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誤解と熱弁
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「君は散々エイベルにいじめられてきたはずだ。救ってくれたとはどういうことだ?」
「私と友達になりたい? はっ、何を言っているのか理解に苦しむわ」
2人とも全く納得していない。当然だ。
「まず……殿下とエイベル様に謝罪させていただきたいのです。
転入直後から親切にしてくださった殿下に甘え、私はあまりにも親しげな態度を取ってしまいました。もし不快にさせていたのなら、本当に申し訳ございません」
普段のふわふわした口調ではなく、静かで丁寧な声音。
マクスウェルもエイベルも、一瞬言葉を失った。
*
この世界に転生する前のエイベル——名前は愛里——は、日本でOLとして平凡な日々を送っていた。
彼女を夢中にさせた小説が「ロイヤルアカデミア」。
公爵令嬢の主人公が、様々なイケメン達と甘い学園生活を繰り広げる、恋愛物語だ。
だが、愛里が好きになったのは、メインの恋愛対象であるマクスウェルではない。
悪役令嬢のエイベルだった。
シュタイン王国の第一王子、マクスウェルの幼馴染兼婚約者。
幼い頃から王太子妃としての期待を背負い、血の滲むような努力を続けてきた公爵令嬢。
しかし両親からは家が繁栄するための道具としてしか見られず、愛情とは無縁に育った。
そんな彼女は人の愛し方も愛され方も知らないまま、権力に吸い寄せられた取り巻きと共に、学園を牛耳るようになった。
そこへ転校してきたのがアメリアだった。
本人にその気はないが、どこか思わせぶりな言動で男性陣を虜にし、周囲から愛される彼女。
婚約者のマクスウェルでさえアメリアに惹かれていく様子が、エイベルには眩しくて仕方がなかった。
そして取り巻きと共に水をかけたり、冷たい言葉を投げたり……という“いじめ”が加速した。
その結果として、王太子の誕生パーティーで断罪される——それが原作の表向きのシナリオ。
しかし、後に発売されたエイベル視点の外伝には全く違う事実が書かれていた。
アメリアに嫉妬していたのはエイベルではなく、彼女の取り巻きのひとり。
その令嬢が勝手に“いじめ”を仕掛けていたのだ。
エイベルはいち早く異変に気づいていたが、取り巻き、いや、彼女にとっての“友人”を完全に止めることはできなかった。
それに責任を感じた彼女は、マクスウェルから詰問された時に、真実を語らなかった。
そして——沈黙は肯定である、とみなされて断罪されたのだ。
(そんなの……エイベル様が可哀想すぎる……!)
外伝を読んだ愛里は、誰よりも彼女の幸せを願うようになったのだった。
*
アメリアに訝しげな視線を向けながらも、2人は黙って話を聞いている。
「私、ずっと誤解していました。
例えば……窓際を通った時に水が降ってきた日。あれは、取り巻きの方が勝手に仕掛けたのでしょう? 最近になって、ようやく気づいたんです」
エイベルの肩がびくりと震える。
「水をかぶったあと、私は困って保健室に行きました。すると先生が『たまたま最近、予備の制服を寄付してくれた子がいたのよ』と言いながら、普段は置いていないはずの予備の上着を出してくださいました。
その時は運が良かったのだと思っていました。でも……よく考えると、あの状況を想定した誰かが、事前に話を通していたとしか思えません」
アメリアはまっすぐエイベルを見る。
「そして、その“誰か”がエイベル様しかいない——そう思ったのです」
マクスウェルが驚いたようにエイベルを見た。
彼女は顔をそむけ、耳まで真っ赤に染めている。
「いただいていた“冷たい言葉”の意味も、今なら分かります。
いじめの標的になりかけていた無分別な転校生が、さらに恨みを買わないようにと、エイベル様は忠告してくださっていたのですよね。
ご自分が悪者に見られる危険を承知のうえで」
(私はこの世界でアメリアとして生きた記憶を全部持っている……以前は確かにエイベル様を怖がっていた。
でも前世の私は知っている。エイベル様は、本当はただの不器用なツンデレ美女だって……!)
「納得できないこともないが……そこまで回りくどい人間がいるものなのか?」
「そ、そうですわ! そもそも私がそんな考えを持っていたなんて……あなたの都合の良い妄想ですもの!」
(うわぁぁぁ、照れ顔エイベル様かわいすぎる!! 画家! 画家を呼ばなきゃ!!)
アメリアは心の中で絶叫しながら、表面上は必死に平静を装った。
「いいえ……私はやっと冷静になって気づけたのです。だから、改めてお願い申し上げます。
エイベル様。私と、お友達になってくださいませんか?
貴女が美しく、可愛らしく、本当はとても優しい方だということを……私は知っています。
でも、もっともっとエイベル様のことを知りたいのです!」
(ふーっ……普段のアメリアはこんなに喋らないから口が疲れた……でも言いたいこと全部言えたし、エイベル様の照れ顔も見れたし……結果オーライなはず!)
