『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第2巻

第27話 梅雨の夜、三人

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梅雨の夜。

礼奈と水月が、別々に来て、隣り合いになった。

二人は初対面だったが、話し始めた。

ルーカスは二人の話を聞きながらグラスを磨いた。

「校閲者と、小説家。なんか、縁のある二人ですね」とルーカスが言うと、二人が顔を見合わせた。

「確かに」

「私、あなたの本が出たら校閲したいくらい」と礼奈が言った。

「本当ですか」と水月が目を輝かせた。

「もちろん。バーで縁があったのなら、仕事でも縁があるかもしれないし」

水月は笑った。

「それ、ちょっと夢みたいな話」

「現実になることもありますよ。不思議な縁って、あるから」

ルーカスはその言葉を聞いて、少し思った。

この店は、縁の場所でもある。

荒木夫妻と佐野が偶然再会した夜。梶原と木下が来た夜。今夜の礼奈と水月。

縁というものは、設計できない。でも、集まる場所がある。

ここが、そういう場所になっていた。

「ルーカスさんって、なんでこのバーを作ったんですか」と水月が聞いた。

「……作った、というより」

「作ったというより?」

「この力の使い道として、一番合っていたのがここだった、という感じです」

「力って?」

礼奈がチラリとルーカスを見た。ルーカスは小さく首を振った——秘密は守る、という合図。

礼奈は頷いた。

「観察力と、話を聞く力、ということじゃないかな」と礼奈が代わりに言った。

「そうそう、それです」とルーカスが続けた。

水月は「なるほど」と言ってグラスを飲んだ。

三人で、しばらく雑談した。

小説の話。校閲の話。バーテンダーとして聞いた話(名前や詳細は出さず)。

それぞれが違う仕事で、でも言葉という共通点があった。

「なんか、言葉が集まる場所ですよね、ここ」と水月が言った。

「そうかもしれない」

「ルーカスさんが言葉を大切に使うから」

「日本語の練習をしているので」

「そのせいじゃないと思うけど」

礼奈が笑った。

「そのせいじゃないと思います、私も」

三人で笑った。

梅雨の静かな夜に、地下のバーで、三人の笑い声があった。
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