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全知全能
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「八尾ちゃん
ジローさんが来てんだよ。
四階までいい?」
横田は、ジロー達のために電話で八尾ディレクターを呼び出してくれた。
ジローと久美子が控え室で座って待っていると、八尾がノックをして入ってきた。
「おはようございます。
ジローさん!
友谷さんも…
どうしたんですか?」
いかにも若手のテレビマンといった風体をしている八尾は、キツめのパーマとサングラスに、シャツの袖を捲り、チノパン姿だった。
「いやあ、近くまで来たから八尾ちゃんに会いたくなってなあ。
横ちゃんに言って、中に入れてもらったってわけだよ。」
「えっ、ホントっすか?
それなら嬉しいんですけど。
ジローさんにはAD時代からよく面倒見てもらったから。
感謝してもしきれない恩人ですからね。」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。
八尾ちゃんの番組、いつも見てんだよ。
あれ、面白いなあ。」
「あっ、見てくれてるんですか。
ありがとうございます。」
「未解決事件を追うって仕込みなし?」
「仕込みなんてないですよ。
この前、ソ連から来てもらった超能力者も正真正銘の本物です。」
「あの人、すげえな。
透視するってやつ。
あれで失踪事件を解決したんだろ?」
「はい。
警察が見つけられなかったのを、ウチらテレビ屋が見つけちゃったもんすから、後で色々ややこしい事になりましたよ。
でも、視聴率稼いでなんぼの世界ですから、そういう面では成功しましたね。」
「いやいや、それでこそテレビマンだよ。
ところで、次の放送はいつなんだ?」
「ええ。
ちょうど今、ロケをしてるんですけど。
順調にいけば、三週間後にスタジオ収録ですね。
で、年末に特番として放送します。」
「八尾ちゃん。
実は、アンタのとこの番組で取り上げてもらいたい案件があるんだけど。
話だけ聞いてもらってもいいかな。」
「えっ、マジですか?」
「マジよ、マジ
大マジなんだ。」
「それでしたら、話を聞かせてもらってもいいですか。」
「ああ。
それは、ここにいる久美子の友達の事なんだけど…
ちょっと、久美子、話をしてくれ。」
ジローに促され、久美子が代わって話を始めた。
「八尾さん。ご無沙汰しています。」
「いえ、その節は色々おせわになりました。
引退されたと聞いて残念に思ってたんですよ。
で、どのような?」
「はい。
ワタシの地元…大阪に住んでいた同級生の女の子の事なんです。
四年前の十二月十八日に、ワタシに会うために新幹線で大阪から東京に着き、その足で、ワタシが収録に参加していたこのスタジオに立ち寄ったんです。
しかし、そのまま忽然と姿を消し、以後、何の手掛かりもなく、今日に至りました。」
「えっ、このスタジオの前なんですか?
でも、四年前だったら、そのとき警察に届けを出さなかったんですか?」
「彼女が東京に来ていると知ったのはごく最近で、東京で行方不明になった事は誰もわからなかったんです。」
久美子の話に、八尾は真剣に耳を傾けて聞いていたが…
ジローさんが来てんだよ。
四階までいい?」
横田は、ジロー達のために電話で八尾ディレクターを呼び出してくれた。
ジローと久美子が控え室で座って待っていると、八尾がノックをして入ってきた。
「おはようございます。
ジローさん!
友谷さんも…
どうしたんですか?」
いかにも若手のテレビマンといった風体をしている八尾は、キツめのパーマとサングラスに、シャツの袖を捲り、チノパン姿だった。
「いやあ、近くまで来たから八尾ちゃんに会いたくなってなあ。
横ちゃんに言って、中に入れてもらったってわけだよ。」
「えっ、ホントっすか?
それなら嬉しいんですけど。
ジローさんにはAD時代からよく面倒見てもらったから。
感謝してもしきれない恩人ですからね。」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。
八尾ちゃんの番組、いつも見てんだよ。
あれ、面白いなあ。」
「あっ、見てくれてるんですか。
ありがとうございます。」
「未解決事件を追うって仕込みなし?」
「仕込みなんてないですよ。
この前、ソ連から来てもらった超能力者も正真正銘の本物です。」
「あの人、すげえな。
透視するってやつ。
あれで失踪事件を解決したんだろ?」
「はい。
警察が見つけられなかったのを、ウチらテレビ屋が見つけちゃったもんすから、後で色々ややこしい事になりましたよ。
でも、視聴率稼いでなんぼの世界ですから、そういう面では成功しましたね。」
「いやいや、それでこそテレビマンだよ。
ところで、次の放送はいつなんだ?」
「ええ。
ちょうど今、ロケをしてるんですけど。
順調にいけば、三週間後にスタジオ収録ですね。
で、年末に特番として放送します。」
「八尾ちゃん。
実は、アンタのとこの番組で取り上げてもらいたい案件があるんだけど。
話だけ聞いてもらってもいいかな。」
「えっ、マジですか?」
「マジよ、マジ
大マジなんだ。」
「それでしたら、話を聞かせてもらってもいいですか。」
「ああ。
それは、ここにいる久美子の友達の事なんだけど…
ちょっと、久美子、話をしてくれ。」
ジローに促され、久美子が代わって話を始めた。
「八尾さん。ご無沙汰しています。」
「いえ、その節は色々おせわになりました。
引退されたと聞いて残念に思ってたんですよ。
で、どのような?」
「はい。
ワタシの地元…大阪に住んでいた同級生の女の子の事なんです。
四年前の十二月十八日に、ワタシに会うために新幹線で大阪から東京に着き、その足で、ワタシが収録に参加していたこのスタジオに立ち寄ったんです。
しかし、そのまま忽然と姿を消し、以後、何の手掛かりもなく、今日に至りました。」
「えっ、このスタジオの前なんですか?
でも、四年前だったら、そのとき警察に届けを出さなかったんですか?」
「彼女が東京に来ていると知ったのはごく最近で、東京で行方不明になった事は誰もわからなかったんです。」
久美子の話に、八尾は真剣に耳を傾けて聞いていたが…
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