「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶

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番外編

ピオ・スタインベックとカナリア・スタインベック

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 ピオ・スタインベック、本名をピオ・メディクスは貴族である。
 彼はメディクス家の次男として生を受け、兄や父親に囲まれ暮らしていた。
 しかし、そんな彼にはある問題点があった。
 それは医術に関する事で没頭する癖があることだ。
 彼はエーデルス王国の医術の低さを嘆き、隣国へ留学するほど勉強熱心だった。
 そんな彼は留学を経て自国へ戻り、自らの診療所を作るまでに至ると、貴族の地位を捨て平民になっり、“メディクス”の名を捨て“スタインベック”を名乗るようになった。
 彼の噂は瞬く間に広がり、平民や貴族関係なく治療する事で一躍有名になった。
 そんな彼には目標があった。
 それは“完全なる蘇生薬”の生成だった。
 おとぎ話だけの存在だろうが、彼は望み探求することをやめなかった。
 それには彼の出生が関係している。
 彼の母親は彼を産んですぐに亡くなったのだ。
 我が子を抱くことも出来ず、ただ衰弱していく母。
 ピオは我が子を抱けず無念にこの世を去った母対して思う所があった。
 故に母に対するある意味愛情表現が、蘇生薬の生成なのである。

 そんな彼には日課があった。
 それは“禁断の森”の散策である。
 禁断の森は危険な魔物や魔法植物等が自生している為、基本誰も立ち寄らない。
 しかし、ピオは薬草採取も兼ねて禁断の森に住居を構えたのだ。
 あまりの奇行に、彼を変人扱いする者もいれば、彼の研究熱心さに感服する者もいた。
 今日もいつも通り薬草採取に出かけていたピオ。

「アゥ~?だぁうあ~!」
「ん?」

 森の奥深くから声がした。
 それは小さな赤子の様な声で、あまりにもその場には似つかわしくないものだった。
 ピオは早足で声のする方へ向かう。
 すると開けた場所に出る。
 そこには毒の沼地と中央の陸地に毒草の群生地がある、見るからに危険な場所だった。
 しかし、“その子”はそこに居た。

「これは…赤子!?」

 中央の陸地に毒の沼地を避けながら近づくと、中央に籠が置かれているのに気づく。
 覗き込んでみると、まだ生後6ヶ月位の赤ん坊が居た。
 赤ん坊はピオの顔を見るとキョトンとし、そして直ぐ様キャッキャッと笑い始める。

(何故こんなところに赤子が…)

 ピオは籠ごと赤ん坊を抱き上げると、その容姿をよく見た。
 白百合の如く白い髪に、赤い瞳が印象的だった。

「もしかして、髪色で捨てられたのか…?」

 エーデルス王国では白髪は珍しい。
 美しいと称えられる事もあるが、稀に気味悪がられる事もある。
 故に、この赤ん坊がこんな危険地帯に捨てられている理由は容易に察した。

「よしよし、怖かっただろ~?もう大丈夫だからな~」
「アゥ?だぁ!」

 ピオはそんな赤ん坊に優しく接する。
 その時風が吹き渡り、ピオの黒髪を靡かせる。

 これが、ピオと後に彼の娘になる“カナリア”の出会いだった。



「お父さんご飯!」
「あぁ。分かった」

 数年の月日が流れ、赤ん坊だったカナリアは成長した。
 ピオは思っていた、美しく育つのでは?と。
 その予想は当たっており、カナリアは街を歩くだけでも人の目を引くほど美しくなっていた。
 それだけのみならず、自ら進んで勉学に励み、家の事を手伝う優しさを持っていた。
 同じ年の子供の中でも群を抜いて良い子になっていると、ピオは常々思っていた。

(そろそろ話すべきか)

 ピオは決めていた、7歳になったら出生の秘密を話すと。
 しかし、中々決意がつかず、カナリアが7歳になってからしばらくしても話せずにいた。

「どうしたの、お父さん」
「ん。何でもない。すぐ行く」



「カナリア。話がある」
「え?お皿洗ってからでも…」
「いや、後でいい」
「?」

 カナリアは首を傾げながらも頷く。
 彼女は皿をキッチンのシンクに入れると、すぐにピオの元へ向かう。
 リビングのイスに座ると、ピオと対面する形になる。

「で、どうしたの?」
「お前、自分が僕の子供じゃないとしたら、どうする?」
「え」

 キョトンとするカナリアは少し悩む素振りを見せると、ピオを見る。

「あ、そうなのかって思う」
「それだけなのか?」
「だって…。育ててくれたのはお父さんなんだし…それ以上の事なくない?」

 それを聞いて、ピオは鼻の奥がツンッとする感覚に襲われる。
 彼は恐れていたのだ。
 血の繋がりの無い愛娘が自分を拒絶するのではないか、と。
 だが、彼が思う以上に彼女は強く、凛々しくなっていた。

「お父さん、泣きそうになってるけど…どうしたの?」
「気にするな…」

 ピオが再び口を開き、真実を話すまで少し時間が掛かったのだった。



「お祖父ちゃ~ん!起きて!!」
「!」

 幼い頃のカナリアを彷彿とさせる子供の声によって、ピオは沈んでいた意識を覚醒させる。
 そこには白百合のような白髪に、カナリアとは異なる丸みを帯びたサファイア色の瞳の子供が居た。

「サリナ、どうかしたのか?」
「これ、どういう意味なの?わかんない!」
「何処だ?」
「ここ!」

 サリナは本を開き、中を見せながら指さす。

「ごめんね、お父さん。今手が離せなくて!」
「これ位構わん。それより、体調はどうだ?」

 ピオはサリナを膝に乗せながら、キッチンで作業するカナリアに問う。

「ボチボチ、かな。まだ原因も分かんないから…」

 カナリアは少し困った顔でその問いに答える。
 彼女の肌という肌はガーゼや包帯でまみれていた。

「僕も居るから、無理だけはするなよ」
「わかってまーす」

 カナリアは軽く流すが、ピオの優しさを真摯に受け止めていたのだった。
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