ハカイジ

重なり合う思い

「うん。そうよ。

ワタシは、桑原和人。」

麻衣は、自分が和人であると打ち明けた。


「桑原さん…

本当に元男性なんですか？

どう見ても女性にしか見えません。」


愛果は、自分よりはるかに美しく、スタイルも抜群の和人が、男だったなんて信じられないとばかりに質問した。


「ええ。

ワタシもあそこに連れて行かれるまでは、フツーの男として暮らしていたわ。
好きな女性もいて、お付き合いをしていたしね。」



「じゃあ、やっぱりあの安田って人に…」



「ええ。
なぜか、ワタシはあの人に気に入られてしまってね…

それまではなかった施設が作られるきっかけになってしまったの。


そういう意味では、あなたのご主人には本当に申し訳ない事をしたと思っているわ。」



「いえ…

桑原さんも被害者じゃないですか。

悪いのは全部あの安田って男です。」


「そうね。

で、ワタシに用って何かしら？」


和人は、可愛らしい女性声で、愛果を見つめて言った。



「はい。

ワタシの主人も、聞くところによると、安田に気に入られたらしく、部屋に呼ばれたんです。」



「へえ。

部屋にねえ。

じゃあ、相当気に入られてるんじゃない？
ワタシがいた時までの事しか知らないけど、あの部屋に呼ばれたのは、ワタシ以外誰もいなかったわよ。」


「そうなんですね…


で、私もその部屋に呼ばれたんです。

そして、女性化してしまった主人とセックスをしろって。
成功したら刑期を10年減らすって…

でも、主人は去勢手術をされており、女性ホルモンを投与されている事から、不能になっており、出来ませんでした。」


「ひどいわね。

でも、あの人が考えそうな事だわ。」



「桑原さん

でも、あなたは今、ここにいらっしゃいます。

つまり施設の外にです。

どうやって出てこられたんですか？」


愛果は、核心部分について、質問をした。