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確答
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「珀クン、ズバリ言うけど、あなた、本当は女の子になりたいんじゃないの?」
「それは…」
「ワタシもね、五十年もこの世界にいると、一目見たらわかるようになったの。
ワタシ達と同じか、そうでないかがね。
珀クン。
よかったら、ウチを見学して下さる?
それでダメだと思ったら、ワタシも諦めるし」
久美子の提案に、珀はしばらく俯いたまま考えていたが、顔を上げ正面を見据えた。
「わかりました。
見学させていただいてもよろしいですか。」
「ええ、喜んで。」
散々迷った挙句ではあったが、珀は久美子の誘いを受ける事にし、道場を見学する事にした。
二人は店を出て、タクシーに乗った。
「ごめんなさいね。
急に誘って、急に連れ出しちゃって。」
久美子は申し訳なさそうに言ったが、珀自体は、この事を既に前向きに捉え始めており、逆に質問をぶつけていった。
「あの、さっき団体には十名在籍ってお聞きしましたけど、試合に出ているのは何人なんですか?」
「十人よ。
興行としてはギリギリ成り立つ感じかな。
ただし、前座ではね。
ウチだけでメインで興行を打つには全然足りてないから、応援を頼んだり、他団体との対抗戦をやったりするわ。」
「他団体?
他にもニューハーフプロレスの団体があるんですか?」
「あるわよ。
ウチより歴史のあるENWって老舗の団体があってね。
そことも共同で興行を打つ事もあるのよ。」
「へえ、そうなんですか。
知識不足ですみません。」
「ううん。マニア以外、誰も存在すら知らないし、当然の事よ。
でも、団体としてはウチの方が人気があるのよ、今は。
ワタシが社長になったときは、いつ倒産してもおかしくないくらいだったけど。」
「社長さんも元々はレスラーだったんですか?」
「全然。
全く畑違いよ。ホント、ただのおばちゃんニューハーフだったの。
知り合いに頼まれて、融資をしたのが始まりで。
そしたら、段々のめり込んじゃって、気が付いたら経営者になってたって感じかな。」
「なるほど…
レギュレーションはあるんですか?
僕が男子プロレスに行けなかったのはこの小さい体が原因でしたから。」
「体の大小はないけど、ニューハーフならではの縛りがあるの。
一つは完全に性転換しているクラス。
これは下も全部取っちゃってるって意味ね。
もう一つは、ホルモン治療を二年以上行っている…
若しくは、去勢しているかのクラス。
去勢ってタマを取っちゃうことね。
この二つのクラスで試合を行うこともあるわよ。」
「そうなんですか…」
少し前向きな姿勢が出来かけていた珀だったが、レギュレーションを聞いた途端、一気に熱が冷めてしまった。
「それは…」
「ワタシもね、五十年もこの世界にいると、一目見たらわかるようになったの。
ワタシ達と同じか、そうでないかがね。
珀クン。
よかったら、ウチを見学して下さる?
それでダメだと思ったら、ワタシも諦めるし」
久美子の提案に、珀はしばらく俯いたまま考えていたが、顔を上げ正面を見据えた。
「わかりました。
見学させていただいてもよろしいですか。」
「ええ、喜んで。」
散々迷った挙句ではあったが、珀は久美子の誘いを受ける事にし、道場を見学する事にした。
二人は店を出て、タクシーに乗った。
「ごめんなさいね。
急に誘って、急に連れ出しちゃって。」
久美子は申し訳なさそうに言ったが、珀自体は、この事を既に前向きに捉え始めており、逆に質問をぶつけていった。
「あの、さっき団体には十名在籍ってお聞きしましたけど、試合に出ているのは何人なんですか?」
「十人よ。
興行としてはギリギリ成り立つ感じかな。
ただし、前座ではね。
ウチだけでメインで興行を打つには全然足りてないから、応援を頼んだり、他団体との対抗戦をやったりするわ。」
「他団体?
他にもニューハーフプロレスの団体があるんですか?」
「あるわよ。
ウチより歴史のあるENWって老舗の団体があってね。
そことも共同で興行を打つ事もあるのよ。」
「へえ、そうなんですか。
知識不足ですみません。」
「ううん。マニア以外、誰も存在すら知らないし、当然の事よ。
でも、団体としてはウチの方が人気があるのよ、今は。
ワタシが社長になったときは、いつ倒産してもおかしくないくらいだったけど。」
「社長さんも元々はレスラーだったんですか?」
「全然。
全く畑違いよ。ホント、ただのおばちゃんニューハーフだったの。
知り合いに頼まれて、融資をしたのが始まりで。
そしたら、段々のめり込んじゃって、気が付いたら経営者になってたって感じかな。」
「なるほど…
レギュレーションはあるんですか?
僕が男子プロレスに行けなかったのはこの小さい体が原因でしたから。」
「体の大小はないけど、ニューハーフならではの縛りがあるの。
一つは完全に性転換しているクラス。
これは下も全部取っちゃってるって意味ね。
もう一つは、ホルモン治療を二年以上行っている…
若しくは、去勢しているかのクラス。
去勢ってタマを取っちゃうことね。
この二つのクラスで試合を行うこともあるわよ。」
「そうなんですか…」
少し前向きな姿勢が出来かけていた珀だったが、レギュレーションを聞いた途端、一気に熱が冷めてしまった。
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