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キータの誓い編
カットしたシーン やっぱり、おじさんたちは若い子が飲んでるのを見るのが好き
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本編からカットされた、酒場でのワンシーンです。読まなくても話は分かるので、飛ばしても大丈夫です。
―――――――――――――――――――――――――――――
× × ×
ヒマリたちは、退院した日の夕方に、俺たちがたむろしている酒場へやって来た。シロウさんは彼らを出迎えると、モモコちゃんと同じくらいの年ごろの、若い男の子の頭を撫でて「ソル、大きくなったな」と笑っていた。どうやら、あの子はジャンゴさんの息子であるらしい。
席に着くと、店員のやたらと耳が長い男性が八個のジョッキを一気に持って来た。
「シロウ、そして少年少女諸君。この度は、本当に助かった。パーティを代表して、改めて礼を言わせてもらうよ。ありがとうな」
言って、ジャンゴさんは深く頭を下げた。シロウさんを越える巨体に、サイドを短く刈り込んだ濃く赤い髪と、鋭い目のある無骨な顔からは想像も出来ないくらいに紳士な人だった。因みに、彼はタンクだそうだ。
「感謝なら、酒で返してくれればいい。飲もうぜ」
「おう。改めて、乾杯だ!」
ジャンゴさんの掛け声と共に、俺たちはジョッキを高く上げてから一気に体内に流し込む。そして、互いの自己紹介を交えながら、メインデッシュの巨大なブタの丸焼きと、たくさんの前菜に舌鼓を打った。
ジャンゴさんの息子のソル君は、現在16歳。パーティのアタッカーで、ジャンゴさんから戦い方を学んでいるとのこと。髪は横に編み込んでいて、目の色と同様に父親と同じ濃い赤色。元気の溢れるハツラツとした性格が特徴だ。
次に、ヒマリの幼馴染であるミレイ。彼女も23歳で、僅かに緑がかった長い髪をバレッタで止め前に流し、奥二重の黄色い目をした、少しセクシーな雰囲気を持っている。彼女もアタッカーで、剣で戦うソル君とは違い、ゴツいフレイルを扱っているようだ。
シロウさんとジャンゴさんは積もる話があるらしく、ビアを開けるとすぐにグラスを注文して、彼がいつも飲んでいる酒、ブラザーフッドを飲み交わしていた。だから、六人はこっちでまとまって、とりあえず親睦のある俺から彼女たちへと話を振る事にした。
「ヒマリとミレイは、いつ二人とパーティを組んだの?」
「一つ前に居た街、ヘンリルだよ。ギルドで仲間を募集してた時に変な人に絡まれちゃって、その時に二人が私たちを助けてくれたの」
「へ~。ジャンゴさんに喧嘩売ったんすか?その人たち」
アオヤ君はそれを聞いて、早速お替りを頼んだ。
「そんなわけないわ。それどころか、私たちはそのチンピラの親玉が出てきたと思って、奴隷にでもさせられるんじゃないかって覚悟したもの。あ、私ももう一杯お願い」
ミレイは、アオヤ君と同じペースで酒を飲めるらしい。
「ホント!絶対終わったって思ったよ!ミレイ、ちょっと泣いてたもんね」
「そうだけど。ヒマリだって、腰抜かして倒れてたじゃない」
「そう言えばそうでしたね。親父って、やっぱおっかねえんですね。まぁ、シロウさんみたいにカッコよくねえし、仕方ねえですよ」
ソル君は、酒よりも肉に齧りついて、もぐもぐと頬張りながら答える。シロウさんも、相当おっかないと思うけど、この子は昔から知っているせいか慣れているみたいだ。
「そうでしょうか。私には、優しそうに見えますけど」
「モモコは、見た目が可愛らしいだけで、立場はあっちだからでしょ」
ヒマリの言葉に、モモコちゃんは瞬きをしてから、両手でジョッキを傾けた。
そんな話をしているうちに、いつの間にか話題は五転六転と進んでいき、互いの旅の思い出や自分の戦闘に対する思いを口にするようになっていた。酒も進んで、心無しかみんなの距離が近くなったような気がする。
「ところで、シロウさんとジャンゴさんはどんな関係なんですか?」
ナイス、モモコちゃん。
「あぁ、タワリの消防屋の仲間だったんですよ。親父、右肩にマークと数字の刺青が入ってるじゃねえですか。あれが、消防屋の証らしいですよ」
「そう言えば、戦闘中に消防屋の掟とか言ってたっすね」
俺は、シロウさんの右肩を見た事が無かったけど、きっと彼にも同じ刺青があるのだろう。
アオヤ君の呟きに、詳しい話を聞きたいと思ったのは俺だけでなかったらしく、気づけば全員がシロウさんとジャンゴさんを見ていた。
「な、なんだよ」
「おい、シロウ。お前の声がうるせえんじゃねえの?」
「お前よりはうるさくねえだろ……」
なんて、ひそひそと小声で話している。この人たち、本当にこの前の鬼人と同一人物なんだよね?
