扉を開け放て ～生存率1％～

惨劇に、挑めない

　生ぬるい風が吹き抜ける玄関の向こうには惨劇が広がっていた。

　次々と倒れている仲間たち。

　息も絶え絶え、痙攣を繰り返し、のた打ち回る姿は地獄絵図。

　声をかけようと足元に駆け寄り体を揺さぶるが返事はない。

　チクショウ、みんな一体どうしちまったっていうんだ！

　手当り次第に声をかける。

　まともに返事できるやつは誰もいない。

　ああ、こんな光景見ているだけで息が苦しい。

　きれいな顔して死んだやつもいる。

　血を吐きながら死んだやつもいる。

　みんな死んでやがるってことだけは同じだよ、クソッ。

　ん、ちょっと待て。

　あいつは生きてる、意識もある。

　どうした、一体何が起きたんだ！？

　そいつは声を振り絞って「逃げろ……」と呟いた。

　馬鹿を言え、お前らを置いて逃げるなんて！

　お前らの敵は俺が取る！

　長い長い廊下の果てを目指して駆け回る。

　まるで松の廊下じゃねぇか。

　ご乱心を起こしたのはどこのどいつだか。

　進むごとに息が苦しい。

　体が重い。

　この先の真実を知るのが怖いのか。

　はは、まさか。

　暴いてやるよ、何があっても驚かない。

　俺は全力で挑んでやるぜ、この惨劇によぉ！

　廊下を越えた先は伏魔殿。

　そこで見――

　バチンッ！！

「もう蚊が来た。また蚊取り線香に火をつけなきゃ」