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第4章 NPC
第百三十三話
しおりを挟む城門にはかなりの数のPCが集まっていた。
今さらだけど普通に参加しに来て大丈夫かな?
何気に自分が他のPCから嫌われてるのは自覚している。
お尋ね者だしねw(自嘲)
「あっ!」
集まっているPCの後ろの方でコソコソしていた僕と目があった瞬間大きな声をあげるPC。
って、なんだスカーレットさんか。
赤と青のラインが入った白い軽装鎧 に、手には白銀の盾。
腰には凝った獅子の装飾がされた長剣を差している。
前に会った時よりいい装備に変わってる気がする。って、そりゃそうか。彼女の所属する【アルテミス】は迷宮攻略の最前線にいるギルドだし、どんなPCでもいい装備を入手すれば武装も変わってくる。
あまり変わりばえがしない僕らのギルドのほうがゲーム的にもシステム的にもおかしいんだろうな(苦笑)
スカーレットさんの側には同じギルドらしきPCの女の子が三人ほどいた。
見た感じ知らないコたちで、一人はスカーレットさんのような魔法剣士タイプの金髪美少女。
そしてローブにとんがり帽子の魔導士っぽい人と全身鎧の戦士タイプの人だった。
って、あれ?全身鎧の人の背にもう一人いた。
見た目、盗賊職っぽい軽装の女の子が全身鎧の人におぶわれていた。
何故におんぶ???と疑問に思う僕。
そんなことを思っていると、なにやらスカーレットさんはこちらに行こうかどうか悩んでいるように見えた。
いやいや、別に来なくてもいいですよ?
仲間の魔法剣士の人がスカーレットさんになにやら言うと、スカーレットさんは顔を真っ赤にしてなにか言っている。
ここからだと少し遠いうえに、周りのPCの雑談で聞き取れない。
なんか知らないけど、まあいいか。
「…伝説の魔獣。ゲットしてみたい」
そんな時、僕の隣にいたヴァイスがのんきなことを呟いていた。
ていうかヴァイス。ヴァイスは魔物使いにまだ転職したばかりで、レベルも低いからテイムは難しいと思うよ(苦笑)
あれ…?
僕はふと気が付いていてしまった。
そうだよ忘れてた…(冷汗)
ヴァイス転職したばかりじゃん!?
今まで就いていた職業補正でステータスは転職してないレベルより遥かに高いけど、それでも魔法職のレベル十五~十六相当くらいのステータスといったところだ。
とてもじゃないけど、絶対ボスクラスのキングタイガーと戦えるレベルじゃない。
それどころか眷属のワータイガーや他の魔物とまともに戦うことすら厳しいと思う………
最悪ヴァイスは後衛に徹してもらって、危険のない位置にいてもらうか。
フォーメーション的には後衛弓職のアーチェさんより後ろから、回復に専念してもらおう。
うん、そうしようと考えがまとまったその時、前方の城門で動きがあった。
「勇敢なる冒険者諸君!よく来てくれた」
城門には騎士甲冑姿のエルフ達がいて、その中の一人が前に立ち、僕らに声をかけていた。
「あの方はアルフヘイム王国騎士団団長、ガストン・ビー・レインアールヴおじ様です」
ルーネが僕達に聞こえるくらいの囁きで説明してくれた。
「キングタイガーは現在、多くの魔物を従えてこちらへ侵攻して来ている。物見と先遣隊の報告では、その数約1万」
「おい、マジかよ…!?」
「こっち何人だよ?無理ゲーじゃね?」
などと周りのPCが騒ぎ出した。
「ねえルーネ、騎士団って何人いるの?」
僕はルーネに訊ねてみた。
「えーっと………たしか全部で1万いたと思います」
なるほど。
ここにいる冒険者、PC やNPC含めて大体百人くらいかな?
それらを合わせても誤差の範囲でほぼ同数と言っていいだろう。
「ねえ…」
いつの間にかこちらに近づいてきていたスカーレットさんが声をかけてきた。
………何故かスカーレットさんの後ろにいる仲間達が、ニヤニヤこちらを見ている。
「なんですか?」
僕はその視線を無視してスカーレットさんに返事をした。
「これって大規模戦闘になるの?」
「数的にそうなるでしょうね」
「…あたし、こんな大きなレイド戦?ってやったことないんだけど、あに…あんたはある?」
「まあ、他のゲームで万単位の大規模戦闘はありますけど…」
「じゃ、じゃあさ、あたし達と組まない?」
「はい?」
「ほら、こういうのは経験者と一緒にプレイしたほうがいいって言うじゃない?」
頬を染めて慌てたように言うスカーレットさん。
後ろのお仲間さんがなにやら小声で「頑張れー」とか「そのまま押し通すのよ」とか言っている。
「いいんじゃねえか?俺は構わないぜ」
カイがそう言うと
「僕も賛成です!」
「あたしも構わないわ」
「俺もいいと思うよ」
「…np(問題ない)」
ルーネ達も賛成のようだ。
「はい、みんなもいいと言ってるんでいいですよ?」
「そ、そう!」
僕がそう答えるとスカーレットさんは嬉しそうな表情をした。
そして後ろのお仲間さん達は何故かガッツポーズをしている…
なんなんだろう?この人達は………:-()
わけがわからなくて唖然とする僕をよそに、ガストン団長が話を続けていた。
「…ということで、君達には迎撃と警備に分かれてもらいたい」
え?ちょっと待って、話聞いてなかった…!?
「各冒険者は我が騎士団の小隊に入ってもらい、迎撃隊と警備隊に分かれてもらう。迎撃隊は城壁で魔物の迎撃を。そして警備隊は王都の警備、及び民の避難誘導を任せたい」
ああ、魔物と戦う役目と街を守る役目に分かれるのね。
「万が一魔物が王都に侵入された場合、警備隊は魔物の撃退も頼むことになる」
うーん…この流れだと多分………
「ねえ、あたし達はどっちにするの?」
スカーレットさんが話しかけてきたことで僕の思考が途切れた。
「どっちがいいですか?」
「それを聞いてるのはあたしなんですけど…」
冷たいジト目で僕を見つめるスカーレットさん。
うぅ…なんだこの悪寒は(冷汗)
まるで妹に蔑まれてるような感じだ。
「ぼ、僕が決めていいんですか?」
「いいから聞いてるんですけど?」
わ、わかりましたから、その眼差しをやめていただけませんか…?
うちの鬼妹を思い出してしまいます…(><)
ていうか、迎撃の前線は厳しいと思うし、警備も多分厳しくなると思う。
スカーレットさん達のことはよくわからないけど、僕達の実力と現状を鑑みると………
数瞬、頭の回転をトップスピードで考え悩んだ僕はどちらにするか決めた。
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