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第十六話
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進んだ先に広い空間があった。
約20メートル四方の大きい部屋。
その中心にヤツはいた。
「!」
「あれはまさか!?」
中央に佇んでいるアンデッドを見た瞬間、驚愕の声をあげるマリアさん。
古びたローブを身にまとったゾンビ。細い枯れ木のような手には杖が握られていた。
明らかにただのゾンビではない気配を発していた。
だって身体からなんかオーラみたいなモノが立ちこめてるんだよ?絶対にやばい相手だよ……。
アンデッドの頭上に浮かぶ二本の赤ゲージの上に表示されている名は………
「エルダーリッチ!?禁忌を犯した【魔法使い】の成れの果てが何故ここに!?」
「…普通に考えてあれでしょ?さっき話してた【魔導士】じゃないの?」
動揺するマリアさんを横目に僕は冷静に呟くと、素早くアイテムストレージに【ロングソード+1】をしまい、【十文字槍+1】と【革の盾】を取り出した。
おあつらえ向きに広い空間、そして先程の【魔導士】の話、アレって多分このクエのボスでしょ?
「マタ下等ナ人間ガコノ地二迷イ込ンダカ…」
また?はいボス確定。ていうかただの迷子の捜索クエでボスが出るのかあ…。
「愚カナル人間ヨ!我ガ至高ナル力の糧トナルガイイ!」
「ファントムさん、来ます!」
「問答無用ですか!?」
こうして初めてのボス戦の幕が切って落とされた!
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
「でかっ!?」
「くっ!」
人の大きさくらいある火の玉が僕達に向かって放たれた!
左右に飛びなんとか躱した僕とマリアさん。
1…2…と魔法発動後のカウントを心の中で数える僕。
反対側に跳んだマリアさんは、すぐに体勢を整えると駆け出した。
「せいやああああああ!!!」
マリアさんが【バスターソード+6】を大きく振りかぶり、エルダーリッチに向かって跳躍した。
9…10。いけマリアさん叩っ斬れ!
「甘イワ!【ライトニング】!」
「!?」
ウソ速い!?
一条の電撃がマリアさんに向かって放たれた!
「きゃああああああ!!!」
電撃を喰らったマリアさんは、その場に膝をついた。
片膝をついたまま動かないマリアさん。
マリアさんのHPゲージが半分近く減っていた。
「マリアさん動いて!」
「…っ……!」
もしかして、動けないのか?
まさか麻痺喰らって動けないパターン!?
電撃系ならありえる話だけど…ヤバいヤバい!いきなり主力がおとされた!
「くそっ!おおおおおお!」
僕はエルダーリッチへ向かって大声を出しながら駆け出した。
僕に視線を向けるエルダーリッチ。
よし、そのまま僕にターゲットを移せ。
エルダーリッチは後ろ向きに後退しながら、僕の方へ杖を向けた。
来るか…!
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
「きた!」
僕は急停止して、左手に持った【革の盾】を前に出して防御態勢に入った。
エルダーリッチの放った【ファイアーボール】が僕に直撃した!
大きい衝撃とともに、振動が全身に伝わっていく。
視界の片隅に表示されてる僕のHPゲージが八割以上削られた。
マジか…!?レベルアップ分のSPをVITとINTの半分ずつ振って底上げしてたのにこの威力か…!
逆にしてなかったら今のでやられてたかも…?
