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45.ヒント
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私は倒れたままの態勢で目をパチパチしながらその小さな扉を見つめた。
これって・・・。
「もしかして隠し棚?!」
私は叫びながら飛び起きると、その扉に噛り付いた。
「くそ~! 鍵が掛かってる~!」
ガチャガチャと乱暴に取手を動かしてもビクともしない。よく見ると鍵穴は無く、金庫のようにダイヤル式の鍵だ。うわ~、最悪だ! こんなの開きっこないじゃん!
ん・・・? でも、待てよ・・・?
ここはウィリアムの研究室で、これはウィリアムの秘密の棚。そしてそんなウィリアムの宝物・・・。
それは彼の最愛にして唯一無二の存在。そして彼を愚行に走らせた大元。
「奥方の誕生日かも! 有うる!」
私は急いで研究室を飛び出した。周り本の山などお構いなしに走ったので、それらの山は総崩れ。バラバラと倒れる本の塔など見向きもしなかった。
★
走って辿り着いたのはレイモンド家自慢の書庫だ。
私は一目散に家系図の本棚に走り寄った。一冊手に取ると、乱暴にページをめくる。すぐに目的の欄を見つけると、その本を片手に屋根裏部屋へ駆け足で戻った。
埃まみれで髪を振り乱し、廊下や書庫を走り回っている私を、使用人たちは何も見なかったように華麗にやり過ごしてくれた。
研究室に駆け込むと、急いで隠し棚のもとに向かう。本の山を蹴散らして飛び出してきた為、障害物が散乱しているところに、息も切れ切れでヨロヨロの私はなかなか隠し棚に辿り着けない。
やっとの思いで辿り着くとその場にへたり込んでしまった。
懸命に息を整え立ち上がる。暫くして息は落ち着いてきたが、今度は緊張で気持ちの方が落ち着かなくなってきた。
ドキドキと心臓が早鳴りする。それを鎮めるように心臓を叩き、大きく深呼吸する。
いざ!
緊張で震える手でダイヤルをゆっくり回す。一つ一つ番号を合わせる度にカチリカチリと小さく音が鳴り、確実に手ごたえを感じる。それが益々緊張を煽る。
最後の番号を合わせた時、ガチャリと音が鳴ったと同時にダイヤルを持つ指先から解錠された振動が伝わった。
「ふわぁ・・・!」
私は感動して変な悲鳴が漏れた。心臓の早鳴りがピークを迎える。
さっきよりも震える手で取手をとると、ゆっくりと、本当にスローモーションのように扉を開いた。
だが・・・。
そこはもぬけの殻だった。
嘘・・・。何? ここまでしてこの結末・・・。
あーあーあー、よくあるよね! 見たことあるよ! テレビで!
古い由緒ある家の開かずの金庫を鍵マスターゴッドハンドみたいな人が開ける番組!
CMでやたら引っ張っておいて、実際開けると空のパターンってね!
「まさか、ここもかよ~~!」
私は半泣き状態で空の棚に両手を差し入れ、底の床をポカポカ叩いた。するとなんだかとても軽く柔らかい音がする。
「え?」
私は改めてちゃんと叩いてみた。やはり軽い音。念のため棚の側面を叩いてみる。それはとても堅い音だ。硬い壁と分かる。
これは底に空間がある証拠だ。きっと二重構造になっているのだ! 底の板は蓋になっているに違いない。
「どうやって開けるの?!」
私は底をポカポカ叩いたり、摩ったりして開けるようと試みるがちっとも動かない。何やらカラクリがあるのだろう。
そんなカラクリいらないから! どこまで面倒掛けてくれんだ、ウィリアムのジジイめ!
私は目を皿のようにして隅々まで見渡した。そしてやっと手前の床の隅の一角だけ板の色が違うところを見つけた。1cmほどの正方形。もしやと思い、その箇所を人差し指で押してみた。
すると、カタンと床が中央で割れ、僅かに持ち上がったのだ。私はすぐにその板を外した。
思った通り二重構造になっており、底の下には空間が広がっていた。
そしてそこには一冊の古い本と、一冊のノートが入っていた。
★
私は場所を机に移すと、古い本をめくってみた。
相当古い本だ。中の文字はすべて古文で書かれていて、容易に読めない。
ただ、装丁から想像するに薬草の本では無さそうだ。
今度はノートを手に取って中を開いた。
何やら細かい小さな字で隙間なく埋め尽くされている。こちらは現代文だ。
「わ~、超読みづらぁ~・・・」
ゆっくりと人差し指で文字を追いながら読み進めていくうちに、どんどんと自分の血圧が下がっていくのが分かった。
冷えた手でさっきの本を手に取る。
「これ・・・禁書だ・・・」
残っていた。一冊だけ。
そしてノートは・・・ウィリアムの手によって書かれた現代語訳だ。
私はもう一度ノートに目を落とす。一行目に書かれた文字。
『悪魔の呼び出し方』
やっと・・・、やっと見つけた。ヒントを。
これって・・・。
「もしかして隠し棚?!」
私は叫びながら飛び起きると、その扉に噛り付いた。
「くそ~! 鍵が掛かってる~!」
ガチャガチャと乱暴に取手を動かしてもビクともしない。よく見ると鍵穴は無く、金庫のようにダイヤル式の鍵だ。うわ~、最悪だ! こんなの開きっこないじゃん!