「違いますよ。俺たち、二人のこと知りたいと思っただけです」
言うと、彼らはボケっとした顔で互いを見合わせ、どっちが口にするかを押し付け合った挙句、咄嗟にグラスを空けてシロウさんが勝ち誇った顔を浮かべた。そう言うルール、あったんだ。
「……仕方ねえな。シロウは、消防屋時代の俺たちのリーダーなんだよ。他に二人、バルトとサスケってのがいたんだけどな」
そして、ジャンゴさんは、二人の消防屋時代の話をしてくれた。彼らは、根っからの人助け好きな性格であるらしく、他の街に出張してまで消火活動や人命救助に勤しんでいたようだ。
驚いたのが、メンバー四人の中で、シロウさんが一番パワーが低かったという事。この世界は、上には上が居るんだと、改めて思い知らされる話だった。
「……それで、シロウは最後に嫁さんと娘の為に仕事を辞めてな。それから、三年くらいだったか、ある日俺んところに来て、勇者になる、だなんて言ったんだな」
「じゃあ、ジャンゴさんはどうして冒険者に?」
「ソルがどうしてもやりたいって言うから、こいつが一人前になるまでのお守だよ」
どうやら、彼の奥さんは家で帰りを待っているらしく、時々実家へ帰省しながら旅をしているようだ。
「おっさんの話は、これで終わりだ。今度は、少年少女の話を聞かせてくれよ。あ、酒飲むか?」
「じゃあ、お替り頼みますね」
「いいっていいって。シロウ、店員呼べよ」
「あいよ、すんませ~ん」
言って、人数分の酒を頼んでから、二人はヘラヘラと笑って俺たちを見た。
「ソル、お前そろそろ親父より強くなったか?」
「当たり前ですよ、シロウさん。というか、とっくに一人前ですぜ」
「お、言うようになったなぁ」
それから、全員が口々に話を始めて、気が付けば再び盛り上がり、夜が明けるまで誰一人として席を立つ者はいなかった。
時折、俺は二人の姿を盗み見ていたが、彼らはいつ見ても、ただ嬉しそうに微笑んで話をするメンバーを眺めていて。やがて日が昇り始めた頃に、気が付けば、頬杖をついてスヤスヤと眠りこけていたのだった。
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ヒマリたちは、退院した日の夕方に、俺たちがたむろしている酒場へやって来た。シロウさんは彼らを出迎えると、モモコちゃんと同じくらいの年ごろの、若い男の子の頭を撫でて「ソル、大きくなったな」と笑っていた。どうやら、あの子はジャンゴさんの息子であるらしい。
席に着くと、店員のやたらと耳が長い男性が八個のジョッキを一気に持って来た。
「シロウ、そして少年少女諸君。この度は、本当に助かった。パーティを代表して、改めて礼を言わせてもらうよ。ありがとうな」
言って、ジャンゴさんは深く頭を下げた。シロウさんを越える巨体に、サイドを短く刈り込んだ濃く赤い髪と、鋭い目のある無骨な顔からは想像も出来ないくらいに紳士な人だった。因みに、彼はタンクだそうだ。
「感謝なら、酒で返してくれればいい。飲もうぜ」
「おう。改めて、乾杯だ!」
ジャンゴさんの掛け声と共に、俺たちはジョッキを高く上げてから一気に体内に流し込む。そして、互いの自己紹介を交えながら、メインデッシュの巨大なブタの丸焼きと、たくさんの前菜に舌鼓を打った。
ジャンゴさんの息子のソル君は、現在16歳。パーティのアタッカーで、ジャンゴさんから戦い方を学んでいるとのこと。髪は横に編み込んでいて、目の色と同様に父親と同じ濃い赤色。元気の溢れるハツラツとした性格が特徴だ。
次に、ヒマリの幼馴染であるミレイ。彼女も23歳で、僅かに緑がかった長い髪をバレッタで止め前に流し、奥二重の黄色い目をした、少しセクシーな雰囲気を持っている。彼女もアタッカーで、剣で戦うソル君とは違い、ゴツいフレイルを扱っているようだ。
シロウさんとジャンゴさんは積もる話があるらしく、ビアを開けるとすぐにグラスを注文して、彼がいつも飲んでいる酒、ブラザーフッドを飲み交わしていた。だから、六人はこっちでまとまって、とりあえず親睦のある俺から彼女たちへと話を振る事にした。
「ヒマリとミレイは、いつ二人とパーティを組んだの?」
「一つ前に居た街、ヘンリルだよ。ギルドで仲間を募集してた時に変な人に絡まれちゃって、その時に二人が私たちを助けてくれたの」