(…3。動く。4…一撃でこれか。常にフルでいないと死ぬな)
心の中でカウントしながら考える僕。
いまの攻撃喰らって一応タゲはとれたか?ならなるべく時間を稼ぎながら様子見だ。
エルダーリッチの周りを反時計回りにくるくる歩きはじめた。
「ヌ!?」
「ほらほら!こっちこっち!」
いきなり自分の周りを回り出した僕を目で追うエルダーリッチ。
声を出しながら歩く僕は、アイテムストレージから【薬草】を全部取り出した。
僕はそれらを全部口に含んだ。口に入れた瞬間【薬草】は溶けるように消えていった。
【薬草】を一気食いをしたおかげで、HPが半分くらいまで回復した。
ていうか5個全部使用して三割弱しか回復しないのか…。
さすが無料パック。運営さん、使えないクズアイテムをありがとうwww
(…9…10。【ファイアーボール】のクールタイムは終わったな。いつ撃ってもおかしくないつもりで立ち回るか)
一応回復を終えた僕は、エルダーリッチの周りをだらだらと歩き続ける。
エルダーリッチが杖を僕に向けたらダッシュで走り回った。
狙いが定まらないエルダーリッチは杖をおろして忌々しそうに僕を睨みつけた。
ゾンビみたいな腐った顔で睨まないでよ…(怖)
「エルダーリッチとの距離は約5メートル。それ以上近づくと攻撃行動をとる。杖を向けて魔法を撃つ行動。【ファイアーボール】の再使用時間は10秒」
エルダーリッチの周りを歩きながらぶつぶつ呟く僕。
声を出して集めた情報を覚える。声に出して言うと覚えやすいっていうけど、側から見てると危ない人だよね(笑)
できれば【ライトニング】も喰らってみたいけど、いま喰らったら死ぬから却下。
なんとかマリアさんが復活してくれるまで時間稼がないと…。
無駄に近寄って死なないように立ち回っていると、片膝をついてスタンしていたマリアさんが立ち上がったのを見た。
よし時間稼ぎ成功!
「マリアさん僕にヒール!」
「わかりました!」
僕の指示に従ったマリアさんは、僕に向かって手をかざした。
「【ヒール】!」
癒しの光が飛んできて僕を包み込んだ。
HPゲージが見る見るうちに回復していく。僕のHPは九割近くまで回復した。
さすがマリアさんの【ヒール】【薬草】5個分より回復量ある!
「距離とりながらクールタイム稼いで!【ヒール】使えるようになったら自分に【ヒール】かけて!」
「はい、わかりました!」
たしかマリアさんの【ヒール】のクールタイムは15秒。
なんとかマリアさんが全回復するまで僕がタゲをとり続けて時間を稼がないと!
仲間の壁となって守り抜く【盾役】の本領発揮だ!
…といっても、戦況はちょっと不利だ。
エルダーリッチの魔法発動は僕がガードしてもあの威力。
回避に専念しながらタゲをとり続けなきゃいけない。
近づけば近づくほど、回避が難しくなるだろう。
エルダーリッチとの安全距離は約5メートル。
発動モーションが大きい【ファイアーボール】はともかく、【ライトニング】は見た感じこの距離でも回避は難しいだろうな。
正攻法じゃ距離を詰めることは難しい。なら奇策でいきますか。
ひとつ策を思いついた僕はその策を実行しようと思い立った。
問題はうまくできるかだ…。
タイミングを合わせられなきゃ致命傷。また逃げ続けないといけなくなる。
もし成功したら………
(一気に距離を詰めて殴り合いに持ち込んでやる!)
僕はいつでも動けるように身構えじりじりと距離を詰めていく。
左手に持つ【革の盾】を前に出して、右手に持った【十文字槍+1】を右肩に担ぐように持った。
エルダーリッチは僕を見据えて悠然と佇んでいる。
(魔法の徴候なし…。いつ撃ってくる?)
そんなことを考えていた時、エルダーリッチの杖が動いた!
どっちだ!?
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
(今だ!)
僕に向けられた杖から火の玉が膨れ上がっていく発動寸前の今を狙って僕は右手に担いだ槍を槍投げの要領で放り投げた。
「いっけえぇぇぇ!!」
「ナ…!?」
投擲された槍がこちらに放たれた直後の【ファイアーボール】に当たった!
エルダーリッチの目の前で【ファイアーボール】が爆発した。
僕は駆け出しながらメニューを開く。
アイテムストレージから【ロングソード+1】を取り出す!
…前に、エルダーリッチの懐に飛び込んでしまった。
間に合わなかった!じゃあ仕方ない一応物理攻撃力あるし!
僕は左手に持った【革の盾】でエルダーリッチを殴りつけた。
盾を顔面に受けたエルダーリッチ。
その腐った顔が仰け反った。
エルダーリッチの頭上に浮かぶゲージがほんのわずか減少する。
それを見た僕は盾を右手に持ち替えて、すかさずエルダーリッチの顔面めがけて思いっきり殴りかかった。
ボコンッ!と鈍いイイ音が鳴ってエルダーリッチのゲージがさっきより削れた。
うん、さすが黄金の右。利き腕だけあるね!
ディレイが発生したのか動きが止まっているエルダーリッチ。
(好機!)
「死ねえええ!」
「調子二ノルナヨ人間!」
硬直が解けたのかエルダーリッチは僕に向かって杖を振った。
エルダーリッチの振った杖が僕の脇腹に当たり、僕の盾パンチがエルダーリッチの顔面にヒットした。
相打ち。衝撃と振動が僕の脇腹を中心に広がっていく。
互いに硬直したけど、エルダーリッチのほうが先に回復した。
(まずい!)
僕は攻撃されると思ったけど、エルダーリッチは僕から距離をとった。
エルダーリッチの杖が輝く!
「出デヨ我ガ僕、【サモンスケルトン】!」
魔法陣が浮かび上がると、そこからスケルトンが二体出てきた。
召喚魔法だと!?前衛呼びやがった!
「せいやああああああ!!!」
その時復活したマリアさんが愛剣の【バスターソード+6】を振るい、スケルトンを砕いた!
「ナイス!」
GJだよマリアさん!
「遅れてすみません!」と言って、僕の隣に立ち大剣を構えるマリアさん。
マリアさんのHPゲージはフルだ。
これで数の上では二対二の互角。
互いに様子を伺う中、僕は今のうちにアイテムストレージから【ロングソード+1】を取り出した。
「マリアさん、僕がエルダーリッチのほうに行ってタゲをとるから、その隙にスケルトンを倒しちゃって。倒したらエルダーリッチの背後を回り込んでH&Aを繰り返して。あと僕が合図したら【ヒール】よろしく」
「あの、H&Aってなんですか?」
「ああごめん。ヒットアンドアウェイのこと。(そういえばH&Aってうちのギルドでしか使わないゲーム用語…ていうか略語だったっけ?)要するに僕が正面からタゲとっている間に、マリアさんはエルダーリッチの後ろから攻撃と離脱を繰り返してください」
僕の噛み砕いた説明にマリアさんは頷いた。
「お任せください!」
「ああ、あと攻撃スキルはあまり使わずに。HP消費する技は控えてくださいね」
攻撃スキルはHPを消費して使用するから、多用すると回復が追いつかずにやられてしまう可能性が強くなる。
できるだけ回復は僕にまわして、マリアさんはダメージを受けずにエルダーリッチに攻撃をし続けてほしい。
エルダーリッチのHPゲージは二本ある。
行動パターンは今のところ単調だから、このまま大きなミスをしなければ勝算はある。
まともにダメージ与えてないからエルダーリッチの総量は予測できないし、DPSでの計算もできないから一体どれくらいの時間で狩れるのか不明だけどね…。
もしエルダーリッチの行動パターンがありえないくらいに変わったらもう詰みだ(笑)
例えばエルダーリッチのHPが某ネトゲのレイドボス並み(うん百万とかうん億)だったり、行動パターンの複雑化や初見殺しの技や魔法、何段階も変身して強化とかしたらもう終わりだ。運営にクレームつけて掲示板に晒してやるw
まあ序盤のクエだからそこまで強くはないだろう。
「それじゃあいきますよ!」
「はいファントムさん!」
約20メートル四方の大きい部屋。
その中心にヤツはいた。
「!」
「あれはまさか!?」
中央に佇んでいるアンデッドを見た瞬間、驚愕の声をあげるマリアさん。
古びたローブを身にまとったゾンビ。細い枯れ木のような手には杖が握られていた。
明らかにただのゾンビではない気配を発していた。
だって身体からなんかオーラみたいなモノが立ちこめてるんだよ?絶対にやばい相手だよ……。
アンデッドの頭上に浮かぶ二本の赤ゲージの上に表示されている名は………
「エルダーリッチ!?禁忌を犯した【魔法使い】の成れの果てが何故ここに!?」
「…普通に考えてあれでしょ?さっき話してた【魔導士】じゃないの?」
動揺するマリアさんを横目に僕は冷静に呟くと、素早くアイテムストレージに【ロングソード+1】をしまい、【十文字槍+1】と【革の盾】を取り出した。
おあつらえ向きに広い空間、そして先程の【魔導士】の話、アレって多分このクエのボスでしょ?
「マタ下等ナ人間ガコノ地二迷イ込ンダカ…」
また?はいボス確定。ていうかただの迷子の捜索クエでボスが出るのかあ…。
「愚カナル人間ヨ!我ガ至高ナル力の糧トナルガイイ!」
「ファントムさん、来ます!」
「問答無用ですか!?」
こうして初めてのボス戦の幕が切って落とされた!
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
「でかっ!?」
「くっ!」
人の大きさくらいある火の玉が僕達に向かって放たれた!
左右に飛びなんとか躱した僕とマリアさん。
1…2…と魔法発動後のカウントを心の中で数える僕。
反対側に跳んだマリアさんは、すぐに体勢を整えると駆け出した。
「せいやああああああ!!!」
マリアさんが【バスターソード+6】を大きく振りかぶり、エルダーリッチに向かって跳躍した。
9…10。いけマリアさん叩っ斬れ!
「甘イワ!【ライトニング】!」
「!?」
ウソ速い!?
一条の電撃がマリアさんに向かって放たれた!
「きゃああああああ!!!」
電撃を喰らったマリアさんは、その場に膝をついた。
片膝をついたまま動かないマリアさん。
マリアさんのHPゲージが半分近く減っていた。
「マリアさん動いて!」
「…っ……!」
もしかして、動けないのか?
まさか麻痺喰らって動けないパターン!?
電撃系ならありえる話だけど…ヤバいヤバい!いきなり主力がおとされた!
「くそっ!おおおおおお!」
僕はエルダーリッチへ向かって大声を出しながら駆け出した。
僕に視線を向けるエルダーリッチ。
よし、そのまま僕にターゲットを移せ。
エルダーリッチは後ろ向きに後退しながら、僕の方へ杖を向けた。
来るか…!
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
「きた!」
僕は急停止して、左手に持った【革の盾】を前に出して防御態勢に入った。
エルダーリッチの放った【ファイアーボール】が僕に直撃した!
大きい衝撃とともに、振動が全身に伝わっていく。
視界の片隅に表示されてる僕のHPゲージが八割以上削られた。
マジか…!?レベルアップ分のSPをVITとINTの半分ずつ振って底上げしてたのにこの威力か…!
逆にしてなかったら今のでやられてたかも…?
