木瓜

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夕景の依頼人

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「だから、遅くなったって、誰も心配しないです。いつも、茉莉ちゃんと遊んだり、泊ったり、してたから」

茉莉ちゃんの知り合いが、ホテルのオーナーとかで、どうしても苦しいときは、こっそり、泊まらせてくれた。

彼女と、二人で居られる場所が、私にとっての、唯一の居場所だった。

「今、ご両親はお家に?」

秋乃の質問に、私は首を振る。

「いないです。たまに帰ってくるけど、二人が、どこで何をしているのかは、知らない」

本当は、知っていた。

お母さんは、きっとまた、どこかの男の家に行っている。

あいつは、いつものように、酒とギャンブルと、知らない女の人と一緒に遊んでいる。

お母さんへの、当てつけのように。

悪いのは全部、あいつなのに。
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