【R18】亡国の聖女は、魔王の最愛になりました。

白木ゆか

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第8話 魔王の特別

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ミレイアの部屋には、今日は人が揃っていた。

リリスはいつものように遠慮なく椅子に腰掛け、セルフィは壁にもたれている。二人はこの部屋に定期的に顔を出す常連だった。理由は単純で、時間が空いたからだ。様子を見る、と言いながら、半ば遊びに来ている。

その二人に誘われる形で、もう一人の男が立っている。

「……で、なぜ俺までここにいる」

低く抑えた声。大柄な体躯に、無駄のない姿勢。

「いいじゃない、ガルド」

リリスが軽く言う。

「初顔合わせよ。あなた、まだちゃんと見てなかったでしょう」

「仕事ではない」

「だからよ。仕事じゃない場所も、見ておきなさい」

セルフィが肩をすくめる。

「魔王様の“例外”だしね」

ガルドはそれ以上言わなかった。視線だけで部屋を一巡し、配置と距離を確認する。その動きだけで、彼の役割が伝わってくる。

会話は自然と四天王の間で回る。ミレイアはそこに座ったまま、聞き役になるしかなかった。

そのとき、扉が開いた。

「……何をしている」

低く、落ち着いた声。

アシュレイだった。

「どうしてお前たちは、ここに揃っている」

視線が三人を順に捉える。

「ミレイアが休めないだろう」

空気が一段落ちる。

「ほら、来た」

セルフィが即座に笑う。

「やっぱりね。今日も追い出される流れだ」

「分かりやすすぎるわよ」

リリスが肩をすくめる。

「夜は眠らせてないから、昼間は休ませたいのよね?」

完全に、わざとだった。

「……言葉を選べ」

「やだ、図星?」

リリスは楽しそうに続ける。

「だって毎回そうじゃない。私たちが来ると、すぐ追い出す」

「過保護だなあ」

セルフィも悪びれない。

「誤解を広げるな」

アシュレイの声は低いが、荒れてはいない。

「はいはい」

リリスはあっさり立ち上がる。

「じゃあ失礼します。邪魔者は退散ね」

「定期行事だ」

セルフィも片手を上げる。

「誘われただけだ」

ガルドはそれだけ言い残し、二人に続いた。

扉が閉まり、部屋に静けさが戻る。

アシュレイは一拍置いてから、ミレイアの方を見た。

「困ったことは、ないか」

問いは短い。探る響きはない。

ミレイアはすぐには答えず、指先を重ねた。

「……いえ」

一度、言葉を切る。

「殴られもしないし……その、酷いことも、されないです」

言い終えた瞬間、アシュレイの視線がわずかに逸れた。

ミレイアは、その沈黙を待つように続ける。

「……どうして、こんなに良くしてくれるんですか」

自分でも、思ったより静かな声だった。

アシュレイは返事をする前に、小さく息を吐いた。

「良くは、できていない」

視線を外したまま、言う。

「軟禁している以上、それは事実だ」

一度、言葉が途切れる。

「必要であれば、やらなければならないことはある」

低く、淡々と。

「だが、噂だけで足りるなら、本当に酷いことをする必要はない」

言い訳でも、正当化でもない。ただの方針の確認だった。

ミレイアは、その横顔を見る。

優しいとも、冷たいとも言い切れない。
ただ――奪うことを前提にしていない。

沈黙が落ちる。

その沈黙を、ミレイアは以前よりも、少しだけ長く受け止めていた。
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