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悲しみの再会
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でもそれは、俺の想像していた理由よりも遥かにおかしなものだった。
「まぁ…俺が東京での知り合いを集めたらそうなっただけというか…ハハッ…」
あぁ、うんそうだったね海斗。
君は性格上あんまり友達はいないんじゃないかと思っていたけど、まさかそこまでとは思わなかったよ。
そういえば、海斗とはもう8年くらいの付き合いになるけど友達を連れてきたのを見たことなんて一度もなかったな。
「それで?なんで左館なの?別に俺たちならこのチビに顔は割れてなかっただろうからよかったけど、左館は違うだろ」
至極当然の疑問だろうと思う。
Dirty Emperor時代に何があったかなんて、この世界で生きていたのなら嫌でも分かる。
そう、俺たち元メンバーと芙雪が離れたという話ももう既に知られている事実なのだ。
メンバー同士の仲違いだとか、芙雪があの人を裏切っただとか、色んな話が当時は飛び交った。
そのどれも違う。
本当に裏切ったのは…俺達なのだ。
「俺は、この話を聞いたときに自分から入ることを決めたから…」
俺に話を聞かれた以上、素直にそう答えるしかなかった。
ここで嘘をついたってどうせ海斗にはお見通しなのだろうし…
「は…?」
芙雪の顔色が変わった。明らかに動揺している。
再び再会してからまだ1時間前後しか経っていないが、昔と違って表情が全然動かなくなったのは感じていた。
それなのに、俺のこの一言で芙雪の表情が一瞬にして曇ったのが分かった。
「あんた、俺がいることを知っててここに来たってことかよ」
「それは…」
そうだ、とすぐに返事が出来たらどれほど良かったことか。
こんな時に俺の勇気のなさが不甲斐なく思う。
「あんたは!!!自分たちが何をしたかも忘れて俺の前にノコノコ現れたってことかよ!!!!」
そう叫んで、芙雪は俺に掴みかかってきた。
”何をしたかも忘れて”
その言葉が、俺の心の傷を抉るのが分かってしまった。それと同時に、芙雪の中に眠っていたはずの感情を俺が呼び覚ましてしまったに違いない。
「ふざけやがって!!!お前らのせいで俺はッ…、」
俺は…、そのあとに続く言葉は芙雪の口からは出てこなかった。
「くそッ…!」
何を考えているのかは全然分からない。それでも、俺を見つめる芙雪の瞳が揺らいでいるのが分かった。
「芙雪?」
お前はまだ、俺のことを。
俺たちのことを本気で恨んでいるわけではないのか?
今ならまだ間に合うのか?
そう思って芙雪に触れようとした右手が、芙雪に触れる前に止まった。
触れられなかった。
「…ぶな」
その消え入りそうな声が。
「え??」
「呼ぶな…その声で俺を…」
初めてみた芙雪の泣きそうな顔。絞り出されたその声には、悲しみと迷いと、それでも俺に向けられた怒りとがせめぎ合っていたみたいだった。
俺の中の芙雪は…子どもっぽくて、それでもどこか大人になろうと必死に生きていた。
大きな我儘を言うような子ではなかったし、色んな表情を見せてくれていたが悲しみの表情だけは一度も見せてくれたことは無かった。
その芙雪が俺に見せた表情に、俺は言葉を失う。
身体が硬直して動かなくなるのが分かった。
その瞬間、芙雪は海斗の制止も聞かずに部屋を飛び出して行く。
追いかけなければ!と身体が動き出すよりも先に海斗の制止が俺を抑えた。
「夏樹さん。今は堪えて、今の芙雪ちゃんは一人がいいかもしれない」
静かな声だ。
それを聞いてしまった以上、追いかける気にはならなかった。
「芙雪のこと、良く知ってるんだね海斗」
力ない俺の声が部屋の中に響く。
