87 / 395
美都子
しおりを挟む
美都子は今年五十になる。
夫は、愛が小さい時に亡くなり、以来、女手一つで娘を育ててきた。
幸い、夫の残した遺産や、生命保険で、生活に困る事なく、母子家庭でありながら、愛には何一つ不自由な思いをさせる事なく、大学まで行かせた。
娘が結婚し、ようやく肩の荷が下り、自分の時間を持てると思った途端に体調を崩して入院、以来三年余りの間、入退院を繰り返し、病状は一向に改善されなかった。
そんな中、娘の夫である心が、あろう事か、性転換して女となって自身の目の前に現れた。
実に三年ぶりに。
美都子は、激しい怒りを感じたが、元々心の事が大好きだった事もあり、すぐにそんな悪い感情は消え、また、心の献身的な看病と優しさを受け、考えが変わってしまったのだった。
許すどころか、すっかり意気投合した二人は、病院でも互いに気を遣う事なく、本音で接する事が出来たのだった。
美都子も心が来てくれるのを楽しみに待つようになり、その頃から病状が改善され始めたのだった。
医師も首を傾げるほどの回復を見せた美都子は、今日、久しぶりに病院を出て、家に戻ってきた。
今回の退院が、前回までと違うのは、再入院する可能性が極めて低いという事だ。
それほど、美都子の体調が良くなったという事を表していたのだった。
「お義母さん」
「ん?」
「今日は、愛ちゃん、帰るの遅くなるみたいだから、先にご飯食べといてって言われてるの。
って言っても、フツーの時でも帰ってくるのはそんなに早くはないんだけど。」
「そうなのね。」
「ワタシが働けないばかりに、本当に申し訳ないわ。」
「何言ってんのよ。
ココは私の面倒を見てくれてるし、家事だって完璧にこなしてるじゃない。
愛なんて家事嫌いだったし、きっと手抜きしまくっていたに違いないわ。」
「そんな事ないよ。
ご飯も美味しかったし、家も綺麗にしてたわよ。」
「いや、病院に持ってきてくれたお弁当一つ見ても、ココの方が料理の腕前は一枚も二枚も上よ。
さすがね。」
「ねえ、お義母さん。」
「なあに?」
「お義母さんに料理を教えてほしい。」
「私に?」
「うん。」
「私も大して上手ではないわよ。
でも、私でよかったら。」
「やった。
嬉しい。」
「もう、大袈裟なのはアンタの方じゃないの。」
「大袈裟じゃないよ。
ホントに嬉しいの。
さあ、ご飯の用意するね。
お粥と煮物を作るね。」
「ごめんね、ココ
もう少ししたらフツーの食事でいいって言われてるから、あと少しだけ待ってね。」
「そんなの気にしないで。
ワタシらの間に遠慮はナシだよ。」
心はそう言って、キッチンに入っていった。
夫は、愛が小さい時に亡くなり、以来、女手一つで娘を育ててきた。
幸い、夫の残した遺産や、生命保険で、生活に困る事なく、母子家庭でありながら、愛には何一つ不自由な思いをさせる事なく、大学まで行かせた。
娘が結婚し、ようやく肩の荷が下り、自分の時間を持てると思った途端に体調を崩して入院、以来三年余りの間、入退院を繰り返し、病状は一向に改善されなかった。
そんな中、娘の夫である心が、あろう事か、性転換して女となって自身の目の前に現れた。
実に三年ぶりに。
美都子は、激しい怒りを感じたが、元々心の事が大好きだった事もあり、すぐにそんな悪い感情は消え、また、心の献身的な看病と優しさを受け、考えが変わってしまったのだった。
許すどころか、すっかり意気投合した二人は、病院でも互いに気を遣う事なく、本音で接する事が出来たのだった。
美都子も心が来てくれるのを楽しみに待つようになり、その頃から病状が改善され始めたのだった。
医師も首を傾げるほどの回復を見せた美都子は、今日、久しぶりに病院を出て、家に戻ってきた。
今回の退院が、前回までと違うのは、再入院する可能性が極めて低いという事だ。
それほど、美都子の体調が良くなったという事を表していたのだった。
「お義母さん」
「ん?」
「今日は、愛ちゃん、帰るの遅くなるみたいだから、先にご飯食べといてって言われてるの。
って言っても、フツーの時でも帰ってくるのはそんなに早くはないんだけど。」
「そうなのね。」
「ワタシが働けないばかりに、本当に申し訳ないわ。」
「何言ってんのよ。
ココは私の面倒を見てくれてるし、家事だって完璧にこなしてるじゃない。
愛なんて家事嫌いだったし、きっと手抜きしまくっていたに違いないわ。」
「そんな事ないよ。
ご飯も美味しかったし、家も綺麗にしてたわよ。」
「いや、病院に持ってきてくれたお弁当一つ見ても、ココの方が料理の腕前は一枚も二枚も上よ。
さすがね。」
「ねえ、お義母さん。」
「なあに?」
「お義母さんに料理を教えてほしい。」
「私に?」
「うん。」
「私も大して上手ではないわよ。
でも、私でよかったら。」
「やった。
嬉しい。」
「もう、大袈裟なのはアンタの方じゃないの。」
「大袈裟じゃないよ。
ホントに嬉しいの。
さあ、ご飯の用意するね。
お粥と煮物を作るね。」
「ごめんね、ココ
もう少ししたらフツーの食事でいいって言われてるから、あと少しだけ待ってね。」
「そんなの気にしないで。
ワタシらの間に遠慮はナシだよ。」
心はそう言って、キッチンに入っていった。
5
あなたにおすすめの小説
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる