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第2章 獄中生活
第五十話
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早速翌朝の願い事の時に僕は、担当のおやっさんに教会の洗礼を受ける旨の申請をした。
申請したはいいんだけど、申請が通るのに大体一~二週間かかるらしい。
申請して審査してそれでOKが出たら教会に依頼するみたいだ。
ぶっちゃけ長すぎるというかなんというか……まあのんびりいつもの日常を過ごして待つことにした。
午前の作業の時間、僕はハンマーを振るっていた。
ハンマーで熱した金属の塊を叩く。
カーン!カーン!カーン!と澄んだ音と火花が飛び散った。
このゲームの鍛治は金属素材を燃えた炉に入れて、赤く熱せられたらやっとこで取り出し金床の上に置く。
そして鍛治専用のハンマーで規定回数を叩くと武器が作成される。
金属素材と一緒に作成アイテムに必要な素材を入れたりすることもあるけど、ここの作業は特に入れるモノはない。
職人技のような技術もないから手順通りに行えば簡単に作成できるお手軽仕様だ。
(9…10…!)
規定数に達した金属素材が淡い輝きを放つ。
塊が前後に薄く延び広がり剣の姿形に変わっていく。
「できた…」
ふう…と僕は息をついた。
剣を指先でクリックするように触れるとポップアップメニューが表示された。
『【鉄の剣】武器剣種、物理攻撃力+15』
出来上がったワンハンドロングソードの鉄の剣を手に取り眺める。
鉄鋼石で作成した武器を近くの剣立てに放り込んだ。
ここに来てもう一月以上経つ。もうじき二月か。鍛治師を習得してもう何百回も武器を作成したけど、この頃はレベルが上がらなくなっていた。
いま鍛治師のレベルは4。同時に習得した槌使いのレベルはもう9になる。
同じくらいのスピードで上がっていたレベルが、いつの間にか大きく開いてしまっていた。
作成で獲得したEXP、熟練度は同等なのに何故だろう?
なにか条件があるんだろうか?
ここで作成できる武器、防具は革系と鉄系のモノだけ。
素材がそれしかないから下級のモノしか作れない。
強化もそれ用の素材と砥石しかないし、ここではこれ以上鍛治師のレベルが上がらないのかもしれない。
槌使いのレベルの上昇も遅くなってきたし、これは手詰まってきたかも…?
「248番。どうした?」
考えこんでいる間に見回っていた看守が僕のそばに来ていた。
ここの工場の担当は鍛治を極めたマスタースミスらしい。
職業訓練のようなこの工場で真摯に僕達を指導してくれるいいNPCだ。
担当先生は剣立てに差した剣を手に取った。
「ふむ…」
担当は僕の作った剣を目利きするように様々な角度から眺めすかしている。
少し居心地の悪さを感じながら僕は黙って担当を見ていた。
「悪くはない。…だが研ぎが甘いな」
「あ、はい。すみません…」
「研ぎの技を磨いておけ。その間に新しい素材を取り寄せておこう」
そう言い残して、担当は見回りを再開していった。
「………………」
作成は合格点?だけど、研ぎ…っていうか強化がダメなのか…。
とりあえず今まで作った武器を研ごう。
研ぎの熟練度というものはないしただ単に回数こなせってことなんだろうなと思った僕は作った剣が差してある剣立てから剣を取り出した。
研ぎは強化の一種でレンガのような砥石に武器の刃をあてて規定回数を研ぐだけの、これも簡単仕様だ。
ここで鍛治をやってて気づいたけど武器には隠しステータスが存在する。
普通に武器をタップすると、その武器の名称、攻撃力などがメニューに表示される。
さらに名称の部分をクリックするとその武器のステータスというかパラメータが表示されるのだ。
耐久値、重撃値、鋭利値、速度値、CR値といった五つのパラメータは強化をする際に重要な役割を持つ。
耐久値は武器の頑丈さ。重撃値は武器破壊の確率。鋭利値は与ダメージ増加。速度値は攻撃スキル発動の上昇。CR値は文字通りクリティカル上昇率。
基本的に強化はその武器の強化に必要な素材を炉に入れて強化する武器を入れる。
そして金床に移してハンマーで規定回数打つと強化が完了。
攻撃力とともに五つのパラメータが変動する。
これも素材によって変わるけど、強化回数がほぼ一律10回しかできないから、よく考えて自分に合った強化しないと同じ武器でも性能が全然違ってくる。
まあ、ここには強化する素材がないからできないけどね…:-(
話を元に戻すと研ぎは耐久値を回復させることができる。
耐久値は武器を使っていると徐々に減少していく。
ゼロになったら壊れるから定期的なメンテが必要になってくる。
強化で耐久値を上げれば長く使えるし、武器破壊の確率も減らすこともできる。
研ぎに重要なのは砥石のランクだ。
僕が今まで作成した武器は鉄の剣や鉄の槍、鉄の斧、鉄弓、鏃など鉄系の武器。
【カシス木の木片】という木の素材で作った木剣もあるけど、おかしな話で木の素材も炉に入れて熱してから打つという仕様だ。
最初の頃、木なんて炉に入れたら普通燃えるでしょ?と疑問に思ったけど、突っ込むのは無粋かなと思ってスルーした(苦笑)
鉄系、木系の武器は低ランクの武器だから、安物の市販されている砥石で十分なんだけど………
「研ぐ意味あるのかな…?」
耐久値が減っていない未使用の武器を研ぐことに疑問を感じた。
でも担当が研ぎが甘いとか言ってたし………。
「………とりあえず研いでみるか」
僕は鉄の剣の刃を砥石にあてて研いでみた。
鉄の剣の規定数は5回。
あっという間に研ぎ終わってしまった。
一応パラメータを確認するためにクリックする。
…うん。変わってない。
鍛治の熟練度も上がった様子もないし、このまま続ける意味があるのだろうか?
「………………」
混ざらないように空いている剣立てに研いだ剣を置いた僕は、研いでいない剣を手に取った。
ぶっちゃけやることないし続けよう。
何振りも研げばなにかあるかもしれないしね。
そんな希望的観測に縋りつつ、僕は就業時間まで次々と武器を研いでいった。
申請したはいいんだけど、申請が通るのに大体一~二週間かかるらしい。
申請して審査してそれでOKが出たら教会に依頼するみたいだ。
ぶっちゃけ長すぎるというかなんというか……まあのんびりいつもの日常を過ごして待つことにした。
午前の作業の時間、僕はハンマーを振るっていた。
ハンマーで熱した金属の塊を叩く。
カーン!カーン!カーン!と澄んだ音と火花が飛び散った。
このゲームの鍛治は金属素材を燃えた炉に入れて、赤く熱せられたらやっとこで取り出し金床の上に置く。
そして鍛治専用のハンマーで規定回数を叩くと武器が作成される。
金属素材と一緒に作成アイテムに必要な素材を入れたりすることもあるけど、ここの作業は特に入れるモノはない。
職人技のような技術もないから手順通りに行えば簡単に作成できるお手軽仕様だ。
(9…10…!)
規定数に達した金属素材が淡い輝きを放つ。
塊が前後に薄く延び広がり剣の姿形に変わっていく。
「できた…」
ふう…と僕は息をついた。
剣を指先でクリックするように触れるとポップアップメニューが表示された。
『【鉄の剣】武器剣種、物理攻撃力+15』
出来上がったワンハンドロングソードの鉄の剣を手に取り眺める。
鉄鋼石で作成した武器を近くの剣立てに放り込んだ。
ここに来てもう一月以上経つ。もうじき二月か。鍛治師を習得してもう何百回も武器を作成したけど、この頃はレベルが上がらなくなっていた。
いま鍛治師のレベルは4。同時に習得した槌使いのレベルはもう9になる。
同じくらいのスピードで上がっていたレベルが、いつの間にか大きく開いてしまっていた。
作成で獲得したEXP、熟練度は同等なのに何故だろう?
なにか条件があるんだろうか?