「うーん、良く知ってるというか。もう3年も一緒に居たし、それに芙雪ちゃんのことは誰よりも見てきたつもりだし」
ヘラッと笑って海斗がそう答える。
「まぁ…俺が東京での知り合いを集めたらそうなっただけというか…ハハッ…」
あぁ、うんそうだったね海斗。
君は性格上あんまり友達はいないんじゃないかと思っていたけど、まさかそこまでとは思わなかったよ。
そういえば、海斗とはもう8年くらいの付き合いになるけど友達を連れてきたのを見たことなんて一度もなかったな。
「それで?なんで左館なの?別に俺たちならこのチビに顔は割れてなかっただろうからよかったけど、左館は違うだろ」
至極当然の疑問だろうと思う。
Dirty Emperor時代に何があったかなんて、この世界で生きていたのなら嫌でも分かる。
そう、俺たち元メンバーと芙雪が離れたという話ももう既に知られている事実なのだ。
メンバー同士の仲違いだとか、芙雪があの人を裏切っただとか、色んな話が当時は飛び交った。
そのどれも違う。
本当に裏切ったのは…俺達なのだ。
「俺は、この話を聞いたときに自分から入ることを決めたから…」
俺に話を聞かれた以上、素直にそう答えるしかなかった。
ここで嘘をついたってどうせ海斗にはお見通しなのだろうし…
「は…?」
芙雪の顔色が変わった。明らかに動揺している。
再び再会してからまだ1時間前後しか経っていないが、昔と違って表情が全然動かなくなったのは感じていた。
それなのに、俺のこの一言で芙雪の表情が一瞬にして曇ったのが分かった。
「あんた、俺がいることを知っててここに来たってことかよ」
「それは…」
そうだ、とすぐに返事が出来たらどれほど良かったことか。
こんな時に俺の勇気のなさが不甲斐なく思う。
「あんたは!!!自分たちが何をしたかも忘れて俺の前にノコノコ現れたってことかよ!!!!」
そう叫んで、芙雪は俺に掴みかかってきた。
”何をしたかも忘れて”
その言葉が、俺の心の傷を抉るのが分かってしまった。それと同時に、芙雪の中に眠っていたはずの感情を俺が呼び覚ましてしまったに違いない。
「ふざけやがって!!!お前らのせいで俺はッ…、」
俺は…、そのあとに続く言葉は芙雪の口からは出てこなかった。
「くそッ…!」
何を考えているのかは全然分からない。それでも、俺を見つめる芙雪の瞳が揺らいでいるのが分かった。
「芙雪?」
お前はまだ、俺のことを。
俺たちのことを本気で恨んでいるわけではないのか?
今ならまだ間に合うのか?
そう思って芙雪に触れようとした右手が、芙雪に触れる前に止まった。
触れられなかった。
「…ぶな」
その消え入りそうな声が。
「え??」
「呼ぶな…その声で俺を…」
初めてみた芙雪の泣きそうな顔。絞り出されたその声には、悲しみと迷いと、それでも俺に向けられた怒りとがせめぎ合っていたみたいだった。
俺の中の芙雪は…子どもっぽくて、それでもどこか大人になろうと必死に生きていた。
大きな我儘を言うような子ではなかったし、色んな表情を見せてくれていたが悲しみの表情だけは一度も見せてくれたことは無かった。
その芙雪が俺に見せた表情に、俺は言葉を失う。
身体が硬直して動かなくなるのが分かった。
その瞬間、芙雪は海斗の制止も聞かずに部屋を飛び出して行く。
追いかけなければ!と身体が動き出すよりも先に海斗の制止が俺を抑えた。
「夏樹さん。今は堪えて、今の芙雪ちゃんは一人がいいかもしれない」
静かな声だ。
それを聞いてしまった以上、追いかける気にはならなかった。
「芙雪のこと、良く知ってるんだね海斗」
力ない俺の声が部屋の中に響く。
「うーん、良く知ってるというか。もう3年も一緒に居たし、それに芙雪ちゃんのことは誰よりも見てきたつもりだし」
ヘラッと笑って海斗がそう答える。
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