天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

文字の大きさ
75 / 102
束の間の安息と追憶

八話

しおりを挟む

 先ほどまで囚われていた馬車に戻ると、離れていた野盗が仲間を引き連れている。
 彼らは捕らえていた子供を引きずり、刃物で切り付け一人一人殺していた。


 「ふざけやがってッ!!なんだって別動隊の奴らが全滅してんだ!!
  おまけに銀髪のガキが見当たらねぇ!!アイツに子守を任せたのが失敗だった!!」

 「だからって攫ったガキ共を全員殺す必要あるか?流石にやりすぎじゃねえか?」

 「馬鹿野郎ッ!!作戦は失敗して騎士団がもうそこまで来てんだよ!!
  このままガキを乗せて逃げられねぇ!!だからって生かしておけば俺達の痕跡も
  残るだろうがッ!!そんな事までわかんねぇのか!!」

 「す、すまねぇ……」


 なんとも身勝手な理由で殺戮を続ける彼らを、少女は虚ろな眼で捉えて堂々と姿を現す。


 「―――なにを、しているのですか」

 「あん?って……このガキっ…!?」

 「コイツ、目的の銀髪の子供じゃないすか?」

 「ッハ!!てっきりあの頭のイカれた野郎に玩具にされたと思っていたが、
  これは丁度いい、おいお前ら!!さっさとそいつを捕まえて運び込め!!」


 彼女が手に持つ大剣には目もくれず、野盗たちは武器を取り出し一斉に囲む。
 が、何の脅威にもならぬその包囲を流し見て、構えすら取らずに少女は刃を振り切る。

 ―――鉄が風を穿つ。

 透き通る残響が響き渡ると同時に、屍が積もった。


 「え……な、なん……だ」


 あまりにも神速、かつ刹那。

 美しくも思えるその剣戟に野党の頭領は恐怖を忘れ、ただ、見惚れていた。
 
 ―――自身が死ぬと気付く直前まで。


 「ぇ……え?」

 「はあッ!!!」


 首が飛び、血が噴き出す。

 この惨劇を作り出した少女の顔は、僅かに笑みを浮かべて模られた。


 「………殺さなきゃ」


 正義を免罪符に、次の得物を求めて彷徨い歩く。
 焼けた街を、鎖を引きずりただ歩いて。
 
 熱さと、心苦しさと、罪悪感。

 のしかかる負の感情と感覚に、死への渇望すら沸き立つ。


 「あぁ……」


 何人斬り殺したのか、何の為に殺したのか。
 
 もはやそれすら定かでは無く、既に使えなくなった刃の欠けた大剣を放り投げ、火の海となった街に足を踏み入れて死に場所を求めた。

 だが、ふと―――。

 ここまで混濁した記憶のなかで、少女は自身の行動を疑問に思ってしまったのだ。


 「……どうやって」


 何で殺し、誰が殺したのか。

 思い出せるが、実感は無い。
 故に自問する、この事実が真実であるのか。

 ありもしない希望に絶望し、焦点の合わない視線で突き刺さった剣を握る。


 「―――あなたも、殺します」


 場違いな程凛々しく、颯爽と現れたる剣聖。
 彼は一呼吸、僅かに身構え剣を抜く。


 「……なるほど、報告に上がっていた野盗を斬ったのは君か、
  ならば俺が、責任を取ってこの場を収めよう、それが王の責任だ」

 「あなたは、誰ですか」

 「なに、偶然通りかかっただけの王様だ、
  領民から助けを求める声があれば、それを果たすのが我が務め」


 剣聖に呼応するが如く、後方から続く騎士たちが並んで隊列を成す。


 「我が王よ、ここは我らに任せ御下がりください」

 「愚か者が、目の前の子をしかと見よ、
  あれの相手がお前らに務まると思うのか?」

 「―――なにを」

 「いいから下がれ、市民の救出と野盗の残党殲滅を優先しろ」

 「……ッハ!!」


 優しげに、だが構えた剣の圧だけは変わらない剣聖は徐々に距離を詰めて語る。


 「今日はね、遠征から帰還する途中だったのだよ、
  街道を駆けていると、大きく燃えている街が見えて急いで救援に向かった、
  その際、一人の女性が助けを求めてきてね、私は……それに応えねばならない」

 「その、人は……」

 「彼女の言っていた通り、なるほど……確かに美しい銀の髪だ、
  娘と慕う彼女の気持ちは、私が守り通そう」

 「は、義母は……おかあ、さん、は……」

 「―――すまない」


 心から、申し訳なく首を横に振る王。

 それを意味する事を察してしまい、抑えていた感情を爆発させてこの激戦が開かれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...