ここで作成できる武器、防具は革系と鉄系のモノだけ。
素材がそれしかないから下級のモノしか作れない。
強化もそれ用の素材と砥石しかないし、ここではこれ以上鍛治師のレベルが上がらないのかもしれない。
槌使いのレベルの上昇も遅くなってきたし、これは手詰まってきたかも…?
「248番。どうした?」
考えこんでいる間に見回っていた看守が僕のそばに来ていた。
ここの工場の担当は鍛治を極めたマスタースミスらしい。
職業訓練のようなこの工場で真摯に僕達を指導してくれるいいNPCだ。
担当先生は剣立てに差した剣を手に取った。
「ふむ…」
担当は僕の作った剣を目利きするように様々な角度から眺めすかしている。
少し居心地の悪さを感じながら僕は黙って担当を見ていた。
「悪くはない。…だが研ぎが甘いな」
「あ、はい。すみません…」
「研ぎの技を磨いておけ。その間に新しい素材を取り寄せておこう」
そう言い残して、担当は見回りを再開していった。
「………………」
作成は合格点?だけど、研ぎ…っていうか強化がダメなのか…。
とりあえず今まで作った武器を研ごう。
研ぎの熟練度というものはないしただ単に回数こなせってことなんだろうなと思った僕は作った剣が差してある剣立てから剣を取り出した。
研ぎは強化の一種でレンガのような砥石に武器の刃をあてて規定回数を研ぐだけの、これも簡単仕様だ。
ここで鍛治をやってて気づいたけど武器には隠しステータスが存在する。
普通に武器をタップすると、その武器の名称、攻撃力などがメニューに表示される。
さらに名称の部分をクリックするとその武器のステータスというかパラメータが表示されるのだ。
耐久値、重撃値、鋭利値、速度値、CR値といった五つのパラメータは強化をする際に重要な役割を持つ。
耐久値は武器の頑丈さ。重撃値は武器破壊の確率。鋭利値は与ダメージ増加。速度値は攻撃スキル発動の上昇。CR値は文字通りクリティカル上昇率。
基本的に強化はその武器の強化に必要な素材を炉に入れて強化する武器を入れる。
そして金床に移してハンマーで規定回数打つと強化が完了。
攻撃力とともに五つのパラメータが変動する。
これも素材によって変わるけど、強化回数がほぼ一律10回しかできないから、よく考えて自分に合った強化しないと同じ武器でも性能が全然違ってくる。
まあ、ここには強化する素材がないからできないけどね…:-(
話を元に戻すと研ぎは耐久値を回復させることができる。
耐久値は武器を使っていると徐々に減少していく。
ゼロになったら壊れるから定期的なメンテが必要になってくる。
強化で耐久値を上げれば長く使えるし、武器破壊の確率も減らすこともできる。
研ぎに重要なのは砥石のランクだ。
僕が今まで作成した武器は鉄の剣や鉄の槍、鉄の斧、鉄弓、鏃など鉄系の武器。
【カシス木の木片】という木の素材で作った木剣もあるけど、おかしな話で木の素材も炉に入れて熱してから打つという仕様だ。
最初の頃、木なんて炉に入れたら普通燃えるでしょ?と疑問に思ったけど、突っ込むのは無粋かなと思ってスルーした(苦笑)
鉄系、木系の武器は低ランクの武器だから、安物の市販されている砥石で十分なんだけど………
「研ぐ意味あるのかな…?」
耐久値が減っていない未使用の武器を研ぐことに疑問を感じた。
でも担当が研ぎが甘いとか言ってたし………。
「………とりあえず研いでみるか」
僕は鉄の剣の刃を砥石にあてて研いでみた。
鉄の剣の規定数は5回。
あっという間に研ぎ終わってしまった。
一応パラメータを確認するためにクリックする。
…うん。変わってない。
鍛治の熟練度も上がった様子もないし、このまま続ける意味があるのだろうか?
「………………」
混ざらないように空いている剣立てに研いだ剣を置いた僕は、研いでいない剣を手に取った。
ぶっちゃけやることないし続けよう。
何振りも研げばなにかあるかもしれないしね。
そんな希望的観測に縋りつつ、僕は就業時間まで次々と武器を研いでいった。
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