ハカイジ

フロイライン

文字の大きさ
35 / 88

開拓者

しおりを挟む
広大な敷地に建てられた工場、そして本人達は何も聞かされていないが、何かが出ると言われている採掘場。

和人は、この採掘場に配属され、毎日掘削作業に従事させられていた。


三ヶ月、休みもなくだ。



そんな生活が続く中、突如、会長に呼び出されたのだった。


和人は、採掘場を出て、係の者が運転するカートで、本建屋に移動してきた。

その道中、和人は

「あの、一つお聞きしていいですか?」

と、運転する男に質問した。


「なんだ?」


「僕達が掘らされているあの現場って、一体何が出てくるんですか?」


「あー、あれか。

知らないのか。」


「はい。

全く。」



「何も出てこないよ。」



「えっ!」



「まあ、いい。

お前だけに教えてやる。
これは誰にも言うなよ。」


「はい。」


「こんな話を聞いたことないか。

旧ソ連だかどこかの政治犯収容所で、看守は、大量の土が盛られている場所を示し、これを離れた場所に運ぶように命令した。

政治犯の男は命じられた通り、土を掘って手押し車にのせて、遠く離れた場所に少しずつ運び始めた。

1日かけても大して運べない、かなりの重労働だった。

それでも一年間休まずに朝から晩まで作業を続けて、ようやく土を運び終わった政治犯は、看守に作業の終了を報告した。

看守は、男の勤勉な働きに敬意を表した後、こう言った。


それでは、この土をまた元の場所にもどすようにと。」


「…」



「大概の人間は、これをされると精神に異常をきたす。

会長は、こんな話がお好きでな。

自らも似たような事を実践してらっしゃるのだよ。」


「なんで、そんな事を…」



「さあな。

楽しいからじゃねえか。」


看守の男は、そう言って笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...