どんぐり

フロイライン

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極論

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「ちょっと、兄さん

何言ってるんだかさっぱりわかんないんだけど。」


恵子は、兄の言葉を理解出来ず、少し苛つきながら聞き返した。


「だから、今言った通りだ。

もうヒロトは元には戻らない。
心と体の性が一致しないほど辛いものはない。


だから、体の性を心に合わせるため、女性への性転換を行う。
もちろん、外科的手術はしない。
注射一本で終わる。」


恵子とヒロトの姉愛香は、思わず顔を見合わせ、続いて俯いて座る、向かい側のヒロトを見つめた。


「ヒロト

本当なの?

今のあなたは心は女だっていうの?」



「うん。

ごめん、お母さん…」


ヒロトは恵子に謝った。

愛香は、自分が抱いた弟への違和感はコレだったのかと、ようやく理由がわかり、納得した。


「恵子

気持ちはわかるが、もう万策尽きたんだ。

ヒロト本人も了承している。」


晃がそう言うと、恵子は、兄を無視し、もう一度、娘になろうとしている息子に話しかけた。


「ヒロトは納得してるのね?

それでいいのね?」




「うん。

今はもう…コレしかないと思ってるし…

後悔はしない…と思う…」



結局、ヒロトの気持ちが揺らぐ事はなく、最後は本人の意思を尊重し、肉体の性転換を認めざるを得ない状況に追い込まれる恵子だった。


晃は、立ち上がり、ヒロトを連れて自分の研究室に帰っていった。
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