「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶

文字の大きさ
8 / 28
1話

しおりを挟む
「貴様に決闘を申し込む!!」
「え、唐突に何」

 数ヶ月前、入学式初日の魔力測定後、突然サリナは告げられた。
 相手は茶髪に緑目の小柄な青年で、何処か偉そうな雰囲気を持っていた。

「アルト殿下、おやめください!庶民に決闘を申し込むなど…」
「うるさい!こうでもしないと僕の気が収まらないんだ!!」
「アルト…って、王子様じゃん」

 世間に疎いサリナでもその名に聞き覚えがあった。
 魔法に長けた第三王子、それがアルト・エーデルスだ。

「知っているなら話が早い!僕と決闘しろ!ハイ以外の返答は許可しない!」
「……」

 なんのメリットもない申し出にどうしたものか悩んだサリナは、ふとアルトの隣にいた、先ほどまで彼を止めてた側近らしき男を見る。
 もう諦め気味の顔をしており、「お相手お願いします」と言いたげな動作をしていた。

「…分かった、やろう。その代わり、私が勝ったら言う事1つ聞いてよね」
「ふん!貴様が勝つことなど到底あるまい!」

 そう言いながら2人はギャラリーに囲まれながら中庭に向かった。


「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になったら負けだ」
「シンプルだね。結構好きだよ、そういうの」

 中庭にて、2人は対峙する。
 周りがギャラリーに囲まれてる中、中央辺りでは先ほどまでアルトの側にいた男が立っていた。

「それでは…始め!」

 男がそう告げると同時にアルトは手を前に突き出す。

「“氷よ!凍てつけ!!”」

 そう言うと彼の周りに氷の柱が無数に出来、それが一斉にサリナへ向かう。

「流石に躱せまい!」
(氷…水属性か。確かにすごい量だ。けど…)

 サリナは静かに手を前に突き出し、口を開く。

「“時よ、遡れ”」

 そう言うと氷は反応するように震え、徐々に輪郭を失い、水へ変貌した。

「な!?」
「冷たっ!」

 水になった氷はサリナに当たるがただそれだけで、全くダメージがなかった。

「時を操る魔法だと!?そんな高度な魔法、貴様がなぜ!?」
「次はこっちから行くよ~。“時よ、巻き戻せ”」

 サリナの言葉に先ほど氷だった水が反応する。
 水は地面から宙に浮き、徐々に輪郭を帯び氷の柱へ変貌した。

「な!?僕魔法を…!?」
「お返ししま…すっ!」

 サリナが手を振り下ろすと、氷の柱は凄まじい勢いでアルトへ向かう。
 アルトは間一髪の所で交わすがギリギリだったのか、頬に一筋の切傷が出来てしまう。

「この!調子に乗って…って、何処に行った!?」
「ここだよ」

 前を見たアルトの視界にはサリナは居なく、一瞬戸惑うが声がする方を向けばすぐ真横にサリナがいた。

「なっ」

 サリナはアルトの首根っこを掴み思いっきり振り返り、そして…。

「どっ…せい!!」

 アルトの身体はその言葉と同時に宙を舞い、地面へと叩きつけられたのだった。

「私、魔法より体術の方が得意なの」


「頭は冷えましたか。アルト殿下」
「少しだけな…」

 医務室のベッドの上でアルトは不貞腐れながら答える。
 あの一戦のあとアルトは気を失ってしまい敗北、医務室へ運び込まれる事態になった。

「私が思いますに、彼女は中々手練れでしたね」
「そんなの、身をもって経験した…所であいつは?」
「教師に呼び出しされて席を外しました。何でも校則に則った決闘以外はご法度だとか…」

 「後で貴方も怒られますよ」と言われ、アルトは何も言えなかった。

 ガチャ

「あ、起きてる」
「貴様」

 医務室のドアが開くとそこにはサリナが立っていた。
 若干疲れの色が見えるが、至って平気そうだった。

「では、私はこれで。殿下、お話したいことがあるのでしょ?私は席を外しますので、存分に話されては?」
「うぐ…」

 側近の男はそう言うとまっすぐドアへ向かい、退出する。

「で?話って何?」

 サリナはベッドの側においてあった椅子に腰掛け、アルトを見る。

「…望みは何だ」
「はい?」
「だから!望みは何だと聞いている!金か!?宝石か!?ドレスか!?」
「…あぁ!決闘の報酬の話ね!」
「貴様、忘れていたのか!?」
「先生に怒られてすっかり頭から抜け落ちてたよ」

 「あははっ」と笑うサリナに、アルトは呆れて物も言えなくなる。

「しかし、望みか………あ、じゃあさ」

 サリナはスッとアルトに手を差し出す。

「友達になってよ」
「は?」
「だから、友達!私友達に憧れてたんだ~。ずっと森育ちだったから同じ年の友達に憧れてて」

 ズイッと更にサリナは手を突き出す。
 それに対してアルトは、何か言いたげな、何処かむず痒い様な仕草をして…。

「き、貴様がそこまで言うのであれば、なってやらなくもない!」

 それに怖気づいているのか、アルトは恐る恐るというように手を伸ばす。
 そして握手が交わされるとサリナは「あ」と声を上げる。

「私、“貴様”じゃなくてサリナだから!サリナ・スタインベック!」
「スタインベック…あの人と同じ家名だな」
「あの人?」
「僕の敬愛する方だ。実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性…全てにおいて尊敬するに値する」
「ん?蛇語を理解する…しかも、スタインベック…。ねぇ、その人さ」
「ん?」
「カナリア・スタインベック?」
「!知っているのか!?自然管理科の大臣であるあの人を!」
「知ってるも何も………私のお母さん」
「は?」
「お母さん、です」
「……は!?」


「カナリア・スタインベックの娘!!!!!!?」


 側近曰く、学校中に聞こえるような絶叫だったと言う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。 特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。 ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。 毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。 診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。 もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。 一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは… ※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いいたします。 他サイトでも同時投稿中です。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

処理中です...