8 / 8
2話
2
しおりを挟む
「貴様に決闘を申し込む!!」
「え、唐突に何」
数ヶ月前、入学式初日の魔力測定後、突然サリナは告げられた。
相手は茶髪に緑目の小柄な青年で、何処か偉そうな雰囲気を持っていた。
「アルト殿下、おやめください!庶民に決闘を申し込むなど…」
「うるさい!こうでもしないと僕の気が収まらないんだ!!」
「アルト…って、王子様じゃん」
世間に疎いサリナでもその名に聞き覚えがあった。
魔法に長けた第三王子、それがアルト・エーデルスだ。
「知っているなら話が早い!僕と決闘しろ!ハイ以外の返答は許可しない!」
「……」
なんのメリットもない申し出にどうしたものか悩んだサリナは、ふとアルトの隣にいた、先ほどまで彼を止めてた側近らしき男を見る。
もう諦め気味の顔をしており、「お相手お願いします」と言いたげな動作をしていた。
「…分かった、やろう。その代わり、私が勝ったら言う事1つ聞いてよね」
「ふん!貴様が勝つことなど到底あるまい!」
そう言いながら2人はギャラリーに囲まれながら中庭に向かった。
「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になったら負けだ」
「シンプルだね。結構好きだよ、そういうの」
中庭にて、2人は対峙する。
周りがギャラリーに囲まれてる中、中央辺りでは先ほどまでアルトの側にいた男が立っていた。
「それでは…始め!」
男がそう告げると同時にアルトは手を前に突き出す。
「“氷よ!凍てつけ!!”」
そう言うと彼の周りに氷の柱が無数に出来、それが一斉にサリナへ向かう。
「流石に躱せまい!」
(氷…水属性か。確かにすごい量だ。けど…)
サリナは静かに手を前に突き出し、口を開く。
「“時よ、遡れ”」
そう言うと氷は反応するように震え、徐々に輪郭を失い、水へ変貌した。
「な!?」
「冷たっ!」
水になった氷はサリナに当たるがただそれだけで、全くダメージがなかった。
「時を操る魔法だと!?そんな高度な魔法、貴様がなぜ!?」
「次はこっちから行くよ~。“時よ、巻き戻せ”」
サリナの言葉に先ほど氷だった水が反応する。
水は地面から宙に浮き、徐々に輪郭を帯び氷の柱へ変貌した。
「な!?僕魔法を…!?」
「お返ししま…すっ!」
サリナが手を振り下ろすと、氷の柱は凄まじい勢いでアルトへ向かう。
アルトは間一髪の所で交わすがギリギリだったのか、頬に一筋の切傷が出来てしまう。
「この!調子に乗って…って、何処に行った!?」
「ここだよ」
前を見たアルトの視界にはサリナは居なく、一瞬戸惑うが声がする方を向けばすぐ真横にサリナがいた。
「なっ」
サリナはアルトの首根っこを掴み思いっきり振り返り、そして…。
「どっ…せい!!」
アルトの身体はその言葉と同時に宙を舞い、地面へと叩きつけられたのだった。
「私、魔法より体術の方が得意なの」
「頭は冷えましたか。アルト殿下」
「少しだけな…」
医務室のベッドの上でアルトは不貞腐れながら答える。
あの一戦のあとアルトは気を失ってしまい敗北、医務室へ運び込まれる事態になった。
「私が思いますに、彼女は中々手練れでしたね」
「そんなの、身をもって経験した…所であいつは?」
「教師に呼び出しされて席を外しました。何でも校則に則った決闘以外はご法度だとか…」
「後で貴方も怒られますよ」と言われ、アルトは何も言えなかった。
ガチャ
「あ、起きてる」
「貴様」
医務室のドアが開くとそこにはサリナが立っていた。
若干疲れの色が見えるが、至って平気そうだった。
「では、私はこれで。殿下、お話したいことがあるのでしょ?私は席を外しますので、存分に話されては?」
「うぐ…」
側近の男はそう言うとまっすぐドアへ向かい、退出する。
「で?話って何?」
サリナはベッドの側においてあった椅子に腰掛け、アルトを見る。
「…望みは何だ」
「はい?」
「だから!望みは何だと聞いている!金か!?宝石か!?ドレスか!?」
「…あぁ!決闘の報酬の話ね!」
「貴様、忘れていたのか!?」
「先生に怒られてすっかり頭から抜け落ちてたよ」
「あははっ」と笑うサリナに、アルトは呆れて物も言えなくなる。
「しかし、望みか………あ、じゃあさ」
サリナはスッとアルトに手を差し出す。
「友達になってよ」
「は?」
「だから、友達!私友達に憧れてたんだ~。ずっと森育ちだったから同じ年の友達に憧れてて」
ズイッと更にサリナは手を突き出す。
それに対してアルトは、何か言いたげな、何処かむず痒い様な仕草をして…。
「き、貴様がそこまで言うのであれば、なってやらなくもない!」
それに怖気づいているのか、アルトは恐る恐るというように手を伸ばす。
そして握手が交わされるとサリナは「あ」と声を上げる。
「私、“貴様”じゃなくてサリナだから!サリナ・スタインベック!」
「スタインベック…あの人と同じ家名だな」
「あの人?」
