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剣を司る者
二話
しおりを挟む―――神話が、再誕する。
駆るは女神、捉えるは残像。
数多の戦場を踏んできたであろう神に向けて斬撃を放ち、この世界に破壊を魅せる。
「―――ハァッ!!!!!」
加減も、遠慮も、環境も関係無い。
周りを巻き込む可能性が無いこの場所では、シルバの剣は無双する。
地を抉り、水面を弾け飛ばし、剣圧が空気を切り裂く。
一瞬で爆撃の中心点となる攻めに、だが、女神は退屈した。
「遅い、その程度か」
「―――っな……!?」
シルバが音速であるなら、彼女は文字通り神速であった。
そこにいたはずの女神は既に視界から消え、死角で呑気に煙管を咥える。
数秒後、弾けた水滴が雫となって降り注ぎ、彼女は唐傘を差してシルバを覗き見た。
「そも、お前の力はアタシが分け与えたもの、
なにゆえ、勝てるなど勘違いしてしまったのだ?」
「結果は、まだ分かりません」
「そうか、なら―――」
ここで初めて、女神は静かに抜刀する。
それは古に伝わる東国の業物、刀。
銘は陽炎、見えぬ事が出来ぬ刀身から付けられた名。
女神を名乗るには、あまりに血生臭い得物であった。
「往くぞ」
ふわり、傘が舞う。
紫炎に染まった唐傘は、刹那に揺らめき女神を隠す。
―――否、既に剣戟が始まっていた。
刀の切っ先は派手に振られることは無く、ただ命を狙う。
的確に急所を捉え、研ぎ澄まされた神技で銀の剣聖を襲った。
「ッぐ……!!」
「足掻くな、諦めろ」
体験した事の無い力量。
幼少の頃、師として剣を習っていたかつての剣聖に抱いていた力の差。
それを垣間見て、シルバは久しく取らなかった守りに転じる。
(目で追えない速さ、けどっ……決して見切れないわけじゃないッ!!!)
もはや動体視力の域を超えた予想回避。
未来予知にすら似た軌道で牽制と防御を繰り広げ、苦しくも刃を弾いて凌ぎきる。
―――ギィィィンッッッ!!!!
銀月が軋み、その威力を受け流す。
が、圧倒的な力を前にシルバ本人が体勢を崩して数歩後ろに踏み下がってしまった。
「ほら、隙だらけ」
水面が揺れ、疾風が音を残して通過する。
全てを置き去りにした疾さで距離を詰め、女神は構えた。
「―――居合」
抜刀状態からの瞬時の納刀。
そこまで秒に満たない時で型を取り、必殺の一撃を抜く。
―――名を、神風。
悉くを切り伏せ女神の代名詞となった技は、時空を歪ませてシルバごと叩き切った。
「……かはっ…!!」
「脆いな、そして弱い……なんと儚い」
薄れゆく意識のなか、銀の少女は地べたに倒れて彼女を睨む。
しかし、余裕の笑みで歩み寄る女神はそれを気にしない。
「しまったな、勢い良く斬り過ぎた……この世界まで壊してしまった」
「ぐっ……あぁッ……!!!」
「ふむ……寸前で銀月に魔力を込め、致命傷を防いでいたか」
とどめとなる詰めが、躊躇も慈悲もなく行われる。
シルバは傷口を押さえてうずくまり、呼吸もままならない状態。
精神世界ゆえか、血は流れずに痛みだけが身体中に駆け巡る。
感じた事の無い痛みと、初めて味わう敗北。
剣聖は、無残に首を掴まれた。
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