「へ~。ジャンゴさんに喧嘩売ったんすか?その人たち」
アオヤ君はそれを聞いて、早速お替りを頼んだ。
「そんなわけないわ。それどころか、私たちはそのチンピラの親玉が出てきたと思って、奴隷にでもさせられるんじゃないかって覚悟したもの。あ、私ももう一杯お願い」
ミレイは、アオヤ君と同じペースで酒を飲めるらしい。
「ホント!絶対終わったって思ったよ!ミレイ、ちょっと泣いてたもんね」
「そうだけど。ヒマリだって、腰抜かして倒れてたじゃない」
「そう言えばそうでしたね。親父って、やっぱおっかねえんですね。まぁ、シロウさんみたいにカッコよくねえし、仕方ねえですよ」
ソル君は、酒よりも肉に齧りついて、もぐもぐと頬張りながら答える。シロウさんも、相当おっかないと思うけど、この子は昔から知っているせいか慣れているみたいだ。
「そうでしょうか。私には、優しそうに見えますけど」
「モモコは、見た目が可愛らしいだけで、立場はあっちだからでしょ」
ヒマリの言葉に、モモコちゃんは瞬きをしてから、両手でジョッキを傾けた。
そんな話をしているうちに、いつの間にか話題は五転六転と進んでいき、互いの旅の思い出や自分の戦闘に対する思いを口にするようになっていた。酒も進んで、心無しかみんなの距離が近くなったような気がする。
「ところで、シロウさんとジャンゴさんはどんな関係なんですか?」
ナイス、モモコちゃん。
「あぁ、タワリの消防屋の仲間だったんですよ。親父、右肩にマークと数字の刺青が入ってるじゃねえですか。あれが、消防屋の証らしいですよ」
「そう言えば、戦闘中に消防屋の掟とか言ってたっすね」
俺は、シロウさんの右肩を見た事が無かったけど、きっと彼にも同じ刺青があるのだろう。
アオヤ君の呟きに、詳しい話を聞きたいと思ったのは俺だけでなかったらしく、気づけば全員がシロウさんとジャンゴさんを見ていた。
「な、なんだよ」
「おい、シロウ。お前の声がうるせえんじゃねえの?」
「お前よりはうるさくねえだろ……」
なんて、ひそひそと小声で話している。この人たち、本当にこの前の鬼人と同一人物なんだよね?
「違いますよ。俺たち、二人のこと知りたいと思っただけです」
言うと、彼らはボケっとした顔で互いを見合わせ、どっちが口にするかを押し付け合った挙句、咄嗟にグラスを空けてシロウさんが勝ち誇った顔を浮かべた。そう言うルール、あったんだ。
「……仕方ねえな。シロウは、消防屋時代の俺たちのリーダーなんだよ。他に二人、バルトとサスケってのがいたんだけどな」
そして、ジャンゴさんは、二人の消防屋時代の話をしてくれた。彼らは、根っからの人助け好きな性格であるらしく、他の街に出張してまで消火活動や人命救助に勤しんでいたようだ。
驚いたのが、メンバー四人の中で、シロウさんが一番パワーが低かったという事。この世界は、上には上が居るんだと、改めて思い知らされる話だった。
「……それで、シロウは最後に嫁さんと娘の為に仕事を辞めてな。それから、三年くらいだったか、ある日俺んところに来て、勇者になる、だなんて言ったんだな」
「じゃあ、ジャンゴさんはどうして冒険者に?」
「ソルがどうしてもやりたいって言うから、こいつが一人前になるまでのお守だよ」
どうやら、彼の奥さんは家で帰りを待っているらしく、時々実家へ帰省しながら旅をしているようだ。
「おっさんの話は、これで終わりだ。今度は、少年少女の話を聞かせてくれよ。あ、酒飲むか?」
「じゃあ、お替り頼みますね」
「いいっていいって。シロウ、店員呼べよ」
「あいよ、すんませ~ん」
言って、人数分の酒を頼んでから、二人はヘラヘラと笑って俺たちを見た。
「ソル、お前そろそろ親父より強くなったか?」
「当たり前ですよ、シロウさん。というか、とっくに一人前ですぜ」
「お、言うようになったなぁ」
それから、全員が口々に話を始めて、気が付けば再び盛り上がり、夜が明けるまで誰一人として席を立つ者はいなかった。
時折、俺は二人の姿を盗み見ていたが、彼らはいつ見ても、ただ嬉しそうに微笑んで話をするメンバーを眺めていて。やがて日が昇り始めた頃に、気が付けば、頬杖をついてスヤスヤと眠りこけていたのだった。
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