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3話 挑発と挑戦
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しおりを挟むそれから少し経つ頃、気を失っていたアリウムは目を覚ます。
「―――うぅ…ここ、は」
「お、目が覚めたかお嬢ちゃん」
「っ…!?貴方はっ!!」
意識が戻り見えた視界にいたのは、アルバートを痛めつけた格闘家と一緒にいた人物。
長髪の男は、変わらない狡猾な笑みで私を眺める。
「あの時は世話になったなぁ、また会えて嬉しいよ」
「なんでこんな事をッ!!ここから離してくださいッ!!」
「それは出来ない、お前は奴を殺す為の人質だ」
「ひ、人質……」
男が言う人物がアルバートをさす言葉である事は間違いなく、私は彼の足手まといになっていた。
その事実がたまらなく悔しく、身動きの取れない身体が熱くなる。
「ずっと一人で活動していたアイツがお前を引き入れた、
ギルド内でも使い捨ての少女を拾ったと噂になっていたが……
それがどうだ?随分とあのイカれ野郎はお前を気に入ってるようだ?」
「あの人は、私を理由に危険な事はしません……こんな事意味ないですよ」
「それならそれでいい、お前が必要の無い状況ならアイツは死んでいるし、
年頃の女一人の利用価値なんていくらでもある、精々怯えていろ」
ニタニタと笑う男は私に近付き、べたべたと身体に触ってくる。
抵抗しようにも腕を拘束され動けず、不快な感情を耐えるしか出来ない。
その時だった、部屋に一人の老人が入る。
「ふぉーふぉー……そやつが言っておった賊狩りの連れか?」
「―――これはバハ様、ええ、確かアリウムとかいう小娘です」
「なるほどなるほど、手はず通りに賊狩りを排除すれば、
わしの商売もまた軌道に乗るんだな?期待しておるぞ?」
「お任せください、質の良い奴隷を確保する為にも、
必ずあの賊狩りを殺し、バハ様の奴隷ビジネスを再度成功させましょう」
「貴方はッ……!!冒険者でありながらっ……何をッ!?」
「おいおいそんなに睨むなよ、こんなのよくある小遣い稼ぎだ、
冒険者がギルド内部の情報を盗賊やらに横流しして、
アイツらが安全に人を攫って報酬を貰う……ああ、よくある話だ」
平然と話すその姿に、心にどす黒い何かが沸いた。
私は、冒険者らしい事は出来ていない。
だがそれでも、冒険者の誇りを踏みにじって人の命や人生をお金にしようと動いている事が許せない。
確かに今、殺意が、胸に宿った。
「貴方は……今までも、そしてこれからも奴隷を売る為に賊に加担するのですか」
「その方が金になるからな、お前もわかるだろう?
冒険者は確かに大金を稼げる、だが危険もあってギャンブルみたいなもんだ、
俺は安全に、そして世の為に人材を届けるこのやり方を選んだ」
「そうですか……貴方は賊と何も変わらない、最低な人間です」
「ふぉーふぉー、この状況で怯えもせず気丈に振る舞う子だな、
気に入ったぞ、こやつは儂が買おう……良いな?」
と、長髪の男からガラスが砕ける様な音が響いた。
「ええ勿論です、ですが……悪い知らせのようです、
どうやら賊狩りに送った刺客が返り討ちにあいました」
「ほぉ……」
「アルバートさんっ…」
男が魔法結晶で造られたプレートを取り出すと、そこに映された文字を読む。
目を細め、明らかに不機嫌な声色で男は言う。
「安心してくださいバハ様、この為に用心棒を雇っています、
それもかなりの手練れでありますので迅速に排除します」
「そうか、頼んだぞ」
バハは私の腕を引き、歩き出す。
下卑た顔、舐めるような目線。
その一つ一つが不愉快で心が疼く。
「こい小娘、お前は今から儂の奴隷だ」
「―――」
「ではごゆるりと、バハ様」
拳を握る、無力故の悔しさからではない。
あの時の何も出来ない私とは違う。
だから、彼がここに来るまでに出来る事をする。
それが、これまで培ってきた彼との意味だから―――
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