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第8話 魔王の特別
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ミレイアの部屋には、今日は人が揃っていた。
リリスはいつものように遠慮なく椅子に腰掛け、セルフィは壁にもたれている。二人はこの部屋に定期的に顔を出す常連だった。理由は単純で、時間が空いたからだ。様子を見る、と言いながら、半ば遊びに来ている。
その二人に誘われる形で、もう一人の男が立っている。
「……で、なぜ俺までここにいる」
低く抑えた声。大柄な体躯に、無駄のない姿勢。
「いいじゃない、ガルド」
リリスが軽く言う。
「初顔合わせよ。あなた、まだちゃんと見てなかったでしょう」
「仕事ではない」
「だからよ。仕事じゃない場所も、見ておきなさい」
セルフィが肩をすくめる。
「魔王様の“例外”だしね」
ガルドはそれ以上言わなかった。視線だけで部屋を一巡し、配置と距離を確認する。その動きだけで、彼の役割が伝わってくる。
会話は自然と四天王の間で回る。ミレイアはそこに座ったまま、聞き役になるしかなかった。
そのとき、扉が開いた。
「……何をしている」
低く、落ち着いた声。
アシュレイだった。
「どうしてお前たちは、ここに揃っている」
視線が三人を順に捉える。
「ミレイアが休めないだろう」
空気が一段落ちる。
「ほら、来た」
セルフィが即座に笑う。
「やっぱりね。今日も追い出される流れだ」
「分かりやすすぎるわよ」
リリスが肩をすくめる。
「夜は眠らせてないから、昼間は休ませたいのよね?」
完全に、わざとだった。
「……言葉を選べ」
「やだ、図星?」
リリスは楽しそうに続ける。
「だって毎回そうじゃない。私たちが来ると、すぐ追い出す」
「過保護だなあ」
セルフィも悪びれない。
「誤解を広げるな」
アシュレイの声は低いが、荒れてはいない。
「はいはい」
リリスはあっさり立ち上がる。
「じゃあ失礼します。邪魔者は退散ね」
「定期行事だ」
セルフィも片手を上げる。
「誘われただけだ」
ガルドはそれだけ言い残し、二人に続いた。
扉が閉まり、部屋に静けさが戻る。
アシュレイは一拍置いてから、ミレイアの方を見た。
「困ったことは、ないか」
問いは短い。探る響きはない。
ミレイアはすぐには答えず、指先を重ねた。
「……いえ」
一度、言葉を切る。
「殴られもしないし……その、酷いことも、されないです」
言い終えた瞬間、アシュレイの視線がわずかに逸れた。
ミレイアは、その沈黙を待つように続ける。
「……どうして、こんなに良くしてくれるんですか」
自分でも、思ったより静かな声だった。
アシュレイは返事をする前に、小さく息を吐いた。
「良くは、できていない」
視線を外したまま、言う。
「軟禁している以上、それは事実だ」
一度、言葉が途切れる。
「必要であれば、やらなければならないことはある」
低く、淡々と。
「だが、噂だけで足りるなら、本当に酷いことをする必要はない」
言い訳でも、正当化でもない。ただの方針の確認だった。
ミレイアは、その横顔を見る。
優しいとも、冷たいとも言い切れない。
ただ――奪うことを前提にしていない。
沈黙が落ちる。
その沈黙を、ミレイアは以前よりも、少しだけ長く受け止めていた。
リリスはいつものように遠慮なく椅子に腰掛け、セルフィは壁にもたれている。二人はこの部屋に定期的に顔を出す常連だった。理由は単純で、時間が空いたからだ。様子を見る、と言いながら、半ば遊びに来ている。
その二人に誘われる形で、もう一人の男が立っている。
「……で、なぜ俺までここにいる」
低く抑えた声。大柄な体躯に、無駄のない姿勢。
「いいじゃない、ガルド」
リリスが軽く言う。
「初顔合わせよ。あなた、まだちゃんと見てなかったでしょう」
「仕事ではない」
「だからよ。仕事じゃない場所も、見ておきなさい」
セルフィが肩をすくめる。
「魔王様の“例外”だしね」
ガルドはそれ以上言わなかった。視線だけで部屋を一巡し、配置と距離を確認する。その動きだけで、彼の役割が伝わってくる。
会話は自然と四天王の間で回る。ミレイアはそこに座ったまま、聞き役になるしかなかった。
そのとき、扉が開いた。
「……何をしている」
低く、落ち着いた声。
アシュレイだった。
「どうしてお前たちは、ここに揃っている」
視線が三人を順に捉える。
「ミレイアが休めないだろう」
空気が一段落ちる。
「ほら、来た」
セルフィが即座に笑う。
「やっぱりね。今日も追い出される流れだ」
「分かりやすすぎるわよ」
リリスが肩をすくめる。
「夜は眠らせてないから、昼間は休ませたいのよね?」
完全に、わざとだった。
「……言葉を選べ」
「やだ、図星?」
リリスは楽しそうに続ける。
「だって毎回そうじゃない。私たちが来ると、すぐ追い出す」
「過保護だなあ」
セルフィも悪びれない。
「誤解を広げるな」
アシュレイの声は低いが、荒れてはいない。
「はいはい」
リリスはあっさり立ち上がる。
「じゃあ失礼します。邪魔者は退散ね」
「定期行事だ」
セルフィも片手を上げる。
「誘われただけだ」
ガルドはそれだけ言い残し、二人に続いた。
扉が閉まり、部屋に静けさが戻る。
アシュレイは一拍置いてから、ミレイアの方を見た。
「困ったことは、ないか」
問いは短い。探る響きはない。
ミレイアはすぐには答えず、指先を重ねた。
「……いえ」
一度、言葉を切る。
「殴られもしないし……その、酷いことも、されないです」
言い終えた瞬間、アシュレイの視線がわずかに逸れた。
ミレイアは、その沈黙を待つように続ける。
「……どうして、こんなに良くしてくれるんですか」
自分でも、思ったより静かな声だった。
アシュレイは返事をする前に、小さく息を吐いた。
「良くは、できていない」
視線を外したまま、言う。
「軟禁している以上、それは事実だ」
一度、言葉が途切れる。
「必要であれば、やらなければならないことはある」
低く、淡々と。
「だが、噂だけで足りるなら、本当に酷いことをする必要はない」
言い訳でも、正当化でもない。ただの方針の確認だった。
ミレイアは、その横顔を見る。
優しいとも、冷たいとも言い切れない。
ただ――奪うことを前提にしていない。
沈黙が落ちる。
その沈黙を、ミレイアは以前よりも、少しだけ長く受け止めていた。
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