74 / 186
第3章 ソロプレイヤー
第六十九話
しおりを挟む神殿を後にした僕達はレベル上げにアイゼン村へ向かうことにした。
色々調べた結果、安全マージンをとれて狩りが出来そうな場所は【龍住まう山脈】がベストだと判断した。
地下に続く洞窟を抜けた先にドワーフの国もあるみたいだし、レベル上げをしながらドワーフの国に向かおうと思った。
鍛治で有名なドワーフの国ならなにかいい武器や防具があると思うし、鍛治系のイベントもあるかも?
そんなわけで僕達はアトラスの転移門からアイゼン村の転移門まで飛ぶことにした。
でもあれだよね…無駄に広いからまた何キロも歩かないといけないのか…
それを思うとテンション下がってしまう。
「兄貴、山脈に行くなら馬を借りませんか?」
「馬?」
「はい。馬です」
聞けばアトラスの街の商業区に馬を貸してくれる店があるみたい。
馬といっても召喚アイテムで召喚する馬らしく、馬で移動できる場所ならどこでも召喚できるらしい。
料金は一日千Gと割とリーズナブルだ。
「いいねそれ。三人分借りよう。ゼル、案内してくれる?」
「わかりました、こちらです」
ゼルを先頭に僕達は馬を貸してくれる店に向かった。
ていうか、そんな便利なモノがあったんだ…全然知らなかったよ。
攻略サイトの掲示板に載せてみるかと思った僕は歩きスマホならぬ歩きメニューをしながら攻略サイトを閲覧した。
サイトを見るとそのことはすでに書かれていてちょっと残念に思った。
ダメだな…こまめにサイトをチェックして新しい情報を仕入れないと。
歩きメニューをしながら僕はそんなことを思った。
その店は馬車を取り扱う店で街の定期馬車を運営している業者の店だった。
「邪魔するぜ」
店に入るとゼルがいきなり横柄な態度になった。
「番頭のジンを呼んでくれや」
「あ、あのどちら様でしょうか?」
従業員らしい人が恐る恐るゼルに訊ねた。
「なんだお前?見ない顔だな…まあいい。ゼルだ、ゼルが来たと伝えればいい」
従業員が奥に引っ込むとゼルが僕の方に振り向いた。
「すみません兄貴。少々お待ちいただけますか?」
「え、あ、はい…」
なにこの変わりよう…
二重人格ですか?ってくらいに豹変するんですけど…
しばらくすると人の良さそうなNPCがやってきた。
「これはこれはゼルさん、お久しぶりですねえ。いつ出てきたんですか?」
「ついこの間さ…そんなことより今日は頼みがあってきたんだが…」
「なんでしょう?ゼルさんの頼みならこのジン、多少の無茶は覚悟しております」
「なに、大したことじゃねえよ。お前のとこの【召喚笛】を貸してほしいってだけさ」
「【召喚笛】ですか?」
「ああ。実はよ俺は堅気になって冒険者になったんだ。それでアシが欲しくてな、ここに顔出したんだよ」
「そちらのお二人は、ゼルさんのお仲間で?」
ジンさんが僕の方に視線を向けた。
僕はペコリと頭を下げる。
「おうよ。自己紹介が遅れたがこちらの方が俺の兄貴分のファントムさん。そっちがヴィンスだ」
ゼルは僕達をジンさんに紹介した。
改めて僕はペコリと頭を下げその隣でヴァイスも頭を下げた。
「兄貴、こいつがこの店の番頭を任されてるジンです。こいつは前の仕事で色々と世話してやってたんですよ」
「ええ。ゼルさんには色々とお世話になりました」
「そういえば仕事の方は順調か?」
「ええゼルさん。ゼルさんの後任の方が問題なくやってくれているので」
「そうか。まあ、なんかあったら俺に言ってこいよ?」
ゼルって昔盗賊やってたんだよね?
………なんか、ものすごい危険な匂いがするから深く聞くのはやめとこう…
「少々お待ちください」とジンさんは僕達(正確にはゼル)に断りを入れると奥に引っ込んだ。
すぐにジンさんが戻ってきてゼルに両手を差し出した。
ジンさんの両手の平には小さな笛が三つ乗っていた。
「ご要望の【召喚笛】です。兄貴分のお方とお仲間の分もご用意させて頂きました」
「すまねえな。でいくらだい?」
【召喚笛】を受け取ったゼルが値段を訊ねるとジンさんは大げさにかぶりを振った。
「いえいえ!大恩あるゼルさんからお代は頂けません。出所祝いの意味も込めてその【召喚笛】は差し上げます」
「そうか。悪いなジン」
「いえいえ。お気になさらずに」
…なんか悪い気がするけど、まあいっか。
目的のモノを手に入れた僕達は店を後にした。
とりあえずアイゼン村に転移して、そこからもらった【召喚笛】で馬を召喚したら馬に乗って【龍住まう山脈】に向かうか。
これからの予定を頭の中で組み立てていた僕はふとある事に気がついた。
そういえば僕、馬に乗れないんだけど大丈夫かな…?
一抹の不安を抱きながら僕達はアイゼン村へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる