ハカイジ

MLM

「平野はなんか夢があるのか？」


柿崎は、グラスを置き、斜め前のレンに問いかけた。


「えっ、夢ですか？

それは、別に…」



「いい車乗りたいとかないのか？」



「車は…そんなに興味は…」



「平野さあ、お前、今日、嫁さんにクリスマスプレゼント買おうとしたけど、予算がないからって諦めてたよな。」


「はい…それは…」



「そんなこと気にせずに、好きなもの買えるくらいの金が欲しいと思わないか？」


「はあ…」



「まあ、いい。

じゃあ、話題を変えよう。

平野は体調が悪くなったらどうしてる？」


「それは…病院に行って、診てもらうようにしています。」


「そうだよなあ。
ちゃんと働いてるし、保険証もあるから、そりゃ使うよな。


今、何割負担だ？」


「3割…ですよね？」


「そうだ。

だけど、このままいけば、医療財政が圧迫され、近いうちに5割負担になっていくだろう。」


関係のない事を話し始めた柿崎に、レンは、言葉に出来ないような不安な気持ちを抱いた。


「それでも日本はマシだよ。

アメリカを見てみろ。

自由自助の精神か何かは知らないけど、国民皆保険制度自体がそもそも存在せず、民間のものだけに頼っている状態だ。

もちろん、低所得者や無収入の人間を救済する措置はあるが。」



「あの…

何の話なんでしょうか…」


恐る恐る、レンが言うと


柿崎は頷き、櫛田とアイコンタクトをした。