ニューハーフな生活

フロイライン

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帰郷

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新幹線の中で、気分が悪くなるくらいに不安で落ち着かないワタシに、妹の優菜からLINEが来た。
無事に手術が終わったみたいだけど、まだ意識は戻っておらず、ICUに入っているとの事。
面会謝絶なので、とりあえず実家の方に来るようにとの事だった。

夜の11時すぎ、実家に到着した。
母はまだ病院にいるらしく、優菜だけが家に戻っていた。

「優菜、お父さんの容態は!」

ワタシは家に入るなり、父の容態を聞いたが、優菜は、それよりも気になる事があったみたいだ。

「お兄ちゃん

えっ、お兄ちゃん?」

この緊急事態にあっても、ワタシのあまりの変わりように優菜が驚きの声を上げた。
ワタシはそんなのかまわず、言葉を続けた。

「大丈夫なんか!?」

「あ、うん。
手術は成功したよ。でもまだ意識は戻ってないの。ICUは家族一人しか付き添えないから、お母さんを向こうに残したまま私だけ帰ってきた。」

ちょっと見ない間に優菜も成長して、しっかりした事を言うようになった。優菜とワタシとは三つ違いで、高校一年生だ。

病院に行けないなら、ワタシもやる事がなく、家で待つしかなかった。

「お兄ちゃん、なんか感じ変わったね。
髪も伸ばしてるんだ。」

「切るの面倒くさくてさ。」

こんな状況下でも、ワタシの外見に対する違和感が相当強いらしく、沢山の質問を投げかけてきた。

「東京行くとお兄ちゃんさえ変わっちゃうんだね。
バンドでもやってんの?」

「やってないよ。浪人生だぜ、俺。
ちょっと息抜きするっていうか、気分転換する意味でで髪伸ばしたりしてるだけだよ。」

テキトーに答えてやった。

「ふーん。ところで、大学は合格出来そうなの?」

痛いところつきやがる。

「うーん、どうかな」

「もし、またダメだったらお父さん怒ると思うよ。
浪人する自体反対していたからね。」

オヤジは子供の頃からとても厳しくて、ワタシはよく怒られた。
浪人するってなったときも、ブチ切れられて大変だったけど、一年という約束で最終的には許された。

でも、ニューハーフとしての生活がメインとなってしまった今、成績は上がるどころか落ちる一方で、もし、受験に失敗したとしたら、多分殺される。
それと、地元に戻って就職させられるだろう。
既にオヤジの知り合いの会社に頭を下げて、もしものときはお世話になるよう段取りしてるって、お母さんが言ってたし。

それに、この姿を見たら卒倒するだろうなあ。
絶対に理解してくれないと思うし‥
考えただけでも背筋が凍る。

でも、今は早く意識を回復してもらわないと、何も始まらない。

ワタシは気持ちを落ち着ける為に、ゆっくりとお風呂に入り、久々の自分の部屋で、そして、自分の使ってたベッドで寝た。

とりあえず、明日だ。
朝になったらすぐに病院に行こう。
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