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追放した回復術師が、ハーレムを連れて「ざまぁ」と言いに来た。編
第47話 そんな未来も、あったかもな
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それから数日は、近所のダンジョンを攻略しながらヒマリとミレイを待っていた。そして、攻略したダンジョンの一つにブチョークラスの悪魔幹部が潜んでいたのだが、ヤツはシロウさんを見た時に、まるで自分の死期を悟ったかのような表情をしていた。
「お前がバーレニィを殺したというのは、本当のようだな。歴代の勇者とは、まるで格が違う」
魔物の屍の山を見て、息を切らせながら呟く。
「なんだよ、悪魔にも同族を尊ぶ思想があるのか?」
「あぁ。魔王様が、言ったんだ。かけがえのないモノを惜しむ事は、何も悪い事ではないと。そして、私たちの命は、他の誰かにとってかけがえのないモノであると。バーレニィは、私の親友だった」
目には、怒りよりも悲しみが強く浮かんでいたんだと思う。
「お前たちが、地獄で何と呼ばれているか知っているか?」
「知らねえよ。聞く気もねえ」
「……そうか。この戦いは、魔王様の為だけではない。亡き友、バーレニィの為だ」
話を終える前にシロウさんとアオヤ君は悪魔に迫り、宝具を以て両側から斬りかかった。
「ボルスロイ、推して参る!」
言うと、ヤツ、ボルスロイは周囲に紫電を纏って瓦礫を空中へ打ち上げた。体は、約5メートル。真っ黒の体に牛のような角を生やし、異常に発達した筋肉と数の多い関節、更には上顎を四つ重ねたような口をしている。その口大きく広げて部屋中に響き渡る程の咆哮を上げると、バヂィ!と破裂したような音を立てて、二人の攻撃を防いだ。
「モモコちゃん、攻撃の準備を」
言って、俺もボルスロイの口の中へ向けて矢を放つ。改造を施した弓と、射線の途中で爆発を起こし、加速した矢は二人の猛攻の隙間を縫って飛来すると、鋭く脳みそを突き抜けた。悪魔の動体視力でも、捉える事は出来なかったようだ。
「ぐっ……」
「まだだ」
よろめいた瞬間、シロウさんは飛び上がってヤツの体を掴むとソードオフを口の中にねじ込み、二発を立て続けに発射した。弾丸は体の中で止まったが、追撃は尚も衰えない。既にドレッドストライクを唱えていたアオヤ君は鈍くなったボルスロイの翼を貫いて、更にシロウさんがホーリーセイバーで腹を突き刺した。
「モモコちゃん、今だ」
「ヘヴフレア、やります」
合図を送ると、アオヤ君はセイクリッドストライクを、シロウさんはバフを受けた攻撃を放ってヤツの体を壁に張り付けにした。
「じゃあな」
言って離れたシロウさんに、ボルスロイは苦悶の表情を浮かべながら吐き捨てる。
「……アク、マ」
モモコちゃんの炎が、言葉ごと張り付けられた体を焼き尽す。そして、シロウさんが体の中に打ち込んだ弾丸に炎が着火すると、内側から強烈な爆発を引き起こして、ボルスロイの体は跡形も無く消え去った。スキルの炎にはない、硝煙の匂いが辺りには漂っていた。
「やはり、宝具の力に触れたアルケーは、すべからく退魔の力を宿すみたいですね」
現在は、その日の夜。弾丸の火薬を調合しながら、俺はシロウさんと話をしていた。
「しかし、キータも、キータの彼女もすげえな。まさか、こんな裏技があっただなんてよ」
言って、彼は弾丸を眺めてソードオフにセットする。セーフティーロックは、かかっているようだ。
三人には、ヒマリに教わったアトムとアルケーの話をすでにしてある。アオヤ君とモモコちゃんは、「小難しくてわかんない」と言って部屋に戻ってしまったけど。
「彼女じゃないですけどね。ただ、ヒマリの話を聞いてそういう予感があったんです。シロウさんがチャカ君に適合者の力を渡したように、宝具の力を別のモノに宿す方法もあるんじゃないかって」
実際、ホーリーボゥだって弦に触れた矢に退魔の力を宿すのだから、他の宝具にだって同じ効果があっても何もおかしくはない。ヒマリの言葉の大切なところは、アトムやアルケーよりも視点を変えるという根本的な部分だ。あれって、きっとどんな事にでも当てはまるんだと思う。
「まだ、ボルスロイの言葉を気にしてんのか?」
そう言ったシロウさんは、いつもの通り優しい顔をしている。
「えぇ。あいつは、俺たちを悪魔だと言いました」
「まぁ、そりゃそうだろ。正面で待ち構える、それも友達のかたき討ちの為に戦う一人を寄ってたかって叩きのめすだなんて、悪役以外の何者でもねえよ」
ただ、あの言葉の意味はそれだけなんだろうか。
「どうして、悪魔たちはシャインだなんて名前を使い始めたんでしょうか」
「さぁな。キータは、そんなに敵の事を知りたいのか?」
「分かりません。ただボルスロイと戦って、もし互いの事を理解出来れば、人間とシャインは戦わなくて済むんじゃないかって思ったんです」
「そんな未来も、あったかもな」
そう言ったシロウさんの顔を見ると真剣で、気のせいかもしれないけど、まるで努めて笑顔を浮かべているように思える。
「なぁ、キータ」
「……はい、何でしょうか」
ソードオフから弾丸を抜いて窓際に立てると、シロウさんは立ち上がって俺に訊いた。
「俺が死んでも、魔王討伐を辞めないでくれるか?」
「お前がバーレニィを殺したというのは、本当のようだな。歴代の勇者とは、まるで格が違う」
魔物の屍の山を見て、息を切らせながら呟く。
「なんだよ、悪魔にも同族を尊ぶ思想があるのか?」
「あぁ。魔王様が、言ったんだ。かけがえのないモノを惜しむ事は、何も悪い事ではないと。そして、私たちの命は、他の誰かにとってかけがえのないモノであると。バーレニィは、私の親友だった」
目には、怒りよりも悲しみが強く浮かんでいたんだと思う。
「お前たちが、地獄で何と呼ばれているか知っているか?」
「知らねえよ。聞く気もねえ」
「……そうか。この戦いは、魔王様の為だけではない。亡き友、バーレニィの為だ」
話を終える前にシロウさんとアオヤ君は悪魔に迫り、宝具を以て両側から斬りかかった。
「ボルスロイ、推して参る!」
言うと、ヤツ、ボルスロイは周囲に紫電を纏って瓦礫を空中へ打ち上げた。体は、約5メートル。真っ黒の体に牛のような角を生やし、異常に発達した筋肉と数の多い関節、更には上顎を四つ重ねたような口をしている。その口大きく広げて部屋中に響き渡る程の咆哮を上げると、バヂィ!と破裂したような音を立てて、二人の攻撃を防いだ。
「モモコちゃん、攻撃の準備を」
言って、俺もボルスロイの口の中へ向けて矢を放つ。改造を施した弓と、射線の途中で爆発を起こし、加速した矢は二人の猛攻の隙間を縫って飛来すると、鋭く脳みそを突き抜けた。悪魔の動体視力でも、捉える事は出来なかったようだ。
「ぐっ……」
「まだだ」
よろめいた瞬間、シロウさんは飛び上がってヤツの体を掴むとソードオフを口の中にねじ込み、二発を立て続けに発射した。弾丸は体の中で止まったが、追撃は尚も衰えない。既にドレッドストライクを唱えていたアオヤ君は鈍くなったボルスロイの翼を貫いて、更にシロウさんがホーリーセイバーで腹を突き刺した。
「モモコちゃん、今だ」
「ヘヴフレア、やります」
合図を送ると、アオヤ君はセイクリッドストライクを、シロウさんはバフを受けた攻撃を放ってヤツの体を壁に張り付けにした。
「じゃあな」
言って離れたシロウさんに、ボルスロイは苦悶の表情を浮かべながら吐き捨てる。
「……アク、マ」
モモコちゃんの炎が、言葉ごと張り付けられた体を焼き尽す。そして、シロウさんが体の中に打ち込んだ弾丸に炎が着火すると、内側から強烈な爆発を引き起こして、ボルスロイの体は跡形も無く消え去った。スキルの炎にはない、硝煙の匂いが辺りには漂っていた。
「やはり、宝具の力に触れたアルケーは、すべからく退魔の力を宿すみたいですね」
現在は、その日の夜。弾丸の火薬を調合しながら、俺はシロウさんと話をしていた。
「しかし、キータも、キータの彼女もすげえな。まさか、こんな裏技があっただなんてよ」
言って、彼は弾丸を眺めてソードオフにセットする。セーフティーロックは、かかっているようだ。
三人には、ヒマリに教わったアトムとアルケーの話をすでにしてある。アオヤ君とモモコちゃんは、「小難しくてわかんない」と言って部屋に戻ってしまったけど。
「彼女じゃないですけどね。ただ、ヒマリの話を聞いてそういう予感があったんです。シロウさんがチャカ君に適合者の力を渡したように、宝具の力を別のモノに宿す方法もあるんじゃないかって」
実際、ホーリーボゥだって弦に触れた矢に退魔の力を宿すのだから、他の宝具にだって同じ効果があっても何もおかしくはない。ヒマリの言葉の大切なところは、アトムやアルケーよりも視点を変えるという根本的な部分だ。あれって、きっとどんな事にでも当てはまるんだと思う。
「まだ、ボルスロイの言葉を気にしてんのか?」
そう言ったシロウさんは、いつもの通り優しい顔をしている。
「えぇ。あいつは、俺たちを悪魔だと言いました」
「まぁ、そりゃそうだろ。正面で待ち構える、それも友達のかたき討ちの為に戦う一人を寄ってたかって叩きのめすだなんて、悪役以外の何者でもねえよ」
ただ、あの言葉の意味はそれだけなんだろうか。
「どうして、悪魔たちはシャインだなんて名前を使い始めたんでしょうか」
「さぁな。キータは、そんなに敵の事を知りたいのか?」
「分かりません。ただボルスロイと戦って、もし互いの事を理解出来れば、人間とシャインは戦わなくて済むんじゃないかって思ったんです」
「そんな未来も、あったかもな」
そう言ったシロウさんの顔を見ると真剣で、気のせいかもしれないけど、まるで努めて笑顔を浮かべているように思える。
「なぁ、キータ」
「……はい、何でしょうか」
ソードオフから弾丸を抜いて窓際に立てると、シロウさんは立ち上がって俺に訊いた。
「俺が死んでも、魔王討伐を辞めないでくれるか?」
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