ハカイジ

提案

「なあ、和人

お前にワシは褒美をやりたい。


何か望みがあるなら言ってみろ。」



和人は、一心不乱で安田の全身を舐め回していたが、ふと動きを止め、安田の顔を見た。

そして…



「望み…

これといって欲しいものはありません。」



「ほう。

欲のない女だな。


遠慮は、いらんぞ。

何か欲しいものはないのか？」



「いえ、色々とワタシだけ特別扱いしていただいてて、申し訳ないくらいです。」


「それは仕方ないじゃないか。

オマエは特別だからな。」



「正直言って、欲しいものとか希望みたいなものは、全くありません。


ここに来た当初は、早く外に出たいとかそういうふうにも思っていましたが、今はもう…」


和人は、穏やかな表情でそう言った。


「やはり、去勢というのは、生への活力を失わせるな。
お前も、ここに来た当初にあった覇気が全くない。」


「それは…

そうかもしれません。

ワタシ、気持ちの部分でここまで変わるとは思ってもみませんでした。」



「無理もないさ。



よし、決めた。


和人


お前を解放してやる。」



「えっ」



「お前の服役期間を無くしてやると言ってるんだ。」



「どうしてですか？」


「別にお前に興味がなくなったというわけではないが…

とにかく完璧すぎるんだよ、お前は。」


安田の言葉に、和人は首を傾げるしかなかった。