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シルバ・アリウム、剣聖と成る
十四話
しおりを挟む「―――なんだか、シルヴィアさんなら本当に何とかしてくれそうですね」
「……そうだね、本当に何とかしないといけないから、私はなんだってするよ」
決意を、この胸に宿して村の発展と国の未来を誓う。
浮き彫りになってきた腐敗を正し、私は自己の研鑽を積み上げ帝都へ戻る。
これはそのための第一歩、故に迷いも後悔も無く、ひたすら突き進む。
そう、思った瞬間であった―――。
ガシャンッッッ!!!!!
「きゃッ!?なにッ!?」
「―――ミオッ……伏せてて、ここから離れないでね」
事務所の窓が突然割れ、先程までの雰囲気とは打って変わって不穏な空気が流れる。
ミオを庇って姿勢を低くしながら様子を伺うと、外から怒号が飛んでくる。
『逆賊であるシルヴィア・ライトよッッ!!大人しく出て来いッ!!』
大声で響き渡る名前は間違えようもなく私のものであり、逆賊という心当たりのない単語もどうやら私を指す言葉らしい。
(ようやく、と言うべきか……手を打っても中々動かないと思ったら、
いきなり強行的な行動を取るとは予想外だったかな……)
物々しい空気を読み取り、ちらりと外を見ると兵士が立ち並んでいる。
その中に紛れている三人の魔術師、彼らが行使した魔術により窓は破壊された。
(中隊規模の兵士に戦術魔法師が三人、脅しにしては過剰すぎる戦力……
それだけ伯爵も本気って事かな……まぁ、逆に有難いかな)
状況を確認し、その脅威の度合いを計れば後は怖い物なんて無い。
間違った事なんて何もしていないし、正しい事を精一杯励んできたこの一か月、後ろめたい感情なんて何一つもありはしない。
―――ならば、堂々と立ち振る舞うのみ。
軽やかに、そして緩やかな足取りで立ち上がり前へ出る。
「ミオ、ちょっと行ってくるね」
「えッ……?ちょ……シルヴィアさんッ!?」
恐怖で震えているミオを優しく離し、兵士が迎え撃つその部隊に恐れも無く顔を出す。
無防備な姿を現すと、武装した大男がシルバを見据えて対面する。
「―――っと、お待たせ致しました、私がシルヴィア・ライトです」
「貴様ッ!!ノコノコ現れおってッ……!!!
お前は自分が何をしたか分かっているのかッ!!!」
「勿論です、―――国の為に従事し、村の発展を叶えるため働いておりました」
「たわけがッ!!!この小娘ッ!!!!!
……貴様の様な世間を知らぬ若輩風情がッ!!
よくもまぁ……国の為にと大義を語れたものだなッ!!」
「……怒鳴り散らす事しか出来ないのなら、早々に下がって頂きたい、
私はフタバ伯爵とお話したいのですが、彼はここにいらっしゃらないのですか?」
「―――ほぉ……どうやら、小娘……死にたいのだな」
――――刹那。
大男が握っていた大槍が振り抜かれ、シルバの顔を捉える。
直撃すれば首が捻じ切れる勢いの槍は、無慈悲に必殺の軌道を描きその顔を破壊―――
「―――怪我はないか、シルヴィア」
破壊、するはずであった。
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