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第4章 NPC

第百十八話

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 深夜零時。
 VRMMORPGアトランティスがver1.11にアップデートされた。
 
 ちなみにver1.11の内容はレベル上限が30から50に。
 他に上位クエスト解禁。
 新たな上級職追加。
 NPC龍人族追加。
 一部武器、防具の装備ランク補正。
 連撃などの連続攻撃スキルの修正。
 火属性魔法エクスプロージョンの攻撃範囲の修正。
 
ダウンロードコンテンツ
 新規応援パック(無料)
 武器強化素材各種(有料)
 防具強化素材各種(有料)
 性別転換の雫(有料)
 転生の雫(有料)
 スライムの書(有料)
 スケルトンの書(有料)
 リザードマンの書(有料)
 ゴブリンの書(有料)
 など一部の種族又は特殊職に変更できるアイテム追加がされた。
 ぶっちゃけDLCは強化素材くらいしか興味をそそられない。
 でも武器強化素材各種の料金が五千円と地味に高い…=)
 課金厨は迷うことなく購入するだろうけど、僕のように懐が寂しいPCはちょっと買うのに躊躇う金額だ。
 まあ、今のところ装備は買い替えたいだけだし男キャラから女キャラになりたくもないし、他の種族になる気もない。
 ましてや魔物に転生する気もないから今回のアプデのDLCは外れだな(笑)
 

 
「それでは第一回NPC会議を始めます」

 パチパチパチ!

 酒場の席でビール(飲めば飲むほど酩酊:小)を片手に司会進行役のゼルが言った。
 拍手する一同。
 もちろん僕も手を叩いている。
 場所はアルフヘイムにある冒険者組合。
 その地下にある酒場の片隅に僕達はいた。
 深夜の酒場はNPCのお客さんがけっこういてそこそこ賑わっている。
 そんな中の奥の一席で会議が始まった。

 なんで酒場で会議をしているかというと、ログインしてみんなと合流した僕は早速みんなを連れて冒険者組合に向かった。
 目的はギルドの申請。
 一応賞金首の僕がギルドを作れるか若干不安だったし、冒険者組合に着いたら逮捕されるじゃないかとちょっとビビったりしたのは内緒だ(笑)
 よくよく考えてみるとここはエルフの王都アルフヘイム。
 エルフの国で亡命しにここに来たようなものだ。
 この前この街でPCと追手に襲われたからすっかり忘れてた(苦笑)
 
 冒険者組合は24時間営業で、数組のPCプレイヤーPTパーティとNPCのPTがいたけど、特にトラブルなくカウンターでギルド申請ができた。
 
 ちなみにギルドネームは【NPC】にした。
 名前は色々話し合ったけど、結局僕に丸投げされたので考えた末これにしてみた。
 
 ギルドマスターは僕ことファントム。
 メンバーはゼル、ヴァイス、ルーネ、カイ、アルフレッドの計六人。
 
 ちなみにNPCと名付けた理由は単純にNPCで構成された面子だからそう名付けてみた。
 
 え、僕はPCじゃないかって?
 僕はNPCニートプレイヤーだからいいんだよwww
 ちょっと自虐が入ってるし、近いうちに通信制に編入するから正しくはニートじゃなくなるんだけどね(笑)
 
 そんなわけでギルド結成記念ということで冒険者組合の地下にある酒場に移動した僕達は今後のことを話し合う会議を開いたわけだけど………

「俺はこのギルドで弱きを助け強きを挫く、弱者を守る冒険者を目指したいです」

 ゼルがビール(効果、飲めば飲むほど酩酊:小)を片手に熱い想いを口にした。
 ていうか僕達一応未成年だよね?
 アルコールダメじゃない?と思ったけど、それをここで言うのは野暮かと思い直した。

「それもいいけどよ、俺は迷宮に潜って探検してえな。未知の迷宮を踏破する…それが冒険者の在り方だろ?」

 なるほど。カイの言うことも一理あると僕は思った。

「僕は、お祖母様のようなすごい冒険者になりたいです!そのためにもっと頑張って伝説の付与錬金鍛治師になりたいです!そして、みなさんのお役に立てたらいいなと思いますです!」

 続いてルーネが自分の目標を掲げた。
 うん、一緒に頑張ろうねb

「俺は主の教えを皆に広めていきたいかな。多種族にはあまり信徒はいないから冒険者稼業をしつつ布教していきたい」

 ていうかアルはしばらくみない間にすっかり信者になっちゃったな(苦笑)
 アトラス教の七星教会だっけ?なんか世紀末救世主みたいな神っていうか堕天使を崇めてる宗教なのに…(笑)
 何気にヴァイスも敬虔な信者っぽいし…
 ちらりとヴァイスのほうに視線を移した。

「………」

 ヴァイスは無言でムギショーチュウ(効果、飲めば飲むほど酩酊:中)を飲んでいる。
 僕の視線に気がついたヴァイスがおもむろに口を開いた。

「…堕天の王に、俺はなる…!」

 ヴァイス…そんな海賊王になる感じで言われても…(苦笑)
 なんか会議というより飲み会で自分の目標というか夢を語ってる感じだ。
 
「?」

 いつの間にかみんなの視線が僕に向いていた。
 えっと、もしかして僕もなにか言わないといけない流れ?

「兄貴、兄貴からもギルドマスターとしてなにか一言お願いします」

 ええぇ…やっぱり僕も言う流れか(汗)
 こういうの苦手なんだよなぁ。

「えっと、よろしくお願いします…」

 パチパチパチ!と何故かみんなから拍手をもらった。
 なんか気恥ずかしい…///
 ていうか僕、挨拶しかしてないよ?

「兄貴、今後の方針としてまずはなにから始めましょうか?まずは乱暴狼藉を働く冒険者、特に幻想大陸なんちゃら隊の奴等を成敗しますか?」

 いやいやいや!なに言っちゃってるのゼルさんは!?

「お、それいいな賛成」
「…右に同じく」
「いい思うよ。俺もアイツらの行動は目に余るし…これは主の裁きが必要だな」
「はわわわ…」

 カイ、ヴァイス、アルがゼルに同意した!
 いやいやちょっと待ってよ!ほら、みんなが殺気立ってるからルーネが怖がってるし!

「いや、あの、気持ちはわかるけど、まずはギルド専用の依頼をこなしていこうよ?それに、ルーネの転職に必要なクエスト、依頼も受けたいし…」
「…わかりました」

 不承不承ながら了承しましょう的な感じで頷くゼル。
 でもすぐになにかに気がついた表情を浮かべた。

「そうか…!まずは依頼をこなし実績を上げてギルドとしての格、ランク、そして実力をつけていくんですね?そうすることで自然と仲間が集まりその頃には向こうを上回る勢力を築いているはず…そのあとアリのように踏み潰していくんですね」

 さすが兄貴です!と賞賛の言葉を口にするゼル。
 ………あまりの解釈に、僕は開いた口が塞がらなかった。

「んじゃま、そういうことならあとでクエストボード見にいこうぜ」
「今は雌伏の時というわけだね。わかったよ、お楽しみは後にとっておこう」
「…k。ゴク、ゴク、ゴク、プハッ」
「ヴァイスさん、おかわりどうぞ」
「…ty(ありがとう)」

 さっきまで発していた剣呑な空気はどこへやら。
 みんな楽しく飲み始めた。

 僕は、ギルマスとしてみんなを引っ張っていけるだろうか…?

 一瞬そんな不安を抱きながらも僕はビールを口にした。

「苦っ…!?」

 



 
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