ハカイジ

射幸心

(高いなあ…

これは無理か)


工場での昼休み時間、レンは携帯の画面を覗き込み、ため息をついた。


「おいおい、平野

そのでかい溜息、やめてくれる？」

同期でこの工場に入ってきた三井が、隣に腰掛けながら言った。


「ごめん。

自分で気づかない間に出ちゃってた。」



「何見てたんだよ。」

三井は、横からレンの携帯に視線をやったが、すぐにすべてを察したようだった。


「なるほどな。」



「え？

何がなるほどなんだ？」


「お前、わかりやすいんだって。

多分こうだろ？

お前は、新婚の奥さんに喜んでもらおうとして、サプライズでクリスマスプレゼントを買おうとした。


しかし、工場勤めの底辺層で苦しんでいるお前は、予算が全然合わなくて、何も買えやしない。


そして、でかい溜息をついたところを俺に見られた。


ってとこじゃないのか。」






「当たってる…」


レンは、驚きの表情で、三井を二度見した。



「お前の奥さん、美人だもんなあ。

なんで、お前みたいなパッとしない奴が結婚できたんだ？

金があるわけでもないし、取り柄ゼロじゃねえか。」



三井は、不思議そうにレンの顔を見ながら言った。


「うるせえよ。

そこまでお前に言われる筋合いはない。」



「まあ、お前は、顔は女みたいで中性的なところがあるから、そういうのが良いってなったのかね。」


「知らねえって。」


レンは、少しムッとした様子だったが、すぐに表情がこわばってしまった。


何故なら



「お前ら、何盛り上がってんの？」


二人の上司で、この工場の主任である柿崎が、ニヤニヤしながら近づいてきたからであった。