(…3。動く。4…一撃でこれか。常にフルでいないと死ぬな)
心の中でカウントしながら考える僕。
いまの攻撃喰らって一応タゲはとれたか?ならなるべく時間を稼ぎながら様子見だ。
エルダーリッチの周りを反時計回りにくるくる歩きはじめた。
「ヌ!?」
「ほらほら!こっちこっち!」
いきなり自分の周りを回り出した僕を目で追うエルダーリッチ。
声を出しながら歩く僕は、アイテムストレージから【薬草】を全部取り出した。
僕はそれらを全部口に含んだ。口に入れた瞬間【薬草】は溶けるように消えていった。
【薬草】を一気食いをしたおかげで、HPが半分くらいまで回復した。
ていうか5個全部使用して三割弱しか回復しないのか…。
さすが無料パック。運営さん、使えないクズアイテムをありがとうwww
(…9…10。【ファイアーボール】のクールタイムは終わったな。いつ撃ってもおかしくないつもりで立ち回るか)
一応回復を終えた僕は、エルダーリッチの周りをだらだらと歩き続ける。
エルダーリッチが杖を僕に向けたらダッシュで走り回った。
狙いが定まらないエルダーリッチは杖をおろして忌々しそうに僕を睨みつけた。
ゾンビみたいな腐った顔で睨まないでよ…(怖)
「エルダーリッチとの距離は約5メートル。それ以上近づくと攻撃行動をとる。杖を向けて魔法を撃つ行動。【ファイアーボール】の再使用時間は10秒」
エルダーリッチの周りを歩きながらぶつぶつ呟く僕。
声を出して集めた情報を覚える。声に出して言うと覚えやすいっていうけど、側から見てると危ない人だよね(笑)
できれば【ライトニング】も喰らってみたいけど、いま喰らったら死ぬから却下。
なんとかマリアさんが復活してくれるまで時間稼がないと…。
無駄に近寄って死なないように立ち回っていると、片膝をついてスタンしていたマリアさんが立ち上がったのを見た。
よし時間稼ぎ成功!
「マリアさん僕にヒール!」
「わかりました!」
僕の指示に従ったマリアさんは、僕に向かって手をかざした。
「【ヒール】!」
癒しの光が飛んできて僕を包み込んだ。
HPゲージが見る見るうちに回復していく。僕のHPは九割近くまで回復した。
さすがマリアさんの【ヒール】【薬草】5個分より回復量ある!
「距離とりながらクールタイム稼いで!【ヒール】使えるようになったら自分に【ヒール】かけて!」
「はい、わかりました!」
たしかマリアさんの【ヒール】のクールタイムは15秒。
なんとかマリアさんが全回復するまで僕がタゲをとり続けて時間を稼がないと!
仲間の壁となって守り抜く【盾役】の本領発揮だ!
…といっても、戦況はちょっと不利だ。
エルダーリッチの魔法発動は僕がガードしてもあの威力。
回避に専念しながらタゲをとり続けなきゃいけない。
近づけば近づくほど、回避が難しくなるだろう。
エルダーリッチとの安全距離は約5メートル。
発動モーションが大きい【ファイアーボール】はともかく、【ライトニング】は見た感じこの距離でも回避は難しいだろうな。
正攻法じゃ距離を詰めることは難しい。なら奇策でいきますか。
ひとつ策を思いついた僕はその策を実行しようと思い立った。
問題はうまくできるかだ…。
タイミングを合わせられなきゃ致命傷。また逃げ続けないといけなくなる。
もし成功したら………
(一気に距離を詰めて殴り合いに持ち込んでやる!)
僕はいつでも動けるように身構えじりじりと距離を詰めていく。
左手に持つ【革の盾】を前に出して、右手に持った【十文字槍+1】を右肩に担ぐように持った。
エルダーリッチは僕を見据えて悠然と佇んでいる。
(魔法の徴候なし…。いつ撃ってくる?)
そんなことを考えていた時、エルダーリッチの杖が動いた!
どっちだ!?
「滅ビヨ人間、【ファイアーボール】!」
(今だ!)
僕に向けられた杖から火の玉が膨れ上がっていく発動寸前の今を狙って僕は右手に担いだ槍を槍投げの要領で放り投げた。
「いっけえぇぇぇ!!」
「ナ…!?」
投擲された槍がこちらに放たれた直後の【ファイアーボール】に当たった!
