Dad, save me

1990

タイムトラベルは成功したのか、してないのか…

鉛の板の上に寝かされて…目の前が真っ暗になって…

今、目を開けたら、同じ部屋だった。


「お、おい、なんだ！？」


山中教授が俺を見て、びっくりしてる！


あっ！！！


山中教授が若い！！！


「あ、いや、すいません…」


俺は、ヤング山中にワケを話そうとしたが、途中で話をやめた。

「あれっ」


俺の声…


違う…

俺の声じゃない！


声が高い…


ここで、俺は少し周囲に目が行くようになった。


たしかに部屋のレイアウトは変わっていない。

置いてるパソコンがデカくて古い。
モニターがブラウン管だ。
それ以外は、今とほとんど変わっていない。

パソコンの古さと山中教授が若い事以外は、ほぼ同じロケーションだ。


そして、今気付いた事だけど、俺は裸だった。

体に接している物質のうち、鉛以外は、俺と共にタイムトラベルが可能と言ってたのに、山中教授のミスだな。
これじゃあ、住居不法侵入の変質者じゃん！


…


いやいや、そんな事じゃないっ！


俺…

胸がある！


「ああーっ！」


アソコがない！


一体どうなってる！？

鏡はないのか！


でも、今はヤング山中に話をしなければ…


「すいません、突然に。

自分は怪しいものじゃありません。

25年後の未来から、あなたによってここに送られた者です！」


このセリフだけは、来るまでに何度も頭の中で反芻していたのだ。


「なんだ…薬物中毒者か？」


「えーっ！」



全然信じないじゃないか！

ちょっとずつ話が違うって！！


「本当なんです、信じてください。

あ、そうだ！」


オールド山中から預かったノートは、ちゃんと時空を超えていた。


「これを見て下さい。
未来のあなたから託されたものです。
これを見せれば理解してもらえるはずだって。」


俺は、ノートを手渡した。

ヤング山中は警戒心を露わにしながらも、ノートを受け取り、ページをめくっていった。

俺を警戒しながら。

ヤング山中がノートを読み終わるまで、俺は裸のまま固唾を飲んで見守った。


最後のページを読み終えると、俺の方を見て


「成功したなんて…

信じられん」

と、呟いた。


「信じていただけましたか？」


「いや、君の事も書いてあるが、二十代前半の男性だとあるぞ。
これは？」


「僕にもわかりません。

ここに着いたら女になってました。」


「…
いいだろう。

話を聞こうか。」


ようやくヤング山中の前向きな言葉が聞けた。