夫が女になって帰ってきた!

フロイライン

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「あ、心」


「どうしたの?

愛ちゃん」


「今日さあ、会社の飲み会なの。

行ってもいいかな?」


心が作った朝食を食べながら、愛は少し言いにくそうに言った。

「そんなの当たり前じゃないの。
全然行ってきて。

ワタシに遠慮なんてしなくていいんだから。」


「ごめんね。
ウチの会社、今どき珍しいんだけど、定期的にそういうのを開いてるらしくて、私の歓迎会も兼ねてって言われて…

ちょっと断れなくてね。」


「主役が行かないとサマになんないよ。

楽しんできてね。」


「心もさあ、いつも病院と家の行き来だけじゃウンザリしてるでしょ?」


「そんな事ないわよ。
愛ちゃんに働いてもらって、ワタシだけ楽していいのかって、毎日申し訳なく思ってる。」


「ねえ、今日は晩御飯、外で食べたら?

たまにはどこか買い物にでも出かけてさあ。」


「えっ」


「服とか見るの好きでしょ?

女の子なんだから。」


「うん、それは…」


「最近、全然行ってなかったと思うし、病院の帰りに、百貨店とか行って、ゆっくりしてきてよ。

その方が、私も気が楽だし。」


「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ。」


「いい服があったら、私も貸してもらえるしね。

こういうところは、私ら夫婦の利点だよね。」


「愛ちゃんも気に入ってもらえる服なんて、ワタシには選べないよ。
センスないもん。」


「よく言うよ。

女歴三年でよくここまで来たものだって、いつも感心してんのよ。

化粧なんて、心の方が上手じゃない?」


「それは、ワタシが男だから粗を隠さなきゃなんないから、色々勉強が必要だっただけ。

愛ちゃんみたいな美人だったら、全然努力なんてしてなかったわ。
素材で勝負できるもの。」


「心に言われると、なんか恥ずいわ。

まあ、とにかく、たまには息抜きするのも大切よ。」


愛はそう言って、笑った。


たしかに、心は、愛の元に帰ってきてから、ずっと、贖罪の意味もあり、家事と病院での義母の世話をきっちりこなした。

就職を断念し、愛に代わりに働いてもらっているという後ろめたさもあった。

それ故に、これらの事には手抜きをしてこなかったが、言われてみれば、服や化粧品など、自分の事で買い物をした事がなかった。


愛の厚意と言葉に甘えてみるのもいいものだと、心は、少しだけウキウキ気分になった。
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