オレ、母になる

祐希の憂鬱

祐希は、言葉にできない不安を感じていた。

姉の話を聞いていて、自分の中で決して承服しかねるもの
心に引っ掛かるものがあると、強く感じるようになっていた。


姉の要求はただ一つ。

姉の夫とセックスをし、妊娠、出産をすること。
そして、生まれた子供を速やかに姉に渡すこと。


祐希が当初心配していたのは、晃に対する想いが復活してしまい、傷ついてしまう事であった。

ようやく吹っ切れたのに、またぶり返してしまうと、もう心がもたない。

しかし、今、懸念しているのはそこではない。


自分が妊娠、出産する事に応じたとして、実際に子供を引き渡すとなった時、自分の心理状態はどうなってしまうのだろうか…

そこが大きな心配点であった。


完全なる女性への性転換がなされた今、祐希には母性本能というものが確実に芽生えてきている。

その自覚は、祐希自身、はっきりと持っていた。

つまり、愛する男性の子供を身籠り、お腹を痛めて出産した場合

果たして、すんなり引き渡せるだろうか。

もしかしたら、今の真希のように精神的に病んでしまい、立ち直れなくなるかもしれない。

祐希は、真希を助けてあげたいと思うと同時に、自分のメンタルの心配をし、答えが全く出せなくなってしまった。