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心があるから、俺たちは噛み合わない
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灰谷が人間に興味を持ち始めてから、
久賀はずっと、どこか“苛立っていた”。
あの氷みたいな奴が、急に「人っぽく」なっていく。
それが――ムカつく。
理由なんてわからない。ただ、胸のどこかがザワつく。
そして、ついにその日が来る。
きっかけは小さなことで、
生徒のトラブルに灰谷が“感情で動いた”場面だった。
「お前、あいつを“助けよう”としたよな?」
「……事実として、そう動いた」
「“感情が芽生えたから”とか言うんじゃねえだろうな? 笑うぞ」
「……久賀くんは、助けたくなる相手が一度もいなかった?」
その瞬間、空気が切り替わる。
「……“助けたい”なんて、虫酸が走る言葉だな。
俺は“利用価値があるか”でしか判断してねえよ」
「それが、あなたの“正義”ですか」
「違う。俺は“正義”すら信じてねぇ。
ただ、“操作可能な現実”しか興味ない」
灰谷は静かに言う。
「……あなたは、感情を“道具”にしてきただけ。
それを“使う側”にいられると思い込んでる。
でも、僕は知った。感情は、持つことでしか理解できない」
「……は?」
「あなたはずっと、人を動かして気持ちよくなってただけだ。
他人の心を“切り札”にしてたせいで、自分の心の使い方を知らない」
久賀の表情が一瞬、ひび割れる。
「……ああ? 感情に酔った奴の説教か?」
「あなたは、僕が“操作対象”じゃなくなったから、不安になってるだけです。
“動かなくなった人形”を前に、プログラムが通用しない焦りを感じてる」
「黙れよ。お前こそ、自分に感情が芽生えたからって――
“人間ヅラ”して語るな」
「違う。“人間らしさ”を自覚し始めたからこそ、言える」
二人の言葉がぶつかるたび、
部屋の空気がピリピリと焦げるように熱を帯びていく。
「お前が変わるのは勝手だ。でもな、
“感情を持った方が強い”なんて幻想、俺の前で語るな」
「強いかどうかはわかりません。
でも、“揺らぎの中でしか見えないもの”がある。
あなたはそれを、まだ見てない」
沈黙。
やがて、久賀が目を細めて呟く。
「お前さ――いっそ、ムカつくくらい“人間”になったな」
「……ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」
二人は、それ以上言葉を交わさず、背を向け合って去った。
だけど――その背中には、
**ぶつかり合って初めて理解した“何か”**が、確かに残っていた。
久賀はずっと、どこか“苛立っていた”。
あの氷みたいな奴が、急に「人っぽく」なっていく。
それが――ムカつく。
理由なんてわからない。ただ、胸のどこかがザワつく。
そして、ついにその日が来る。
きっかけは小さなことで、
生徒のトラブルに灰谷が“感情で動いた”場面だった。
「お前、あいつを“助けよう”としたよな?」
「……事実として、そう動いた」
「“感情が芽生えたから”とか言うんじゃねえだろうな? 笑うぞ」
「……久賀くんは、助けたくなる相手が一度もいなかった?」
その瞬間、空気が切り替わる。
「……“助けたい”なんて、虫酸が走る言葉だな。
俺は“利用価値があるか”でしか判断してねえよ」
「それが、あなたの“正義”ですか」
「違う。俺は“正義”すら信じてねぇ。
ただ、“操作可能な現実”しか興味ない」
灰谷は静かに言う。
「……あなたは、感情を“道具”にしてきただけ。
それを“使う側”にいられると思い込んでる。
でも、僕は知った。感情は、持つことでしか理解できない」
「……は?」
「あなたはずっと、人を動かして気持ちよくなってただけだ。
他人の心を“切り札”にしてたせいで、自分の心の使い方を知らない」
久賀の表情が一瞬、ひび割れる。
「……ああ? 感情に酔った奴の説教か?」
「あなたは、僕が“操作対象”じゃなくなったから、不安になってるだけです。
“動かなくなった人形”を前に、プログラムが通用しない焦りを感じてる」
「黙れよ。お前こそ、自分に感情が芽生えたからって――
“人間ヅラ”して語るな」
「違う。“人間らしさ”を自覚し始めたからこそ、言える」
二人の言葉がぶつかるたび、
部屋の空気がピリピリと焦げるように熱を帯びていく。
「お前が変わるのは勝手だ。でもな、
“感情を持った方が強い”なんて幻想、俺の前で語るな」
「強いかどうかはわかりません。
でも、“揺らぎの中でしか見えないもの”がある。
あなたはそれを、まだ見てない」
沈黙。
やがて、久賀が目を細めて呟く。
「お前さ――いっそ、ムカつくくらい“人間”になったな」
「……ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」
二人は、それ以上言葉を交わさず、背を向け合って去った。
だけど――その背中には、
**ぶつかり合って初めて理解した“何か”**が、確かに残っていた。
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