Dad, save me

フロイライン

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光明

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「ステージⅣ…」


「はい。
まさかこの歳でそんな事言われるとは思わなかったです。」


絶望感に包まれている事には変わりなかったが、誰かに聞いてもらえた事で、俺の気持ちは少しだけ落ち着いてきていた。


山中教授は少しの間黙ったままだったが、やがて思い立ったように、俺を見つめて言った。


「気休めは言うつもりはないが、ひょっとしたらキミの役に立てる話が出来るかもしれない。

私の研究室に寄って行かないか」


「はい…」


もう希望も何もない俺は、断る理由もないわけで…山中教授の誘いに頷き、研究室について行った。


山中教授の研究室は、外観も立派で、中もわけのわからない機械だらけで、足の踏み場もない状況だった。


「汚いところだが、まあ座ってくれ」


山中教授は、僅かにあったスペースに椅子を出してきて、俺に座るように言った。

そして、対面に自分も座ると、いきなり話を始めた。


「昴君

今から私が話す事はふざけてるわけでも、嘘を言ってるわけでもないので、よく聞いてくれ。」


「はい‥」


「私は、君のお父さんやお母さんとは仲が良くてね。
学生時代から大学勤めになってからもよく遊んでいたんだ。」

「そうだったんですね。」


「その日も私と君のお母さんと奈実さんと、お父さんの誠君と三人で飲みに行ってたんだ。


「はい」


「で、飲んでる最中に、誠君から、こんな話を聞かされたんだ。

ガンの特効薬を開発したと。」


「えっ。」


「詳細は畑違いな為、聞かせてはくれなかったが、ステージに関係なく、体からガン細胞を消し去る薬だそうだ。
しかも、既にほぼ完成していて、臨床試験を経て正式に世に出す方向だと。」


「父が…」


「彼は間違いなく天才だったよ。
世界でも例を見ない奇跡の薬を開発したんだからな。」


「あの、ちょっと待って下さい。

そんなすごい薬を開発したなら、何故、それから二十年も経った今、僕のようにガンで苦しむ患者がいるんですか?
矛盾していませんか?」

俺の問いかけに、山中教授は頷いた。


「薬が世に出る前に、君のお父さんは殺されてしまったからだよ。」


「えっ?」



「ちょうど君が生まれて数ヶ月経ったくらいの時期だった。

何者かに大学の研究室で、君のお父さんは殺害されたんだ。

しかも、ほぼ単独で完成させたといわれる、ガンの特効薬のプロトタイプ、また、それに関連する資料、データの一切の所在がわからなくなっており、今もまだ見つかっていない。」


知らなかった…

父の死因について、生前の母や祖父母はちゃんと教えてくれなかったが、まさか…

殺されていたなんて…
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