ハカイジ

yakka

「ここには、我々のグループの工場があり、債務不履行に陥ったお客様に働いてもらおうっていう話です。

もちろん、労働に対しては規定の賃金をお支払いします。

そこから、寮費、食費等を差し引き、残った額を返済に充ててもらいます。


平野さんの借金額は、今日の時点で約1000万。

ざっと計算すると、完済するのに24年ほどかかります。」


「に、24年！」


「額が大きいので、元本がなかなか減らないのが厳しいところですが、頑張って下さい。」


「…」



「あ、そうだ。

我々のグループの事業は多岐にわたっていましてね。

今、紹介した工場勤務の他に、もっと稼ぎのいい業務を紹介することが出来ます。」


「稼ぎが？

もし、そこで採用されたら、返済期間は変わりますか。」



「大いに変わりますよ。

過去には、あなたと同程度の債務があった人が、二年で完済し、ここを出ました。」


「そんなに早く…

難しい仕事なんでしょうか。」


「いや、そんな事はありませんよ。

むしろ、工場勤務より簡単だと思います。

まあ、面接を受けてもらわないといけませんが。

どうされますか？」


「えっと…

じゃあ、お願いします。」


剣持の話を聞いても、イマイチわからない感じのレンだったが、ダメ元でチャレンジしようと決断した。

こんなところに二十四年もいたら、出る頃には四十四歳になっている。

人生が終わったようなものだ。

だったら、早く出られる方に賭ける。

レンはそう決意し、また案内役の男に連れられてエレベーターに乗り、地下に降りた。