鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

歪み

試合は、セットカウント3-0で、鐘ヶ岡が順当に勝利を収めた。

しかし、初戦同様まどかにボールを集める作戦を取ったが、息が合わず、外す場面も見られ、圧勝と呼べるものではなかった。

この試合は、紅陽学院の偵察隊により撮影され、監督の藤井をはじめとする関係者がビデオを食い入るように見入った。


「監督、この試合をどう見ます？」


「そうだな。
新田の調子がイマイチだったように思うが、相変わらず驚異的な跳躍力と、スパイクの強烈さは健在だ。
依然として我々にとって脅威である事に変わりはない。」


「たしかにそうですが、ウチと練習試合をしたときの新田はこんなもんじゃなかったですよね。

ケガでもしてるんでしょうか。」


「いや、コンディション不足だろう。
過度な練習は、逆にポテンシャルを下げてしまう。
昔と違って、今は選手を科学的根拠に基づいて指導するべきだ。

もし、そうだとすれば監督の怠慢だな。」


「木本監督の…」


「ああ。
彼女が鐘ヶ岡のエースアタッカーだったときには、ウチも全然太刀打ち出来なくてなあ。
その才能と技術を羨ましく思って見ていたもんだよ。

だが、そんな天才が率いても五年間向こうさんは、全国大会に進出出来ていない。

言うなれば、名選手名監督に非ずって事さ。」


「その点、藤井監督は古川恵美梨のポテンシャルを100%引き出していますもんね。」


「ああ。アイツはウチの宝ってだけじゃない。

将来、日本の宝と呼ばれる逸材だ。
俺の手で潰すわけにはいかないのさ。

だから、君たちは甘いと思うかもしれんが、俺はアイツの起用法については慎重にならざるを得んのだよ。」


「なるほど」


「しかし、新田まどかが覚醒した今、全力で挑まなければ、多分我々は負ける」


藤井は、決意を新たにした。