エルダーリッチの目の前で【ファイアーボール】が爆発した。
僕は駆け出しながらメニューを開く。
アイテムストレージから【ロングソード+1】を取り出す!
…前に、エルダーリッチの懐に飛び込んでしまった。
間に合わなかった!じゃあ仕方ない一応物理攻撃力あるし!
僕は左手に持った【革の盾】でエルダーリッチを殴りつけた。
盾を顔面に受けたエルダーリッチ。
その腐った顔が仰け反った。
エルダーリッチの頭上に浮かぶゲージがほんのわずか減少する。
それを見た僕は盾を右手に持ち替えて、すかさずエルダーリッチの顔面めがけて思いっきり殴りかかった。
ボコンッ!と鈍いイイ音が鳴ってエルダーリッチのゲージがさっきより削れた。
うん、さすが黄金の右。利き腕だけあるね!
ディレイが発生したのか動きが止まっているエルダーリッチ。
(好機!)
「死ねえええ!」
「調子二ノルナヨ人間!」
硬直が解けたのかエルダーリッチは僕に向かって杖を振った。
エルダーリッチの振った杖が僕の脇腹に当たり、僕の盾パンチがエルダーリッチの顔面にヒットした。
相打ち。衝撃と振動が僕の脇腹を中心に広がっていく。
互いに硬直したけど、エルダーリッチのほうが先に回復した。
(まずい!)
僕は攻撃されると思ったけど、エルダーリッチは僕から距離をとった。
エルダーリッチの杖が輝く!
「出デヨ我ガ僕、【サモンスケルトン】!」
魔法陣が浮かび上がると、そこからスケルトンが二体出てきた。
召喚魔法だと!?前衛呼びやがった!
「せいやああああああ!!!」
その時復活したマリアさんが愛剣の【バスターソード+6】を振るい、スケルトンを砕いた!
「ナイス!」
GJだよマリアさん!
「遅れてすみません!」と言って、僕の隣に立ち大剣を構えるマリアさん。
マリアさんのHPゲージはフルだ。
これで数の上では二対二の互角。
互いに様子を伺う中、僕は今のうちにアイテムストレージから【ロングソード+1】を取り出した。
「マリアさん、僕がエルダーリッチのほうに行ってタゲをとるから、その隙にスケルトンを倒しちゃって。倒したらエルダーリッチの背後を回り込んでH&Aを繰り返して。あと僕が合図したら【ヒール】よろしく」
「あの、H&Aってなんですか?」
「ああごめん。ヒットアンドアウェイのこと。(そういえばH&Aってうちのギルドでしか使わないゲーム用語…ていうか略語だったっけ?)要するに僕が正面からタゲとっている間に、マリアさんはエルダーリッチの後ろから攻撃と離脱を繰り返してください」
僕の噛み砕いた説明にマリアさんは頷いた。
「お任せください!」
「ああ、あと攻撃スキルはあまり使わずに。HP消費する技は控えてくださいね」
攻撃スキルはHPを消費して使用するから、多用すると回復が追いつかずにやられてしまう可能性が強くなる。
できるだけ回復は僕にまわして、マリアさんはダメージを受けずにエルダーリッチに攻撃をし続けてほしい。
エルダーリッチのHPゲージは二本ある。
行動パターンは今のところ単調だから、このまま大きなミスをしなければ勝算はある。
まともにダメージ与えてないからエルダーリッチの総量は予測できないし、DPSでの計算もできないから一体どれくらいの時間で狩れるのか不明だけどね…。
もしエルダーリッチの行動パターンがありえないくらいに変わったらもう詰みだ(笑)
例えばエルダーリッチのHPが某ネトゲのレイドボス並み(うん百万とかうん億)だったり、行動パターンの複雑化や初見殺しの技や魔法、何段階も変身して強化とかしたらもう終わりだ。運営にクレームつけて掲示板に晒してやるw
まあ序盤のクエだからそこまで強くはないだろう。
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