天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

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 「ああ、今日の式典ですが、新生アリウム騎士団の発表……
  私に騎士団長を任命してくださり大変恐縮です、
  ご期待に応えられる様に、毎日精進致します」

 「ふふっ……お願いしますね、きっと、貴方達なら高め合うでしょう」

 「―――まさか、アイツがここまで出世するなんて誰も思わなかったでしょうね」

 「そうですか?兵士の方々や騎士団でも実力は知れ渡っていたはず、
  加えて、剣術大会で得た知名度もあり、任命の際に反対した人も少数でした」

 「それでも、私はアイツが任命される直前まで現実と思わないでしょうね」


 悪戯に小さく笑い、騎士が無邪気に語る。

 すると、彼は清々しい顔で席を立ち、改めて頭を下げて感謝する。


 「シルバ王女様、本当にこれまでありがとうございます、
  今日の式典もきっと、大成を収めて終わる事でしょう」

 「そうですね、そうなるように頑張りますっ」

 「では、先に失礼致します、また式典での会場でお会いしましょう」

 「はいっ、シュバルツさんまた後で」


 終始、紳士然な振る舞いで立ち去る白騎士。

 ひらひらと手を振って見送るシルバは、彼の変化を嬉しく思う。
 と同時に、さっきまで締め付けていた緊張も和らいでいた。


 「ミオ、シュバルツさんは本当にいい人ですね」

 「そうですね、人柄の良さが滲み出ていました」

 「―――見惚れてましたか?」

 「ッッな!?ななな、なにを言ってるんですかシルバ様ッ!?
  彼は既婚者でッ!!新生アリウム騎士団の団長さんなんですよぉッ!!!」

 「……慌て過ぎですよ……ミオ」


 まんざらでもなさそうなミオをからかい、シルバも準備を始めた。


 「さぁ、私達も行きましょうか」

 「あ、は、っはい!!!」


 銀の衣装を纏い、シルバは王女の顔をする。

 そして、ミオもまたその宝刀を両手に抱え、彼女に渡した。


 「シルバ王女様、どうぞ」

 「ありがとうミオ、今日の式典……絶対成功させようね」

 「―――っもちろんです!!!」


 腰に銀月を下げ、剣聖王姫が歩みを進める。

 この覇道を止めない、止めさせない。

 身に宿るこの加護に、そしてシルバを救った多くの人に懸けて。

 護衛を持たず、彼女は王城を歩く。
 ただ一人、友人として接するミオだけが隣に並ぶだけ。


 「これは王女様ッ!!ご機嫌麗しゅうございます、
  今日の任命式、期待しておりますぞ!!」

 「シルバ王女様、新たな騎士団の設立おめでとうございます、
  これからもアリウムの未来を導いてくださいませ」


 会場までの道中、様々な騎士や貴族に声を掛けられ祝福される。

 持ち前の愛想の良さと、美しい容姿を駆使して城内の信頼を掴んでいた。


 「―――相変わらず猫被りな姫ですね…」

 「え?何か言いましたミオ?」

 「いえ、なにも」

 「そうですか……もう少しでジニア街の商業都市化計画
   を依頼するところでしたのに、仕事を振れなくて残念です……」

 「……そう無邪気に仕事を押し付ける性格、いつか天罰が下りますよ」

 「―――その天罰、もしかしたらもう起こったかもしれません」


 会場に近付くと、広いホールに目立った仮面の男性がいた。

 彼は場に合った正装でグラスを片手に、冗談めいた仮面の奥でシルバを捉える。


 「あれって……噂の王子様ですか?」

 「もしかしなくても王子ですね、あぁ、頭が痛くなります」


 王女の気苦労を吹き飛ばす勢いで、バーベナの第二王子は彼女に駆け寄った。


 「っよ!!シルバ王女!!今日は招待してくれてありがとうなっ!!」

 「レッド王子の場合、正体を隠して参加するじゃないですか、
  なら、最初からこちらで招待しておけば余計な混乱も無くなります」

 「それもそうだな、こんな感じで変装でもして来てたかもな」


 少年のような笑いで仮面を外し、その赤い瞳を晒す。

 目立った髪色と瞳が、場の視線を集めてレッドとシルバを映した。

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