「僕の敬愛する方だ。実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性…全てにおいて尊敬するに値する」
「ん?蛇語を理解する…しかも、スタインベック…。ねぇ、その人さ」
「ん?」
「カナリア・スタインベック?」
「!知っているのか!?自然管理科の大臣であるあの人を!」
「知ってるも何も………私のお母さん」
「は?」
「お母さん、です」
「……は!?」
「カナリア・スタインベックの娘!!!!!!?」
側近曰く、学校中に聞こえるような絶叫だったと言う。
「え、唐突に何」
数ヶ月前、入学式初日の魔力測定後、突然サリナは告げられた。
相手は茶髪に緑目の小柄な青年で、何処か偉そうな雰囲気を持っていた。
「アルト殿下、おやめください!庶民に決闘を申し込むなど…」
「うるさい!こうでもしないと僕の気が収まらないんだ!!」
「アルト…って、王子様じゃん」
世間に疎いサリナでもその名に聞き覚えがあった。
魔法に長けた第三王子、それがアルト・エーデルスだ。
「知っているなら話が早い!僕と決闘しろ!ハイ以外の返答は許可しない!」
「……」
なんのメリットもない申し出にどうしたものか悩んだサリナは、ふとアルトの隣にいた、先ほどまで彼を止めてた側近らしき男を見る。
もう諦め気味の顔をしており、「お相手お願いします」と言いたげな動作をしていた。
「…分かった、やろう。その代わり、私が勝ったら言う事1つ聞いてよね」
「ふん!貴様が勝つことなど到底あるまい!」
そう言いながら2人はギャラリーに囲まれながら中庭に向かった。
「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になったら負けだ」
「シンプルだね。結構好きだよ、そういうの」
中庭にて、2人は対峙する。
周りがギャラリーに囲まれてる中、中央辺りでは先ほどまでアルトの側にいた男が立っていた。
「それでは…始め!」
男がそう告げると同時にアルトは手を前に突き出す。
「“氷よ!凍てつけ!!”」
そう言うと彼の周りに氷の柱が無数に出来、それが一斉にサリナへ向かう。
「流石に躱せまい!」
(氷…水属性か。確かにすごい量だ。けど…)
サリナは静かに手を前に突き出し、口を開く。
「“時よ、遡れ”」
そう言うと氷は反応するように震え、徐々に輪郭を失い、水へ変貌した。
「な!?」
「冷たっ!」
水になった氷はサリナに当たるがただそれだけで、全くダメージがなかった。
「時を操る魔法だと!?そんな高度な魔法、貴様がなぜ!?」
「次はこっちから行くよ~。“時よ、巻き戻せ”」
サリナの言葉に先ほど氷だった水が反応する。
水は地面から宙に浮き、徐々に輪郭を帯び氷の柱へ変貌した。
「な!?僕魔法を…!?」
「お返ししま…すっ!」
サリナが手を振り下ろすと、氷の柱は凄まじい勢いでアルトへ向かう。
アルトは間一髪の所で交わすがギリギリだったのか、頬に一筋の切傷が出来てしまう。
「この!調子に乗って…って、何処に行った!?」
「ここだよ」
前を見たアルトの視界にはサリナは居なく、一瞬戸惑うが声がする方を向けばすぐ真横にサリナがいた。
「なっ」
サリナはアルトの首根っこを掴み思いっきり振り返り、そして…。
「どっ…せい!!」
アルトの身体はその言葉と同時に宙を舞い、地面へと叩きつけられたのだった。
「私、魔法より体術の方が得意なの」
「頭は冷えましたか。アルト殿下」
「少しだけな…」
医務室のベッドの上でアルトは不貞腐れながら答える。
あの一戦のあとアルトは気を失ってしまい敗北、医務室へ運び込まれる事態になった。
「私が思いますに、彼女は中々手練れでしたね」
「そんなの、身をもって経験した…所であいつは?」
「教師に呼び出しされて席を外しました。何でも校則に則った決闘以外はご法度だとか…」
「後で貴方も怒られますよ」と言われ、アルトは何も言えなかった。
ガチャ
「あ、起きてる」
「貴様」
医務室のドアが開くとそこにはサリナが立っていた。
若干疲れの色が見えるが、至って平気そうだった。
「では、私はこれで。殿下、お話したいことがあるのでしょ?私は席を外しますので、存分に話されては?」
「うぐ…」
側近の男はそう言うとまっすぐドアへ向かい、退出する。
「で?話って何?」
サリナはベッドの側においてあった椅子に腰掛け、アルトを見る。
「…望みは何だ」
「はい?」
「だから!望みは何だと聞いている!金か!?宝石か!?ドレスか!?」
「…あぁ!決闘の報酬の話ね!」
「貴様、忘れていたのか!?」
「先生に怒られてすっかり頭から抜け落ちてたよ」
「あははっ」と笑うサリナに、アルトは呆れて物も言えなくなる。
「しかし、望みか………あ、じゃあさ」
サリナはスッとアルトに手を差し出す。
「友達になってよ」
「は?」
「だから、友達!私友達に憧れてたんだ~。ずっと森育ちだったから同じ年の友達に憧れてて」