ん・・・? でも、待てよ・・・?
ここはウィリアムの研究室で、これはウィリアムの秘密の棚。そしてそんなウィリアムの宝物・・・。
それは彼の最愛にして唯一無二の存在。そして彼を愚行に走らせた大元。
「奥方の誕生日かも! 有うる!」
私は急いで研究室を飛び出した。周り本の山などお構いなしに走ったので、それらの山は総崩れ。バラバラと倒れる本の塔など見向きもしなかった。
★
走って辿り着いたのはレイモンド家自慢の書庫だ。
私は一目散に家系図の本棚に走り寄った。一冊手に取ると、乱暴にページをめくる。すぐに目的の欄を見つけると、その本を片手に屋根裏部屋へ駆け足で戻った。
埃まみれで髪を振り乱し、廊下や書庫を走り回っている私を、使用人たちは何も見なかったように華麗にやり過ごしてくれた。
研究室に駆け込むと、急いで隠し棚のもとに向かう。本の山を蹴散らして飛び出してきた為、障害物が散乱しているところに、息も切れ切れでヨロヨロの私はなかなか隠し棚に辿り着けない。
やっとの思いで辿り着くとその場にへたり込んでしまった。
懸命に息を整え立ち上がる。暫くして息は落ち着いてきたが、今度は緊張で気持ちの方が落ち着かなくなってきた。
ドキドキと心臓が早鳴りする。それを鎮めるように心臓を叩き、大きく深呼吸する。
いざ!
緊張で震える手でダイヤルをゆっくり回す。一つ一つ番号を合わせる度にカチリカチリと小さく音が鳴り、確実に手ごたえを感じる。それが益々緊張を煽る。
最後の番号を合わせた時、ガチャリと音が鳴ったと同時にダイヤルを持つ指先から解錠された振動が伝わった。
「ふわぁ・・・!」
私は感動して変な悲鳴が漏れた。心臓の早鳴りがピークを迎える。
さっきよりも震える手で取手をとると、ゆっくりと、本当にスローモーションのように扉を開いた。
だが・・・。
そこはもぬけの殻だった。
嘘・・・。何? ここまでしてこの結末・・・。
あーあーあー、よくあるよね! 見たことあるよ! テレビで!
古い由緒ある家の開かずの金庫を鍵マスターゴッドハンドみたいな人が開ける番組!
CMでやたら引っ張っておいて、実際開けると空のパターンってね!
「まさか、ここもかよ~~!」
私は半泣き状態で空の棚に両手を差し入れ、底の床をポカポカ叩いた。するとなんだかとても軽く柔らかい音がする。
「え?」
私は改めてちゃんと叩いてみた。やはり軽い音。念のため棚の側面を叩いてみる。それはとても堅い音だ。硬い壁と分かる。
これは底に空間がある証拠だ。きっと二重構造になっているのだ! 底の板は蓋になっているに違いない。
「どうやって開けるの?!」
私は底をポカポカ叩いたり、摩ったりして開けるようと試みるがちっとも動かない。何やらカラクリがあるのだろう。
そんなカラクリいらないから! どこまで面倒掛けてくれんだ、ウィリアムのジジイめ!
私は目を皿のようにして隅々まで見渡した。そしてやっと手前の床の隅の一角だけ板の色が違うところを見つけた。1cmほどの正方形。もしやと思い、その箇所を人差し指で押してみた。
すると、カタンと床が中央で割れ、僅かに持ち上がったのだ。私はすぐにその板を外した。
思った通り二重構造になっており、底の下には空間が広がっていた。
そしてそこには一冊の古い本と、一冊のノートが入っていた。
★
私は場所を机に移すと、古い本をめくってみた。
相当古い本だ。中の文字はすべて古文で書かれていて、容易に読めない。
ただ、装丁から想像するに薬草の本では無さそうだ。
今度はノートを手に取って中を開いた。
何やら細かい小さな字で隙間なく埋め尽くされている。こちらは現代文だ。
「わ~、超読みづらぁ~・・・」
ゆっくりと人差し指で文字を追いながら読み進めていくうちに、どんどんと自分の血圧が下がっていくのが分かった。
冷えた手でさっきの本を手に取る。
「これ・・・禁書だ・・・」
残っていた。一冊だけ。
そしてノートは・・・ウィリアムの手によって書かれた現代語訳だ。
私はもう一度ノートに目を落とす。一行目に書かれた文字。
『悪魔の呼び出し方』
やっと・・・、やっと見つけた。ヒントを。
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