天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

文字の大きさ
94 / 102
剣を司る者

二話

しおりを挟む

 ―――神話が、再誕する。


 駆るは女神、捉えるは残像。

 数多の戦場を踏んできたであろう神に向けて斬撃を放ち、この世界に破壊を魅せる。


 「―――ハァッ!!!!!」


 加減も、遠慮も、環境も関係無い。
 周りを巻き込む可能性が無いこの場所では、シルバの剣は無双する。

 地を抉り、水面を弾け飛ばし、剣圧が空気を切り裂く。

 一瞬で爆撃の中心点となる攻めに、だが、女神は退屈した。


 「遅い、その程度か」

 「―――っな……!?」


 シルバが音速であるなら、彼女は文字通り神速であった。

 そこにいたはずの女神は既に視界から消え、死角で呑気に煙管を咥える。
 数秒後、弾けた水滴が雫となって降り注ぎ、彼女は唐傘を差してシルバを覗き見た。


 「そも、お前の力はアタシが分け与えたもの、
  なにゆえ、勝てるなど勘違いしてしまったのだ?」

 「結果は、まだ分かりません」

 「そうか、なら―――」


 ここで初めて、女神は静かに抜刀する。

 それは古に伝わる東国の業物、刀。
 銘は陽炎、見えぬ事が出来ぬ刀身から付けられた名。

 女神を名乗るには、あまりに血生臭い得物であった。


 「往くぞ」


 ふわり、傘が舞う。

 紫炎に染まった唐傘は、刹那に揺らめき女神を隠す。

 ―――否、既に剣戟が始まっていた。

 刀の切っ先は派手に振られることは無く、ただ命を狙う。
 的確に急所を捉え、研ぎ澄まされた神技で銀の剣聖を襲った。


 「ッぐ……!!」

 「足掻くな、諦めろ」


 体験した事の無い力量。

 幼少の頃、師として剣を習っていたかつての剣聖に抱いていた力の差。
 それを垣間見て、シルバは久しく取らなかった守りに転じる。


 (目で追えない速さ、けどっ……決して見切れないわけじゃないッ!!!)


 もはや動体視力の域を超えた予想回避。

 未来予知にすら似た軌道で牽制と防御を繰り広げ、苦しくも刃を弾いて凌ぎきる。


 ―――ギィィィンッッッ!!!!


 銀月が軋み、その威力を受け流す。

 が、圧倒的な力を前にシルバ本人が体勢を崩して数歩後ろに踏み下がってしまった。


 「ほら、隙だらけ」


 水面が揺れ、疾風が音を残して通過する。

 全てを置き去りにした疾さで距離を詰め、女神は構えた。


 「―――居合」


 抜刀状態からの瞬時の納刀。

 そこまで秒に満たない時で型を取り、必殺の一撃を抜く。


 ―――名を、神風。


 悉くを切り伏せ女神の代名詞となった技は、時空を歪ませてシルバごと叩き切った。


 「……かはっ…!!」

 「脆いな、そして弱い……なんと儚い」


 薄れゆく意識のなか、銀の少女は地べたに倒れて彼女を睨む。

 しかし、余裕の笑みで歩み寄る女神はそれを気にしない。


 「しまったな、勢い良く斬り過ぎた……この世界まで壊してしまった」

 「ぐっ……あぁッ……!!!」

 「ふむ……寸前で銀月に魔力を込め、致命傷を防いでいたか」


 とどめとなる詰めが、躊躇も慈悲もなく行われる。

 シルバは傷口を押さえてうずくまり、呼吸もままならない状態。
 精神世界ゆえか、血は流れずに痛みだけが身体中に駆け巡る。

 感じた事の無い痛みと、初めて味わう敗北。

 剣聖は、無残に首を掴まれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...