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迷いと、後悔
四話
しおりを挟む「―――さて、ご機嫌いかがかな?シルバ王女、私のサプライズは驚いてくれたかな?
それとも、この程度の催し では君の心を揺さぶるにも至らなかったか?」
「ジニア村を襲って何をするつもりです……
罪なき人々を巻き込んで、私達が積み上げてきたものを壊し、
それで貴方に、いったい何の得があるのですかっ……!!」
「得……?違うな、王女様、私は最初から損得で動いていない、
私が望むのは誇りと伝統、そして―――歴史だ」
わざとらしく、駄々っ子を嗜めるようにシルバの肩に手を置くと、
―――静かに、シルバに囁いた。
「君の部下……黒き刃の四人だったかな、
彼らを捕らえ、その命は私の手中だ」
「―――ッ!?」
カズキ、ヘイ、タキガワ、サクラ。
村でミオの補佐をしていた彼らが、シバによって囚われた。
その事実に、彼女の剣が音を鳴らす。
ィィンン……!!!
「……私を脅すか?王女様」
「彼らの身の安全を確認させてください、さもなければ―――」
「さもなくば、なんだ?私の首を落とすか?
随分と強引な手段を選ぶのだな、それはお互いの為にならんだろう」
「黙れッ!!卑劣なやり方しか出来ぬこの下郎がっ……!」
「威勢が良いのは構わないが、これは君にとっての好機だという事を
忘れないでほしい、最初に言ったであろう?機会を与えると」
「機会、だと……」
「君は今、シルバ王女の暗殺を企てた偽の姫……という事になっている、
私がそのように虚偽の命を出し、兵を動かしている……それは理解できるね?」
偽の姫。
確かにここまでの兵はそのような事を口走っており、私が王女を暗殺するための存在なら兵たちの動きも合点がいく。
(……最初から、剣術大会後の動きを予想して手を打たれていたのか、
帝都まで響かせた名声を利用し、シルバ王女の大義で兵達は戦っている)
狡猾な彼の策に嵌り、またしても彼女は地に落とされる。
今まで築き上げてきた物を壊され、そして周りを巻き込んで地獄に変えた。
次に犠牲になるのは誰か、黒き刃の皆か、村人か、それとも―――
信頼して、約束を交わした大事な人か。
「……シバ公爵、あなたの望みは、やはり…」
「そうだ、私は君を認めない、
例え剣聖に並び称される剣の才があろうが、その血と歴史は穢れている、
何故認める事ができるのかっ…このアリウムを統べるは正しき人間だけなのだ」
「では、求めるはこの心臓ですか」
「いやいや、そんな血生臭い物は望みませぬ、
なに、貴方の代わりとなる器はこちらで用意できます、
次こそ従順な傀儡と成り果てるのであらば、命は保証致しましょう」
「……村人と、黒き刃、そして領民の命を約束して頂けますか」
「それは勿論……お約束を―――」
二度目となる彼の交渉に、シルバは皆の命を優先させ折れた。
が、シバは少し言い淀んで言葉を濁す。
「ああ、王女様……大変申し訳ありません、
私も慎重に事を運んだのですが、村人から犠牲者も出ておりましてね……
既に三名ほど重傷者を出してしまいました、本当に心が痛い……」
「―――」
「その中で、なんだったかな……黒き刃の一人を庇い、
傷を負った役人が一人いてね、彼女はなんだったか―――」
視界が歪む。
彼が何を言っているのか、その意味が誰の事を指しているのか。
思考と理解を脳が拒絶し、暖かいその名前を告げられた。
「そう、ミオとか言う責任者だったな、
彼女は私の策謀に気付き、少々手荒に扱ってしまったよ、
それもまぁ、事故みたいなものだ、許してくれるね?」
額から汗が滲み、呼吸が荒くなる。
ミオが、傷付いた。
そこから先は聞きたくない、まだ生きているのかも、死んでしまったのかも。
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