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禁じ手
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土曜日
岩見親子との待ち合わせ場所に現れた遥は、周りを見渡したが、まだ二人は来ていないようだった。
ここは、幼稚園がある最寄駅から五つほど遥の自宅寄りにあり、さほど危機感を持っていなかった遥も、さすがに幼稚園の近くで保護者に会うのはマズイと判断し、ここが待ち合わせ場所となった。
しばらくすると、人混みを掻き分けて岩見が近づいてきた。
「すいません、遅くなりまして。」
岩見は恐縮して頭を下げた。
「おはようございます。
あの、俊斗君は?」
岩見が一人で来た事を不思議に思った遥は、すぐに質問をした。
「俊斗は託児所に預けてきました。」
「託児所?
ですか」
「ええ。休日でどうしてもっていう時に、たまに利用してるんです。
高いから滅多に使わないですけどね。
俊斗も詳しい話は理解出来ないでしょうが、良い話ではないとか、自分の事を言われてるって事ぐらいは雰囲気でわかってしまうと思いますので、連れてこない方が良いかなって。」
「そうですか。」
「どこでお話しします?
そこの喫茶店にしましょうか」
「はい。」
少しレトロな感じのする店だったが、落ち着いて話ができそうだと思い、遥も納得した。
席に着き、二人共コーヒーを注文すると、遥が話を始めた。
「岩見さん
今日はこんなところにお呼び立てして申し訳ありません。」
「いえいえ、石川先生
こちらこそ、私達のためにご足労いただいて本当に申し訳ないです。」
「早速なんですが、延長保育についてのお話をさせていただいてもよろしいですか。」
「あっ、はい」
「愛多幼稚園は18時半までの延長保育をしており、幼稚園の中でもかなり長い部類に属します。
俊斗君もいつもこの延長保育でお預かりしているのですが、お父様がお迎えの時間に間に合わず、19時頃になる事も稀ではありません。」
「そうですね…
本当に申し訳ありません…」
「ワタシ自身は全然かまわないんですが、やはり集団生活の中で、特定の人だけを贔屓したり特別扱いをしてしまうも、他の保護者さんが知った場合、クレームをつけてくる事が十分に考えられます。」
「そうですね…」
「園長先生もそこをご心配されていて、このような状態が続くようであれば、転園をお勧めするしかないと仰っています。」
「本当に申し訳ございません…」
「ただ、それでは俊斗君があまりにも可哀想ですし、岩見さんのご家庭の事情を考えると、何かいい方法がないかと、こうしてお父様にお会いして話をさせていただいた次第なんです。」
遥の言葉に、岩見は力なく頷いた。
岩見親子との待ち合わせ場所に現れた遥は、周りを見渡したが、まだ二人は来ていないようだった。
ここは、幼稚園がある最寄駅から五つほど遥の自宅寄りにあり、さほど危機感を持っていなかった遥も、さすがに幼稚園の近くで保護者に会うのはマズイと判断し、ここが待ち合わせ場所となった。
しばらくすると、人混みを掻き分けて岩見が近づいてきた。
「すいません、遅くなりまして。」
岩見は恐縮して頭を下げた。
「おはようございます。
あの、俊斗君は?」
岩見が一人で来た事を不思議に思った遥は、すぐに質問をした。
「俊斗は託児所に預けてきました。」
「託児所?
ですか」
「ええ。休日でどうしてもっていう時に、たまに利用してるんです。
高いから滅多に使わないですけどね。
俊斗も詳しい話は理解出来ないでしょうが、良い話ではないとか、自分の事を言われてるって事ぐらいは雰囲気でわかってしまうと思いますので、連れてこない方が良いかなって。」
「そうですか。」
「どこでお話しします?
そこの喫茶店にしましょうか」
「はい。」
少しレトロな感じのする店だったが、落ち着いて話ができそうだと思い、遥も納得した。
席に着き、二人共コーヒーを注文すると、遥が話を始めた。
「岩見さん
今日はこんなところにお呼び立てして申し訳ありません。」
「いえいえ、石川先生
こちらこそ、私達のためにご足労いただいて本当に申し訳ないです。」
「早速なんですが、延長保育についてのお話をさせていただいてもよろしいですか。」
「あっ、はい」
「愛多幼稚園は18時半までの延長保育をしており、幼稚園の中でもかなり長い部類に属します。
俊斗君もいつもこの延長保育でお預かりしているのですが、お父様がお迎えの時間に間に合わず、19時頃になる事も稀ではありません。」
「そうですね…
本当に申し訳ありません…」
「ワタシ自身は全然かまわないんですが、やはり集団生活の中で、特定の人だけを贔屓したり特別扱いをしてしまうも、他の保護者さんが知った場合、クレームをつけてくる事が十分に考えられます。」
「そうですね…」
「園長先生もそこをご心配されていて、このような状態が続くようであれば、転園をお勧めするしかないと仰っています。」
「本当に申し訳ございません…」
「ただ、それでは俊斗君があまりにも可哀想ですし、岩見さんのご家庭の事情を考えると、何かいい方法がないかと、こうしてお父様にお会いして話をさせていただいた次第なんです。」
遥の言葉に、岩見は力なく頷いた。
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