オレ、母になる

違う相手

「私と瑛太はいいの。

でも、祐希は大変よね。
出産を控えてるし。」


真希は、祐希に話題を振った。


「うん。

不安ばっかだよ。

元々女じゃないわけだし、出産の恐怖で毎日眠れないわ。」


祐希は、そう言うと、力なく笑った。


だが、本当に不安なのは、大学で高山に言われた言葉だった。

自分の今の気持ちは、性転換薬によってもたらされた人工的なもので、本来の自分ではない。

この事は、ここにいる人間に話す事はできない。

いや、話しても理解出来ないであろう。


祐希は、そんなことを思いながら、話をする三人を見つめていた。


よくよく考えてみれば、自分が性転換を続けるのなら、いくらこの気持ちがまやかしであろうと、ずっと続いていくことになり、つまり、これが自分の本当の気持ちに置き換わっていくだろう。
そうであれば、何も問題はない。

そんな事よりも、自分がすべき事


それは、元気な赤ちゃんを産む事だ。


幸い、子供に関しては、心から欲しいと思っており、ここの部分に揺るぎはない。

もちろん、日に日に母性も芽生え始めている。

これもよくよく考えたら、性転換薬の副作用によってもたらされた感情かもしれないが、なぜか、子供に関する事は何も疑問を持たない祐希だった。