賊を狩り続ける冒険者~近代技術で魔法を凌駕する~

作間 直矢 

文字の大きさ
26 / 68
2話 山賊討伐の代償

7

しおりを挟む

 少しのクールタイムを置いて、砲身を冷却して遠くを見つめる騎士がいた。
 賊狩りと呼ばれる男は、その二つ名に恥じぬ行いで山賊の拠点を壊滅させた。
 
 非情で残酷な方法と、虐殺をもって。


 「―――っぅぅ……ぐすっ……」


 そこに、涙を流す少女が一人。

 多くの感情が入り乱れて、何故泣いているのか分かっていない少女を、死神めいた男は優しい言葉をかける事が出来なかった。


 「三発目を撃つ、お前は下がっていろ」

 「―――っ!」


 念には念を入れた砲撃、そこにダメ押しとなる三発目。
 アリウムは彼の言葉を信じられず、震えて萎縮する。


 「奴らは人ではない、深く考えるな」

 「……一つだけ、聞いていいですか?」

 「なんだ」

 「その砲弾にはどんな細工がされているんですか……
  いかに火薬を精工に加工しても、こんな馬鹿げた威力ありえないです」

 「―――これは、厳密には火薬だけを使った砲弾ではない、
  魔法鉱石を媒介に魔力を使った、簡易式魔法陣を組み込んだ砲弾だ」

 「ですが……アルバートさんは魔法が使えないと」

 「確かに俺自身は使えない、だが、疑似的に使う為の方法はある」


 そう言って黙々と砲弾を準備する姿は、冷徹そのもので恐ろしかった。
 しかし、少しだけ手を止めて火に染まる景色を眺める騎士は続ける。


 「魔法とは、決められた術式を展開して起動し一定の現象が発現するもの、
  その起動に必要な物が魔力であり、俺はそれを持たないが別の物で代用できる」

 「……魔法を発現するための術式を、アルバートさんは組めるのですね」

 「そうだ」

 「けれどっ……既存の魔法ですらこんな威力の魔法早々ありません!!
  それをアルバートさんの独自で組んだ術式が、それらの魔法を上回るなんてっ…」

 「言っただろう、これは簡易式の魔法陣……それに多少のアレンジを加えた」

 「これが……簡易式だなんて信じられませんっ…!!」

 「……魔法の動作失敗、お前も魔法を勉強しているならわかるだろう」

 「え、ええ」


 慎重に、両手で抱えた特殊製法で作られた槍のような砲弾をアリウムに見せる騎士。

 彼が視線を弾頭に移すと、うっすらと淡い紋様が浮かんでいた。


 「初歩的な魔法を失敗する時、小さな爆発が起こる……
  中級、上級の魔法も規模に見合った爆発現象が起きるはずだが、
  魔法使いもそれに伴って技術が向上し、失敗がほぼ無くなる」

 「それは……皆さん失敗しない様に訓練して覚えますから……」

 「―――俺は、敢えて魔法を失敗する形で簡易的な魔法陣を組んだ」

 「どう、して……」

 「意図的に、そして複雑に構成した滅茶苦茶な魔法陣を砲弾に彫り、
  結果として大規模な爆発を起こす強力な対軍武器となったからだ」


 魔法が使えず、剣才も無い騎士。
 けれど、現代の枯れた技術と浅い魔法知識だけでこの地獄を作り上げた。
 
 ―――己の復讐心と執念だけで。

 雨は降り続ける、炎を弱めながら。


 「砲身の冷却も済んだ、下がれアリウム」


 山賊にとっての悪夢も続く、一人の生き残りも逃さぬ砲弾によって。

 もはや、喋る事も無くなりアリウムは虚空を見つめて業火を瞳に映す。

 山賊が、人が、子供が燃えて何もかもが灰燼となる。
 無力な少女は、何も出来ずに現実を受け入れた。

 冷たい雨が、心まで冷まして。

 こうして、山賊殲滅は完了して任務を終えた。
 入念な準備と積み上げてきた研鑽によって、僅かな時間で事を済ませた彼らの帰路は重かった。

 また一つ、大きな業を背負って踏み抜いた足跡は血に染まった―――

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...