ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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安息

翌日、マンションに迎えの車が来た。 

それは、亮輔と美沙子を温泉まで送るために、多村が用意させたものだった。 

「亮輔、いいのかい? こんな立派な車まで用意してもらって…」 

美沙子は恐縮しながら車に乗りこんだ。 

「うん…」 

亮輔は浮かない顔で返事した。 
何故なら、車の運転手は、綾香を逃がすときにスタンガンで撃退した男だったからだ。 

「お母さん、お嬢さんにはいつもお世話になっておりましてね。 
社長から、くれぐれも失礼のないようにと言われております。」 

(何が社長だ…) 

亮輔は、やれやれといった表情で窓の外に目を向けた。 

「ほんとに立派な社長さんですね。この子にはもったいないです。」 

美沙子も多村の事を、どこかの会社の社長と思い込んでおり、運転する男に頭を下げて礼を言った。

車を二時間ほど走らせると、多村が用意してくれた温泉旅館が山の中に現れた。 

こじんまりとしているが、趣のある温泉旅館だった。 

「着きました。」 

男は亮輔と美沙子を車から降ろし、荷物を旅館の玄関まで運び込んだ。 

そして 

「では、私はこれで失礼します。明後日の昼前にまた迎えに来ますので、ごゆっくりおくつろぎ下さい。」 

二人にそう言うと、また車に乗り込み、その場を走り去ってしまった。 

「いらっしゃいませ。」 

旅館の玄関に入ると、満面の笑みを浮かべた女将が二人を出迎えてくれた。 

「どうもお世話になります。」 

美沙子は女将にも深々と頭を下げた。 

二人は部屋に通されると、興味深げにキョロキョロと周りを見渡した。 

そして、案内してきた仲居さんが外に出ていくと、歓喜の声を上げた。 

「すごい! この部屋、露天風呂が付いてるじゃん!」 

「こんな高そうな部屋、いいのかい? 
ホントに」 

美沙子は心配げな口調で亮輔に言ったが、やはり嬉しそうだった。 

「母ちゃん、せっかくあの人が用意してくれたんだし、のんびりさせてもらおうよ。」 

亮輔は美沙子に笑顔で言った。 

「そうだねえ。何だかもったいないけど、せっかくのご好意を有り難く頂戴しようかね。」 

美沙子もまた笑顔で答えた。
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