最後まで噛まずに言い切ったアメリアの目に映ったのは——俯いて肩を震わせるマクスウェルと、ゆでだこのように真っ赤になったエイベルだった。
「私と友達になりたい? はっ、何を言っているのか理解に苦しむわ」
2人とも全く納得していない。当然だ。
「まず……殿下とエイベル様に謝罪させていただきたいのです。
転入直後から親切にしてくださった殿下に甘え、私はあまりにも親しげな態度を取ってしまいました。もし不快にさせていたのなら、本当に申し訳ございません」
普段のふわふわした口調ではなく、静かで丁寧な声音。
マクスウェルもエイベルも、一瞬言葉を失った。
*
この世界に転生する前のエイベル——名前は愛里——は、日本でOLとして平凡な日々を送っていた。
彼女を夢中にさせた小説が「ロイヤルアカデミア」。
公爵令嬢の主人公が、様々なイケメン達と甘い学園生活を繰り広げる、恋愛物語だ。
だが、愛里が好きになったのは、メインの恋愛対象であるマクスウェルではない。
悪役令嬢のエイベルだった。
シュタイン王国の第一王子、マクスウェルの幼馴染兼婚約者。
幼い頃から王太子妃としての期待を背負い、血の滲むような努力を続けてきた公爵令嬢。
しかし両親からは家が繁栄するための道具としてしか見られず、愛情とは無縁に育った。
そんな彼女は人の愛し方も愛され方も知らないまま、権力に吸い寄せられた取り巻きと共に、学園を牛耳るようになった。
そこへ転校してきたのがアメリアだった。
本人にその気はないが、どこか思わせぶりな言動で男性陣を虜にし、周囲から愛される彼女。
婚約者のマクスウェルでさえアメリアに惹かれていく様子が、エイベルには眩しくて仕方がなかった。
そして取り巻きと共に水をかけたり、冷たい言葉を投げたり……という“いじめ”が加速した。
その結果として、王太子の誕生パーティーで断罪される——それが原作の表向きのシナリオ。
しかし、後に発売されたエイベル視点の外伝には全く違う事実が書かれていた。
アメリアに嫉妬していたのはエイベルではなく、彼女の取り巻きのひとり。
その令嬢が勝手に“いじめ”を仕掛けていたのだ。
エイベルはいち早く異変に気づいていたが、取り巻き、いや、彼女にとっての“友人”を完全に止めることはできなかった。
それに責任を感じた彼女は、マクスウェルから詰問された時に、真実を語らなかった。
そして——沈黙は肯定である、とみなされて断罪されたのだ。
(そんなの……エイベル様が可哀想すぎる……!)
外伝を読んだ愛里は、誰よりも彼女の幸せを願うようになったのだった。
*
アメリアに訝しげな視線を向けながらも、2人は黙って話を聞いている。
「私、ずっと誤解していました。
例えば……窓際を通った時に水が降ってきた日。あれは、取り巻きの方が勝手に仕掛けたのでしょう? 最近になって、ようやく気づいたんです」
エイベルの肩がびくりと震える。
「水をかぶったあと、私は困って保健室に行きました。すると先生が『たまたま最近、予備の制服を寄付してくれた子がいたのよ』と言いながら、普段は置いていないはずの予備の上着を出してくださいました。
その時は運が良かったのだと思っていました。でも……よく考えると、あの状況を想定した誰かが、事前に話を通していたとしか思えません」
アメリアはまっすぐエイベルを見る。
「そして、その“誰か”がエイベル様しかいない——そう思ったのです」
マクスウェルが驚いたようにエイベルを見た。
彼女は顔をそむけ、耳まで真っ赤に染めている。
「いただいていた“冷たい言葉”の意味も、今なら分かります。
いじめの標的になりかけていた無分別な転校生が、さらに恨みを買わないようにと、エイベル様は忠告してくださっていたのですよね。
ご自分が悪者に見られる危険を承知のうえで」
(私はこの世界でアメリアとして生きた記憶を全部持っている……以前は確かにエイベル様を怖がっていた。
でも前世の私は知っている。エイベル様は、本当はただの不器用なツンデレ美女だって……!)
「納得できないこともないが……そこまで回りくどい人間がいるものなのか?」
「そ、そうですわ! そもそも私がそんな考えを持っていたなんて……あなたの都合の良い妄想ですもの!」
(うわぁぁぁ、照れ顔エイベル様かわいすぎる!! 画家! 画家を呼ばなきゃ!!)
アメリアは心の中で絶叫しながら、表面上は必死に平静を装った。
「いいえ……私はやっと冷静になって気づけたのです。だから、改めてお願い申し上げます。
エイベル様。私と、お友達になってくださいませんか?
貴女が美しく、可愛らしく、本当はとても優しい方だということを……私は知っています。
でも、もっともっとエイベル様のことを知りたいのです!」
(ふーっ……普段のアメリアはこんなに喋らないから口が疲れた……でも言いたいこと全部言えたし、エイベル様の照れ顔も見れたし……結果オーライなはず!)
最後まで噛まずに言い切ったアメリアの目に映ったのは——俯いて肩を震わせるマクスウェルと、ゆでだこのように真っ赤になったエイベルだった。
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