の左側の首筋をアルコール消毒をした。


そして、慣れた手つきで祐希の首に注射針を刺した。


注射自体はすぐに終わったが、かなり痛かったようで、祐希は、顔を顰めた。