新 或る実験の記録

フロイライン

文字の大きさ
上 下
8 / 22

投与

しおりを挟む
説明会の後、入所してきた人達と少しだけ話をしたが、境遇的には俺とそう変わらなかった。
つまり、お金が必要だったから…


「じゃあ、検診を受けていただきますから部屋の移動をお願いします。」

今度は男性の係員がやってきて、一階に入っている医療施設へ移動するように言った。


足取り重く皆で下に降りると、医務室のような部屋があり…
そこに一人ずつ入り、入所前に受けたのと同じような検診を受けた。

予想通り全員合格。
誰一人欠けることなく、次のステップに移行した。


次のステップ…それはもう、注射を打たれるって事だ。

運命の時まで、俺達は部屋に戻り、最後の時をすごした。



そして…




ついにその時が来た

俺の体にこれから薬が投与される。

診察室に入ると、白衣を着た医師が看護師と共に待っており、向かい側に座るように促された。

「こんにちは、菅原さん」


「こんにちは、よろしくお願いします。」


「今から女性への性転換をする薬を投与します。

筋肉注射で、少し痛いですがすぐに終わりますので我慢してください。」

「はい。」


「注射をして8時間ほどは何の変化も起こりませんが、そこから痛みを伴いながら体の変化が始まります。
骨格の変化など痛みは時間と共に酷くなりますので、その段階で全身麻酔をかけます。

約16時間後に性転換は完了します。」

「わかりました。」

「それでは注射をしますので、左腕を出して下さい。」

看護師が俺の腕を取り、二の腕にアルコール消毒をした。

「少しチクっとしますよ」

「…」

たしかに痛かったけど、我慢できないほどのものではなかった。


「終わりました。
それではしばらくの間お部屋で安静にしていて下さい。

8時間後にまたお声がけさせていただきますので。」

看護師の人がそう話してくれて、俺は解放された。

部屋に戻り、ゴロンと仰向けに寝た俺は、もう後戻り出来ないところまで来てしまった絶望感と諦めの気持ちが相俟って、すっかり元気を失ってしまった。

そこから寝てしまった。


注射を打ったのは午後1時

目を覚ましたのは午後7時…

注射をして6時間、まだ変化はないな。

ちんちんもしっかり付いてる。


しかし、さらに二時間が経過すると、全身に鈍い痛みが走り出した。

何と表現したらいいんだろう。

風邪の時の関節痛みたいな痛みが全身を覆ってる感じ。


「菅原さん」

俺の名前を呼ぶ声が廊下からして、部屋がノックされた。

昼間に診察室にいた看護士さんが俺を呼びにきてくれたんだ。


「そろそろ痛みが強くなって来ますので、治療室までお越しいただけますか。」


「はい。」

俺は痛みに耐えながら起き上がり、看護士さんの後をついて行った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

消えない思い

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:120

桜の季節

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:7

優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:128,319pt お気に入り:2,203

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,463pt お気に入り:23,939

処理中です...