ズイッと更にサリナは手を突き出す。
それに対してアルトは、何か言いたげな、何処かむず痒い様な仕草をして…。
「き、貴様がそこまで言うのであれば、なってやらなくもない!」
それに怖気づいているのか、アルトは恐る恐るというように手を伸ばす。
そして握手が交わされるとサリナは「あ」と声を上げる。
「私、“貴様”じゃなくてサリナだから!サリナ・スタインベック!」
「スタインベック…あの人と同じ家名だな」
「あの人?」
「僕の敬愛する方だ。実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性…全てにおいて尊敬するに値する」
「ん?蛇語を理解する…しかも、スタインベック…。ねぇ、その人さ」
「ん?」
「カナリア・スタインベック?」
「!知っているのか!?自然管理科の大臣であるあの人を!」
「知ってるも何も………私のお母さん」
「は?」
「お母さん、です」
「……は!?」
「カナリア・スタインベックの娘!!!!!!?」
側近曰く、学校中に聞こえるような絶叫だったと言う。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
大事な婚約者が傷付けられたので全力で報復する事にした。
オーガスト
恋愛
イーデルハイト王国王太子・ルカリオは王家の唯一の王位継承者。1,000年の歴史を誇る大陸最古の王家の存亡は彼とその婚約者の肩に掛かっている。そんなルカリオの婚約者の名はルーシェ。王国3大貴族に名を連ねる侯爵家の長女であり、才色兼備で知られていた。
ルカリオはそんな彼女と共に王家の未来を明るい物とするべく奮闘していたのだがある日ルーシェは婚約の解消を願い出て辺境の別荘に引きこもってしまう。
突然の申し出に困惑する彼だが侯爵から原因となった雑誌を見せられ激怒
全力で報復する事にした。
ノーリアリティ&ノークオリティご注意
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
実家を没落させられ恋人も奪われたので呪っていたのですが、記憶喪失になって呪わなくなった途端、相手が自滅していきました
麻宮デコ@SS短編
恋愛
「どうぞ、あの人たちに罰を与えてください。この身はどうなっても構いません」
ラルド侯爵家のドリィに自分の婚約者フィンセントを奪われ、実家すらも没落においやられてしまった伯爵家令嬢のシャナ。
毎日のように呪っていたところ、ラルド家の馬車が起こした事故に巻き込まれて記憶を失ってしまった。
しかし恨んでいる事実を忘れてしまったため、抵抗なく相手の懐に入りこむことができてしまい、そして別に恨みを晴らそうと思っているわけでもないのに、なぜか呪っていた相手たちは勝手に自滅していってしまうことになっていった。
全6話
妹さんが婚約者の私より大切なのですね
はまみ
恋愛
私の婚約者、オリオン子爵令息様は、
妹のフローラ様をとても大切にされているの。
家族と仲の良いオリオン様は、きっととてもお優しいのだわ。
でも彼は、妹君のことばかり…
この頃、ずっとお会いできていないの。
☆お気に入りやエール、♥など、ありがとうございます!励みになります!
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
「いいよな。女は着飾ってにこにこしてりゃそれでいいなんて、羨ましい限りだ」と、言われましたので・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
今日は、旦那様が数週間振りに帰って来る日。
旦那様に綺麗だって思ってもらいたいという女心で、久々に着飾って旦那様をお迎えしました。
今か今かと玄関先で旦那様を待って、帰って来た! と、満面の笑顔で。
「お帰りなさい、旦那様!」
そう言ったのですが・・・
「はっ……いいよな。女は着飾ってにこにこしてりゃそれでいいなんて、羨ましい限りだ」
歪めた顔で、不機嫌な様子を隠すことなくわたしへ言いました。
なのでわたしは・・・
から始まる、奥さん達のオムニバス形式なお話。
1.「にこにこ着飾って、なにもしないでいられるくらいに稼いで来いやっ!!」と、ブチギレる。
2.「ごめんなさい……あなたがそんな風に思っていただなんて、知らなかったの……」と、謝る。
3.「では、旦那様の仰る通り。ただ着飾ってにこにこすることに致しましょう」と、にっこり微笑む。
4.「ありがとうございます旦那様! では早速男性の使用人を増やさなきゃ!」と、感謝して使用人の募集を掛ける。
5.「そう、ですか……わかりました! では、わたしもお国のために役立てるような立派な女になります!」と、修行の旅へ。
1話ごとの長さはまちまち。
設定はふわっと。好きなように読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる