Dad, save me

フロイライン

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理論上可能な話

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俺は、必死にタイムトラベルに至った経緯をヤング山中に語った。


「まあ、話はだいたいわかったが…

とりあえず、服を着なさい。
私のものですまないが。」


「あ、すいません。」

俺は、スウェットの上下を受け取り、慌てて着た。


「このノートに書いてある事、それと、君の話を聞いてみて、今の段階で私が構築している理論とほぼ同じなので、理論上は全て辻褄が合う。

しかし…
まさか、こんなに早く実験するとは思わなかった。

少なくとも私が生きている間は、まずもってして実現不可能だと思っていたんだがね。」


「そうですね…」


「だが、男性である筈の君が、タイムトラベルの過程で女性になってしまった事については、よくわからんな。
多分、2015年の私も想定していなかった事だろう。」


「はい。
僕もそれについては何も言われてませんので、想定してらっしゃらなかったんじゃないかと思います。」


「物質を信号化する過程、若しくはワームホールに入った段階で何らかの変化が生じたのだと思われるが…

君がここに来た段階で、元いた2015年との繋がりが切れ、二度と元には戻れなくなってしまったと考えられるんだが、過去を変えたとしても、歴史はその変化を許さず、緩やかに修正をするといった考えをする者もいるが、私は相容れないのだよ。

つまり、この時代に来たキミが、男性から女性になったということは、何らかの意味があるものだと考えている。」


「どういうことですか?」


「君は偶然、女性になったのではなく、この時代で存在するための必然で、女性になったのだと…」


「よくわかりません…」


「まあ、いい。

それよりも、君は末期癌だそうじゃないか。」


「はい。

そのために危険を冒してまで、タイムトラベルの実験に身を投じたんです。

僕の父がこの時代にガンの特効薬を開発したということがわかったので。」


「たしかに、高野君がそのような事を言っていたような気がするよ。」


「先生と父は友人だったそうですね。」


「ああ。彼は年下だけど、仲良くさせてもらってるよ。

ん…

ちょっと待ちたまえ。

キミは2015年から来たんだろ?

高野君の開発で、癌なんてものは、とっくに治癒可能なものになっているんじゃないかね?」


「いえ、父はこの薬を世に出す前に殺害されてしまいました。
そのとき、薬のデータも全て奪われています。」


「本当か!?」


「はい。」


「一瞬、外国のスパイのような組織に狙われたのかと思ったが、その後、薬の特効薬が発表されていないのであれば、そのような勢力の仕業ではないうことか…
事は、そう簡単ではないな。」


「はい。」


「今日はもう遅い。
明日にでも高野君のところに行こう。」


ヤング山中は、そう言って頷いた。
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