ハカイジ

地獄での二人

レンと愛果は、二人だけになってしまった。


だが、あまりのショックに、どちらも声を発することなく、ただ、呆然として、見つめ合うだけであった。


しかし、その静寂を打ち破るかの如く、レンが口を開いた。


「久しぶり…」

と。


「レン君…


どうして？」


と、絞り出すように言った。



「ごめん

キミが僕に愛想を尽かす原因となった借金が…

焦げ付かせちゃって…」


レンは、力なく答えた。


「レン君…

私、あのときはカッとなっちゃって、あなたの話を何も聞かずに出ていったけど…


離婚してから知ったんだけど、借金の原因て、私のために作ったものだったのね…」



「いや、そんな事で僕の罪が許されるわけじゃない。

手持ちのお金もないのに、いいカッコしてプレゼントを買おうとした僕が悪いんだよ。

それも、ムリだとわかってるのに、勧められるままマルチ商法なんかに手を出してしまって…」


「そうよ、バカよ、あなたは。

私は何も要らなかったのよ。

あなたさえいれば…」


「ごめん…」


「私、あなたとやり直したくて、ずっと探してたの。

でも、どこにいるのかわからなくて…


そんなある日、男の人が現れて、あなたの居場所を知ってるって…」


多分、安田の手の者が、この場の演出をするためだけに、愛果を見つけて連れてきたのだろう…


レンは、安田の恐ろしさを身をもって知った瞬間であった。