オレ、母になる

フロイライン

文字の大きさ
3 / 130

synchro

しおりを挟む
「祐希君」

講義を終えた田子浦教授が、祐希を呼び止めた。


「あ、はい

何でしょう?」



「あ、いや、別に大した事じゃないんだが、フランスの大学に呼ばれて、先週まで滞在していたんだが、真希ちゃんにお土産を買ってきたんだ。

婚約祝いというほどのものじゃないが。」



「あ、お気遣いいただいてありがとうございます。

真希も喜ぶと思います。」


祐希は、笑みを浮かべながら謝意を述べた。


「フフッ…」



「えっ

何かおかしな事言いましたか?」


「いや、キミも立派になったものだと感心してしまってね。

だって、最初にキミら姉弟に会ったのは、赤ちゃんの時だったから。

それからの付き合いだから、もう何年だ?」



「二十年…


は、経ちましたね。」



「そりゃ立派にもなるか。

とにかく、私の部屋まで来てくれるかね。」



田子浦は、白髪頭を掻きながら、祐希に言った。



部屋に入ると、田子浦は、祐希に座るように促した。


「もう帰るだけだろ?」


「あ、はい。」


「私もそうなんだ。

少し話をしよう。」



「あの、教授」



「何だね?」



「教授の研究のお手伝いを真希が出来なくなって、本当に申し訳ありません。

本人もずっとそれを気にしていて…」



「いやいや、そんな事は一切気にしないように、真希ちゃんに言ってくれ。

結婚は、人生において一大イベントじゃないか。

それに、君達のおかげで、生まれてから成人に至るまでの貴重なデータを取ることが出来て、様々な謎が解けたよ。

感謝してもしきれないくらいさ。」


田子浦は、笑って言った。



「教授…

少し、お時間をいただけますか?
僕の話を聞いて欲しいんですが…」


祐希は、少し前に体を移動させ、真剣な面持ちで言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

筆下ろし

wawabubu
青春
私は京町家(きょうまちや)で書道塾の師範をしております。小学生から高校生までの塾生がいますが、たいてい男の子は大学受験を控えて塾を辞めていきます。そんなとき、男の子には私から、記念の作品を仕上げることと、筆下ろしの儀式をしてあげて、思い出を作って差し上げるのよ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...