きみとふたり

くさの

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drop6:隣に座る_side:彼女

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 放課後。生徒会の作業を終えて窓から夕日を見た。
 視線を落とすと、裏庭の隅のベンチに彼が座っているのが見えた。
 なんとなく、彼だと思った。
 その根拠はどこにもない。
 雑誌か何かを顔にかぶせているから、寝ているのかもしれない。
 別に、待ち合わせをしたこともないけど、一緒に帰ったりするのは珍しいことだった。
 たまに下駄箱で会えば、帰るか、となるだけで。
 本当にこれは一般的に言うところの付き合っているという関係ですか。
 彼氏彼女ですか。
 まあ、私の方が結構学校に残っていたりするからで、彼はといえば中学から今まで帰宅部を貫いているだけなのだけれど。
 運動が嫌いなわけじゃない、体育で走っている姿なんて、案外女子に人気だったりする。
 ちょっと、ジェラシー。
 彼がそれを知っているとも思えないけれど。
 もう一度、窓の外を覗く。
 まだ居る様子だから、今から走れば大丈夫かもしれない。
 遅くても、門の所でばったりにはなるだろう。
 生徒会室の鍵を担当教諭に渡し、そそくさと逃げる。
 今日ぐらいつかまることない。逃げたって罰は当たらないだろう。
 いつもの働きを見てくださいよ、先生。
 裏庭へと走り、ベンチが見える位置に来てようやくスピードをゆるめる。
 むしろ、忍び足だ。
 気付いて欲しいということも、ほんの少しはあるのだけれど、居眠りの邪魔はしたくないなあ、と考えてしまう。
 ローファーが砂を踏んでじゃりりと音を立てる。
 一瞬はっとなるがそれでも気付く気配……いや、起きる気配がないので、きょろきょろと周囲の様子を伺ってからもう一度彼の方を見てそれから、ゆっくりと深呼吸をして彼の隣に腰を下ろした。
 さわさわと風にすれる葉の音が、秋の訪れを告げるようで少し切ないけれど。

 木陰で気持ちがいいな。私の中は春真っ盛り、です!
 さっきから心臓が爆発しそうです。
 どこかの誰かが“リア充爆発しろ”なんていってたけど、それより前に心臓が爆発します。
 ちらりと隣を覗いてみても、規則的に胸が上下しているからまだ寝ている様子。
 これで、起きてたら、ば、バカにされたりしないだろうか。
 こう見えても彼はいつも上からで、私が可愛い物に興味を示したりこういったなんていうか少女マンガ的シチュエーションに憧れている態度を示したりしたらいつも笑われる。
 だから、私はそういうのを望んじゃいけないんだと、彼の前ではいつも自粛してる。
 いつか爆発しそうだけれどね、心臓より先に。
 膝の上にカバンそして両手を置いて、しばらくの間そのままで過ごした。
 けれど、苦痛にはならなかった。
 なるわけがなかった。
 なんだか、一方的に私だけ好きみたいで、尽くしてるように見えるかもしれないけれど、別に彼が優しくないわけじゃないし同情とかそういうものだけで付き合ってくれているわけではない、と思う。
 聞いたことないけれど。
 他の子達からしたらこれを“一方通行”だとか“片思い”だとか言うのかもしれないけれど。
 なんとなく、そうじゃなければなあと、思っているんだ。もう少ししてから、声をかけよう。
 私は思って小さく笑った。

「こういう時間が、欲しいんだよ、私」

 かわいいものがかわいいと、彼の前で正直に言えなくても。
 好きなものを好きだって、言えなくても。
 隣に、彼がいてくれたら。

 それでいいんだよ。


 end.
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